悔しい…。
Vision Proを体験してる現地勢のツイート見てちょっと凹んでいます。今のところ国内でVision Proを触れているのは一部のITジャーナリストやメディアの数人程度。ギズモード・ジャパンでも綱藤さんが触ってきました。
正直、ここに立ち会えてなくてめちゃくちゃ悔しい…。なぜ、ここに呼ばれていないんだ、この日のためにテックが好きじゃなかったのかよ…!という気持ちです。
それくらいこのVision Proは未来を変えるプロダクトだと感じています。
こういったAR/VR系のデバイスは、体験するまで結局わからない、という特性の強いプロダクトだと思っています。だから今Vision Proを触った人の説得力は強すぎて、テックを追いかけている者として、この凄さを身近に伝えられないことに悔しさを感じています。
Vision Proに触れた人たちはなんと語彙力を失ってしまうそう。でも、自分は触っていないので語彙力がまだあるんです!(?)。
まあ冗談ですが、まだ体験できていない今だからこそ、Vision Pro自体がどうかというより、これが広まった未来の世界のことを考えたいと思います。
これはiPhoneの再来ではなく、Macの再来である
Vision Proはいずれ“Pro”が外れて、いずれVision Airのような製品になると考えています。では、なぜ1台目がVision Proなのか。
それは、まだ多くの人にとってバーチャル空間で何かするという体験が当たり前ではないから、というのが大前提にありますが、まずはVision Proの用途を絞り込むことで、潜在的にこれの良さが分かる層を狙い撃ちしているように思います。
Vision Proの発表を見返すと、ティム・クックCEOは一言目に「Vision Proは新しい種類のコンピュータ」と称していました。そしてAppleはVision Proを指すときに必ず「空間コンピュータ」と徹底して呼んでいます。
つまり、Vison Proはバーチャルデバイスではなく、本質的にはコンピュータであると捉えているのでしょう。それはAppleでいうところのMacに当たります。
Appleは近頃、iPadとMacの目的を明確に分けてメッセージングしています。iPadは学生や家族で使うデバイス、そしてMacはプロのクリエイターが制作物を作るために使うもの。
実際には多様な目的がありますが、Appleはクリエイターの制作をサポートするものとして、つまりMacの延長線としてVision Proを考えていると感じました。少なくともVision “Pro”は、iPhoneの再来ではなく、Macの再来でしょう。
3D写真の素晴らしさや、プレゼンを見て泣きそうになったディスニーのアプリなど、あらゆるエンタメが多くの人に受け入れられるために、Vision “Pro”は「新しい種類のコンピュータ」であるんだと受け取りました。
では、これがメインターゲットであるクリエイターに届くとどうなるのか?
ProDisplay XDRを買う感覚に近いのかも
Appleにとって、Vision Proには2つの課題があると思います。一つはディスプレイとして便利であるか、もう一つはリアル空間にアプリがどう介入すべきか、という点。この2つをメインターゲットであるクリエイターに投げかけているように思えます。
一つ目に関しては、ほとんど問題ないでしょう。すでにMacと連携して外部ディスプレイとして使えることは分かっているので、Macで仕事をしている人ならスムーズにVision Proでの仕事に移れるはず。
先行体験によると、表示される文字はちゃんと読めるし、違和感が全くないらしいです。超自由な作業環境を得るためのプロダクトとして十分受け入れられるだろうと、プレゼンを見て感じました。
Vision Proは日本円でおそらく45~50万円になりそうですが、感覚としてはProDisplay XDRを買う感覚に近いですね。ProDisplay XDRも470万円近くする産業用モニターのライバルとして発売されましたが、クリエイターによってはハードウェアの中身を見るとむしろコスパが良いと判断できる製品なんです。
空間コンピュータという言葉の真意
そしてティムはもう一つ大事なことを言っていたような気がします。それは「Appleで初めて、look atするのではなく、look throughする製品」という言い方。つまり、今まではiPhoneそのものが製品でしたが、Vision Proではそれを通して見るものが製品である、という話です。
Vision Proの空間コンピュータという言葉の真意は、リアルの作業空間を節約しつつ、AppleのOSがリアルな空間に介入してくるということだと思います。今までもそうでしたが、OSが主で、ハードが従である主従関係が、Vision ProとvisionOSでよりハッキリしそう。
クリエイター向け/作業用途という点ではMeta Questなどで動く「Immersed」アプリなどと似ていますが、visionOSはリアル空間がベースになっているのが大きな違いだと思います。
なので、アプリがリアル空間に介入するなかで、アプリ体験はどうあるべきかをエンジニアたちはVision Proを触りながら考えることになるはず。
またAppleは、Vision Proのプレゼンで3Dオブジェクトをほとんど出さなかったのが、この状況を深読みできると思いました。見返してみると、3Dオブジェクトが出てきたのは瞑想アプリと、Siriの球体状のアイコン、メッセージに添付された3Dオブジェクトを開いた3シーンのみ。
これはネガティブな話ではなく、今のところの実用的な体験は平面のオブジェクトを空間で扱うことである、というのが現在のベストアンサー。この話については、Psychic VR LabでSTYLYというメタバースプラットフォームを開発しているみずくんさんの記事で知りました(ちなみに、visionOSにおける平面のオブジェクトはWindowオブジェクトと呼ばれている)。
バーチャルリアリティの研究をしている人や、アプリのエンジニア・デザイナーにとっては、これからは空間のUXが大きな研究対象になっていくかもしれないとクリエイターシーンの変化を感じました。もちろん専門家も増えそうですので、ここはしっかりと追っていきます。
ちなみに自分の直近の興味は、入力インターフェースと触覚フィードバックの課題でしょうか。視線とハンドトラックのみということで、触覚のフィードバックはありません。
多くの人に届くときに、それがどのような反応になるのか気になります。触った編集部・綱藤によると「フィードバックがあったかどうか気にならないくらい自然だった」とのことでした。マジか。
“Pro”が取れる頃にはもっともっと小さくなっているのかも
今回、Vision Proのことを空間コンピュータと位置づけ、おいそれと「ARグラス」と呼ばせない雰囲気にさせているのはブランドイメージを気にするAppleらしい手法だと思いました。
ターゲットを確実に絞り込み、あえてゲームやSNS系のアプリを避けることで、「いや、まだ皆んなは待っててよ」「まだこれはMacの延長線だから」という感じで、先を予見させる展開にしています。
世の中全体的には「メガネサイズになるまで待つかな」という意見が実は多数派なのかなと思いますが、Vision Pro自体が成功するかどうかという方向の意見は実は少なく、ある意味でAppleのやり方は上手いな…と感じてしまいますね。
さて、ここに書いたことが感覚的に正しいのか、自分で答え合わせができるのは多分1年半後。気長に待ちたいと思います。え、長くない!?
Source: Apple