反ワクチン派になる人は「児童虐待や親がアルコール依存症など悲惨な過去」を持っている場合が多いとの研究結果、認知機能との関連も

GIGAZINE
2022年05月03日 20時00分
メモ



2022年4月7日に、陰謀論者で構成される日本の反ワクチン団体「神真都Q」のメンバーがワクチン接種会場に乱入し現行犯逮捕される事件が発生するなど、反ワクチンは身近な問題となっています。50年にわたり参加者の半生を追い続けてきたニュージーランドの研究により、「反ワクチンの感情には幼い頃の不利な経験が関係している」こと浮かび上がってきました。

Deep-seated psychological histories of COVID-19 vaccine hesitance and resistance | PNAS Nexus | Oxford Academic
https://academic.oup.com/pnasnexus/advance-article/doi/10.1093/pnasnexus/pgac034/6553423

Vaccine resistance has its roots in negative childhood experiences, a major study finds
https://theconversation.com/vaccine-resistance-has-its-roots-in-negative-childhood-experiences-a-major-study-finds-180114

2022年2月に、ニュージーランドの首都・ウェリントンで国会議事堂の前で約1カ月にわたって反ワクチンデモの集会が開かれ250人の逮捕者が出るなど、反ワクチン運動はニュージーランドでも激化しています。


そこで、ニュージーランド・オタゴ大学の心理学者であり、約50年にわたり続けている健康や発達に関する長期調査「ダニーデン研究」のディレクターでもあるリッチー・ポールトン氏らの研究チームは、ダニーデン研究の参加者が持つワクチンへの抵抗感についての研究を行いました。

具体的には、ダニーデン研究の参加者1037人に対してワクチン接種の意向についてのアンケートを実施し、その結果と参加者らの子ども時代やライフスタイルに関するデータを突き合せて分析したとのこと。アンケートの期間は、ニュージーランドで全国的なワクチン接種キャンペーンが始まる直前に当たる2021年4月~7月でした。

研究チームがアンケート結果を集計した結果、回答者の約13%が「ワクチン接種を受ける予定はない」と答えていました。そして、ワクチンに対する抵抗感がある人とない人の幼少期の生活を比較したところ、ワクチンに抵抗感がある人の中にはネグレクトを含む虐待を受けていたり、貧困家庭だったり、親がアルコール依存症だったりと、幼少期に不利な経験をしていた人が多いことが分かりました。

この結果について、ポールトン氏らは「ネガティブな子ども時代の経験は、生涯にわたる権威への不信感を抱かせ、『いざという時は自分だけが頼り』という信念を植え付けることになったのでしょう」と推測しています。


1972年にスタートしたダニーデン研究の参加者らは、記事作成時点ではちょうど50歳前後ですが、幼少期の経験の影響は早い時期に現れています。参加者が10代の時に実施された調査では、「自分は何者かに脅かされている」と誤認識しやすい傾向が見られたほか、大人になるにつれて陰謀論への傾倒を始めとする精神衛生上の問題を経験する割合が増えていきました。

また今回の分析では、ワクチンへの抵抗感がある人の中には幼少期から認知能力に問題があった人も見られたとのこと。具体的には、高校生時代に読書が苦手で、国語の理解力や処理速度に関するテストのスコアは低めでした。「長年にわたり認知力が欠けていれば、誰だって健康に関する複雑な情報を理解することは困難なはずです。このような理解力の低さと、ワクチンに抵抗感がある人によくある極度にネガティブな感情とが結びついたとき、医療従事者には不可解なワクチンへの考え方が形成されるのではないでしょうか」と、ポールトン氏らは指摘しました。

前述の通り、ニュージーランドでのワクチン接種キャンペーン直前の2021年に行われたこの研究では、回答者の13%がワクチン接種を受けないと答えていました。つまり、1割以上の人がワクチン接種を拒んでいたことになりますが、2022年時点での同国のワクチン接種率は95%と高水準です。その要因は大きく分けて次の4点だと考えられています。

・首相や保健大臣の優れたリーダーシップと分かりやすいコミュニケーション。
・新型コロナウイルスのデルタ株およびオミクロン株到来に関する初期の恐怖心をうまく利用したこと。
・ワクチン接種の義務化と国境閉鎖が広く行われ、論争を巻き起こしたこと。
マオリ族を始めとする太平洋諸島の先住民や、精神衛生上の問題を抱える人など、リスクが高い人々へのワクチン接種の責任が政府から地域団体に委任されたこと。


特に4点目の、コミュニティ主導のアプローチには、「個人ごとのニーズに寄り添ったきめ細かな知識を活用することで、ワクチン接種に関する意思決定をする上で必要な高い信頼関係の構築につながった」との見方がなされています。こうした、ワクチンに対する抵抗感について思いやりのある対応をすることが、最終的にワクチン接種率の高さへと結びついたと考えられるとのこと。

これらの知見から、ポールトン氏らは「新型コロナウイルス感染症が最後のパンデミックである可能性は決して高くありません。そこで、将来的な備えとして、私たちはウイルスやその感染メカニズム、そしてワクチンについて学校で教えることを提言します。早期教育を行えば、手洗い、マスク着用、社会的距離、ワクチン接種といった感染症対策の必要性を国民に理解してもらい、次のパンデミックに備えることができるでしょう」と述べて、幼少期のネガティブな経験に端を発するワクチンへの抵抗感の解消には、早い段階からの教育が重要であるとの見方を示しました。

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