最近、フランス革命を、ロシア革命などと一緒にしてネガティブなもののシンボルのようにとらえる視点で見る人が、いわゆる保守派の人に特に多い。
それは世界の歴史認識から大きくはずれたもので、歴史修正主義の烙印を人類共通の印鑑証明つきで貼っているようなものだ。
そうした国益から大きく外れる歴史観を排除し、世界に寄り添いつつ国益を増進しようというのが私の歴史観であり、そういう観点からの世界史を説いたのが新刊「民族と国家の5000年史 ~文明の盛衰と戦略的思考がわかる」(扶桑社)である。
安倍首相が提唱した価値観外交というのが、民主主義や人権を基調にしたもののはずだから、フランス革命を否定する人はその枠から外れるわけで、価値観外交において排除されるべきだ。
1989年の200周年のときにはパリでサミットが開かれ、各国首脳もしっかりお祝いに付き合った(サッチャーは「マグナカルタも大事」とかいって笑われたがそれでもアンチ革命などとは言わなかった。トランプも2017年のフランス革命記念日に主賓として出席して、ワシントンでも独立記念日にまねしようとしたが、地下埋設物の関係でペンシルバニア大通りは戦車は走れないというので断念した)。
2018年には安倍首相がやはり主賓として招かれていたが、豪雨対策で急遽取りやめたが、自衛隊が旭日旗を掲げてシンガポール軍とともにパレードの先頭を歩いた(韓国に対する大きな外交的勝利だった。日本は七名の男女の自衛官が日章旗と旭日旗を掲げて堂々の行進。サッカーのスタジアムと違って某国民が怒ったってなんともならない)。
やはり保守主義者が好きな中曽根康弘元首相は、旧制静岡高校でフランス語を第一外国語として学び、母校である高崎高校での講演会で「世界一の国民はフランス人で、二番目は日本人」といい、ドゴール大統領をもっとも尊敬していた。フランス革命記念日に参加しミッテラン大統領とともに閲兵し、「三色旗捧げ雷雨にたじろがず」と俳句を詠んだ。
パレードは、シャンゼリゼ通りを舞台に行われ、凱旋門が起点で、コンコルド広場が終点。その正面に貴賓席が設けられ、そこに大統領夫妻と主賓が座る。
明治維新だってフランス革命の延長線上だ。いいことばかりでないとか、反省すべきこともあるというのはありだが、それを基本において誹謗するのは国際秩序の外側、ヒトラーなどのお仲間で中国共産党未満だ。思想は自由だが、車線内を走っている方がいいと思う。
フランス革命後に植民地支配を進めたとか言う人もいるが、ひとつには、フランスの植民地政策は、カナダの開発に見られるように、革命以前からのものである。
しかも、イギリスやポルトガルのような収奪ばかりするものとは違う。ナポレオンの欧州での戦争にしても、19世紀の植民地政策はいずれも文明化と同化が基軸である。
アングロサクソンがインドでやったような簒奪とか、アメリカ先住民に対してやったようなジェノサイドと自国移民や奴隷による代替に頼った植民地政策とはまったく別のものである。
フレンチインディアン戦争がまさにフランス軍とインディアンに対するイギリス保守主義な戦いであったことを思い起こすべきでる。
目指すところの先にあるのは、占領した土地の人にも同じ権利をあたえるものだった。現実に現在においても、英国や米国は残った植民地の人に本国の参政権を与えていないが、フランス領タヒチの人は大統領選挙に投票でき、国会に議員も送っている。
それは日本が半島や台湾で行った政策と同じである。フランスの政策を批判することは日本国民の歴史にとって天に唾するものだ。
また、日本の保守主義者は、フランス革命がルイ16世やマリー・アントワネットをギロチンにかけたことを皇室の将来に重ね合わせて心配するが、彼らがギロチンにかけられたのは、外国と通じて国を裏切ったからだ。
ルイ16世はさすがに躊躇したが、マリー・アントワネットは、オーストリアやイギリス、あるいは、愛人フェルゼンのスウェーデンとつるんで、フランスを攻撃させるように薦め、国外に逃亡しようとした。彼らは大逆行為を行ったから死刑にされたのだ。
フランスでは右翼は、第二次世界大戦でも国を裏切り、ヒトラーに降伏し、彼らの手先となってユダヤ人虐待にも手を貸した。
それに対して、共産党まで含めた左翼は勇敢に戦った。だから、フランスではどちらかといえば左翼が愛国で、右翼が売国奴であった歴史がある。そこのところが反日左翼とは訳が違う(だから日本の左翼はフランス革命の信奉者とはいえない)。
その辺の事情も理解せずに、フランス革命は国王を王妃をギロチンに賭けたからけしからんというのは、世界史に対する理解不足も甚だしい。
戦後最初の首相だった東久邇稔彦王は、亡くなるときの死の床でラマルセイエーズをフランス語で歌いながら亡くなられた。ドイツと組んで間違った方向に行くまで、大日本帝国はフランス革命を原点とする民主主義の側にあったし、それが日本に取って正しい道である。
日本の保守主義が民主主義にを向けるイデオロギーに堕さないように願うばかりだ。
ちなみに、最近、日仏の軍事協力の進展は顕著で、両政府は13日午後、自衛隊とフランス軍が物資や役務を融通し合う物品役務相互提供協定(ACSA)に署名した。これは、太平洋やインド洋、さらには地中海にまで勢力を広げようとしている中国に、日本、フランス、オーストラリアが連携してあたる協力関係ができあがりつつあるからだ。
もともと、フランスとオーストラリアが太平洋では対立していたが、中国という共通の心配の種を前に協力が進み、そこに日本も連携していくことになったわけだ。フランスと対立することは、彼らをインド洋・太平洋において中国の側に追いやることでもある。
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