株式市場に興味がある人なら知っておくべき10個の論文

GIGAZINE
2023年06月10日 21時01分
メモ

.p-category{ position: absolute; right: 2px; }


ジェレミ・ベンサム、カール・マルクス、フォン・ノイマン、トマ・ピケティなど、過去数百年間で数多くの研究者が経済学の発展に貢献してきました。こうした経済学や金融市場を学ぶ上で役に立つ主要な論文10本を、経済学や金融工学に詳しいマーティ・MK氏が選定して公開しています。

Most Important Papers for Quantitative Traders – QMR
https://www.qmr.ai/most-important-papers-for-quantitative-traders/

◆01:Optimal Execution of Portfolio Transactions(ポートフォリオ取引の最適な執行) (Almgren&Chriss、2000)
この論文において、著者のロバート・アルムグレン氏らは株価が以下の2つの理由で変動することを指摘しています。

・外生的:市場自体のボラティリティー。この変動は、市場で行いたい注文とは無関係に、ランダムに発生する
・内生的:注文によって引き起こされる市場への影響。この影響の大きさは流動性と逆相関があり、この変化は一時的なものと永続的なものがある

コントロール可能な内生的な価格変動を最小化するために、アルムグレン氏らは執行アルゴリズムの使用を提案。取引コストとボラティリティーリスクの組み合わせを最小化することで、取引・執行のパフォーマンスを測定する方法について、厳密かつ実用的なアプローチを形式化しました。執行アルゴリズムはマーケットインパクトを軽減する目的で大きな注文を小さな注文に分割しますが、これにはリスクとのトレードオフが生じます。本論文では、この問題の解決策が提案されています。

◆02:The Long-Run Evolution of Energy Prices(エネルギー価格の長期的な進化) (Pindyck、1999)
この論文は、原材料の価格が凸関数に従って変化することを示したものです。著者のロバート・ピンディック氏は天然ガスと石炭、石油を1916年から1996年までの期間で分析し、石油の価格変動の傾向は原材料採掘の限界費用と当該資源の利用可能な推定埋蔵量に結びついた変化を持っていると結論づけました。一方、天然ガスと石炭については結論が出なかったと記しています。


◆03:A closed-form GARCH option valuation model(閉形式のGARCH評価モデル) (Heston&Nandi、1997)
この論文では、スポットで得た資産の分散をGARCHを用いてモデル化した、閉形式の評価式が紹介されています。

ボラティリティーを分析するモデルとして登場したGARCHについて、著者のヘストン・スティーブン氏は「通常のボラティリティーの算出方法では、値が固定されてしまい、最適とは言えません。株式リターンが時系列である以上、そのボラティリティは時間と共に変化すると考えるのが妥当です。従来の手法では平均値を固定的に仮定していましたが、これも株式リターンをモデル化する際には制限があると言える仮定でした。GARCHモデルは、この仮定を緩和することが可能です」と評価しています。

◆04:Portfolio Selection(ポートフォリオ選択) (Markovitz、1952年)
この論文では、ある期待リターンに対してリスクを最小化する最適なポートフォリオと、あるレベルのリスクに対して期待リターンを最大化するポートフォリオが存在することが示されています。著者のハリー・マーコウィッツ氏はこの論文で1990年のノーベル経済学賞を受賞しました。

◆05:A New Interpretation of Information Rate(情報レートの新しい解釈) (Kelly、1956)
この論文は複利による収益率を最大化する最適な投資率を算出する「ケリー基準」を正式に発表した論文です。ケリー基準は後にギャンブルや投資の際に広く用いられるようになりました。


◆06:Capital Asset Prices: A Theory of Market Equilibrium under Conditions of Risk(リスク条件下での市場均衡理論) (Sharpe、1964)
金融資産に投資する際に、そのリスクに応じて期待できるリターンを計算するために使用される「資本資産価格モデル(CAPM)」が発表された論文です。CAPMは、すべての投資家が同じ情報を持ち、同時に受け取り、同じように処理すると仮定すると、マーケットポートフォリオと呼ばれる効率的なポートフォリオが1つしか存在しないことを実証しています。

◆07:Incorporating Signals into Optimal Trading(最適取引へのシグナル取り込み) (Lehalle、2017)
アルムグレン氏らと同様に最適な取引の実行を扱った論文で、ドリフトを伴うオルンシュタイン=ウーレンベック過程に従う資産の特殊ケースに対する最適取引戦略を導出したもの。過去のティックデータを用いて、オーダーブックの不均衡が将来の値動きの予測につながり、平均回帰的な性質を示すことを明らかにしています。

◆08:Efficient Capital Markets: a Review of Theory and Empirical Work(効率的資本市場:理論と実証のレビュー) (Fama、1970)
これは利用可能なすべての情報が株価に反映されているとする仮説「効率的市場仮説」の概念を初めて定式化した著名な論文です。効率的市場仮説を前提とすると、既存の情報を利用して将来の価格を予測することは不可能で、期待値以上のリターンを得ることはできません。


◆09:The Pricing of Options and Corporate Liabilities(オプションの価格設定と企業責任) (Black&Scholes、1973)
デリバティブのオプションの価格付けに適用できる「ブラック–ショールズ方程式」を提示した論文で、この論文ではオプションの価格を推定するために物理学の熱伝導方程式が利用されていました。

◆10:Does the Stock Market Overreact?(株式市場は過剰反応するのか?) (Bondt&Thaler、1985)
投資家が予期せぬニュースに過剰反応する傾向があることを示し、効率的市場仮説という仮定に反する傾向があることを示す統計的に有意な証拠があることが提示された論文です。MK氏は「行動ファイナンスという魅力的な分野に興味をお持ちの方は、この論文から始めてみてはいかがでしょうか」と記しました。


この記事のタイトルとURLをコピーする

Source

タイトルとURLをコピーしました