カフェインを静脈注射すると何が起きるのか?

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コーヒーや緑茶などに含まれるカフェインには覚醒・興奮作用があり、眠気を払いたい時やエネルギーがほしい時にカフェインを摂取するという人は多いはず。そんなカフェインを「静脈注射」すると一体どうなるのかについて、アメリカのユタ大学で薬物中毒などについて研究するジェフ・クラーク氏が解説しています。

Intravenous caffeine in stimulant drug abusers: subjective reports and physiological effects – PubMed
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7714788/


Intravenous Caffeine – by Jeff Clark, MD
https://www.sexdrugsandsuicide.com/p/intravenous-caffeine

カフェインに限らずアルコールやニコチン、コカイン、ヘロインなどの薬物はそれぞれ一般的な服用方法が存在しており、カフェインの場合は飲み物や錠剤による経口摂取が基本です。そのためクラーク氏は、ある患者から「カフェインを静脈注射で服用した」という経験談を聞いて非常に驚いたと述べています。

もっとも、この患者は普段からカフェインを静脈注射しているというわけではなく、あくまで全身麻酔で行われる手術の処置の一環として、カフェインの静脈注射を受けたそうです。しかし、通常であればカフェイン注射が行われる際に患者は完全に意識を失っているはずですが、この患者は完全に眠る前にカフェインが注射されてしまいました。その結果、「人生で最悪の経験の1つ」といえるほどの激しい不安にさいなまれてしまったとのこと。


不安や知覚過敏はカフェイン中毒の症状として知られており、全身麻酔の手術前にカフェインを静脈注射されて激しい不安に駆られるというのはうなずける話です。クラーク氏はこの体験談を恐ろしいと思うと同時に、「なぜ人々はカフェインが好きなのに、静脈注射をする人はいないのだろう?カフェインの静脈注射は常に不安を引き起こすのだろうか?」と疑問を持ったとのこと。

確かに、カフェインを静脈注射することのデメリットは数多く挙げられます。薬物注射は針による痛みや感染症のリスクを生じさせるほか、エナジードリンクやコーヒーを飲んで摂取する場合と比較して圧倒的に面倒であり、カフェインは腸ですぐに吸収されるため静脈注射で注入するメリットもそれほどありません。

そこでクラーク氏は、過去に「カフェインの静脈注射による影響」を調べた実験結果がないかを調査しました。その結果、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学の研究チームが1995年に発表した研究がヒットしました。

研究チームは「さまざまな薬物が人々の気分に及ぼす影響を調査する」という名目で、コカインの使用歴を持つ被験者10人を募集しました。被験者には「実験で静脈注射される可能性がある薬物のリスト」として抗不安薬のザナックス(アルプラゾラム)・覚せい剤・コカインなどが含まれたリストが渡されましたが、実際にはカフェインの静脈注射のみが行われたとのこと。

被験者らは20日にわたり研究施設に滞在し、経口摂取するカフェインを数日間ゼロに保った上でカフェインの静脈注射を受けました。研究チームはカフェイン0mgの偽薬やコーラ1缶より少し多い37.5mg、エスプレッソ4~5杯に相当する300mgまでさまざまな用量のカフェインを静脈注射した後、被験者に対するアンケートを実施。アンケートでは「ハイになっていますか?」「何かしらの良い効果を感じましたか?」「何かしらの悪い効果を感じましたか?」「今回服用した薬物は好きですか?」「コカインを服用したいと思いますか?」といった項目について尋ねました。


アンケート結果を分析したところ、全体として高用量のカフェインは良い効果や陶酔感と関連していることが確認されました。また、低用量のカフェインでは悪い影響が明確には見られなかったものの、高用量だとほとんどの被験者が「ゴムが燃える匂い」「かび臭さ」「アンモニア臭」といった異常な匂いを感じたほか、ある被験者は「苦味」を感じたと報告されています。また、最高用量を服用した被験者では、わずかながら「コカインを服用したい」という欲求が増したとのこと。

クラーク氏は、カフェインの静脈注射は正しい用量であればポジティブな効果をもたらすことがこの研究で示されており、アメリカの国立薬物研究所がこのような研究に資金援助していたことは興味深いと述べています。

しかし、カフェインの過剰摂取は呼吸困難・吐き気・不安感・血圧の低下・過呼吸といった症状を引き起こすことがあり、最悪の場合は死に至ることもあります。そのため、カフェインは飲料などから経口摂取で適切な量のみを摂取するように心がけ、静脈注射は避けた方が安全です。

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