チェス界に現れたサイコなネコ型ボット「ミトン」がチェスプレイヤーを苦しめている

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1997年にスーパーコンピューターがチェス世界チャンピオンに初めて勝利して以降、対戦型のゲームでAIが人間を打ち負かす例がいくつも話題になっています。チェス界に新たに現れた「ミトン」という名前のボットは、かわいらしい子ネコのアバターをしている一方で、1日平均2750万ゲームをプレイして対戦相手を見下した発言をしながらプレイヤーを打ちのめす怪物として話題になっています。

The Chess World’s New Villain: A Cat Named Mittens – WSJ
https://www.wsj.com/articles/chess-mittens-cat-bot-11674018529

What is Mittens? A chess nightmare behind an innocent kitty bot | Esports.gg
https://esports.gg/news/gaming/what-is-mittens-chess-cat-bot/

1997年にIBM製スーパーコンピューターのディープ・ブルーがチェス世界チャンピオンのガルリ・カスパロフ氏と対戦し、トーナメント条件下で初めてコンピューターがチェス世界チャンピオンに勝利しました。2016年にはDeepMindの人工知能「AlphaGo」が囲碁のトップ棋士イ・セドル(李世乭)九段との対局に勝利し、その後「AlphaGo」は囲碁だけではなくあらゆるボードゲームを学習して上達できる「AlphaZero」に生まれ変わるなど、AIが人間をさまざまな分野で打ち負かすほどに進化しています。

世界最強の囲碁AI・AlphaGoがあらゆるボードゲームを学習できる「AlphaZero」に進化 – GIGAZINE

by Jotam Trejo

そんな中、2023年1月にChess.comが新しく「コンピューター戦の相手となる対戦キャラクター」として導入した「ミトン(Mittens)」というチェスボットが、チェス選手の最高位であるグランドマスターや世界チャンピオンですら悩ませるほどの実力者であると話題になっています。

ミトンと対戦するには、Chess.comにアクセスして「コンピューターと対戦」を選択。


コンピューター戦では、プレイ中にチェスのルールや戦法を教えてくれる「コーチ」、プレイヤーが優勢な時は妙手を指すがプレイヤーが劣勢だと抑えた手を指す「指導員」のほか、「初心者」や「実力者」「トッププレイヤー」などレベル別の相手を選ぶことができます。その他、2023年1月にはさまざまな実力を持つネコのアバターが追加されました。「怖がりなネコ」や「怒っているネコ」といった性格を持っていたり、元世界チャンピオンに似ていたりして、「レーティング」によって設定されたさまざまな実力を持つネコのキャラクターを選択して対戦することもできます。


そのネコの中に追加されたのが「ミトン」で、強さを示すレーティングの値も「1」となっています。説明文では、「ミトンはチェスが好き……でも彼女の実力はどうなんだろう?」とハッキリしない情報が書いてあります。


ミトンは実装以来、圧倒的な人気で多くのプレイヤーが挑戦し、2023年1月がChess.comの歴史上どの月よりも40%多い8億5000万以上のプレイ回数を達成する勢いを記録しているとのこと。ミトンはかわいらしいだけではなく、強さを示す数値が1だと思って油断したプレイヤーを見下しながら「すべてのチェスプレイヤーは、最終的に私の強力な前脚の下で崩れ落ちる……ニャー! ヘヘヘ」などをチャットで述べながら打ちのめしてきます。ストリーマーでインターナショナルマスターの称号を持つレヴィー・ロズマン氏は、「このボットはサイコだ」とコメントした後、「チェス界はミトンに対して団結しなければなりません」と付け加えました。

ロズマン氏は自身のYouTubeチャンネルGothamChessで、不透明なミトンのレーティングを計測するために、世界最強とされるチェスボット「Stockfish」と対戦させています。Stockfishのレーティングは3700あり、ミトンはStockfishにはかなわなかったため、ロズマン氏は「ミトンは世界最強よりは下回りますが、平均的なグランドマスターよりははるかに強いです」と述べています。

Can Mittens Defeat Stockfish? – YouTube
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チェスのグランドマスターであるヒカル・ナカムラ氏がYouTubeに投稿した「Mittens The Chess Bot Will Make You Quit Chess(ミトンはあなたにチェスを辞めさせる)」というムービーでは、ナカムラ氏ほどの実力者でもミトンに苦戦させられただけではなく、ミトンがサディスティックにプレイヤーを挑発する様子が視聴者をビビらせており、引き分けに持ち込んだナカムラ氏に対し「人類を救ってくれてありがとう」などのコメントが寄せられています。

Mittens The Chess Bot Will Make You Quit Chess – YouTube
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ミトンはニューヨークのハミルトン・カレッジの学生であるウィル・ウォーレン氏が考案したもので、「とてつもなく強いチェスボットに、とびきりキュートな瞳をしたアバターを与えてみたらどうなるだろうか?」というアイデアの下で誕生したそうです。そうして誕生した「かわいいのに強すぎるボット」に、Chess.comのライターであるショーン・ベッカー氏が残忍な性格を付与させました。その結果、ミトンはイタリア映画やニーチェの言葉を引用しながらその実力でプレイヤーをボコボコにする「悪名高いチェス界の敵」として仕上がりました。

また、ミトンはただ実力が高くて口が悪いことに加えて、ゲームに取り組む姿勢も最悪になっています。ベッカー氏によると、ミトンはただ単に相手を打ち負かすのではなく、あえてヒリヒリする戦いを演出して相手の精神をすり減らした上でたたきつぶすことで、「もっとやる気を失わせ、面白いことになる」と考えるのだそうです。

ミトンに挑むチェスプレイヤーの中では、ミトンの実力を示す数値として示された「1」とは、レーティングの数値ではなく、「自分こそがナンバー1だ」というミトンの自信であるとウワサされています。

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