JR西日本、AIでベテラン指令員の運転整理を再現、「鉄道指令業務アシストAI」オルツと共同開発 ダイヤ乱れの復旧に向けた運転指令業務、人間と同等レベルで実現

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 株式会社オルツと西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)は5月24日、運転整理のAI化に向けた共同開発に取り組むと発表した。AIによる運転整理支援ソリューションが実現すれば、司令員の経験年数の違いなどによる能力差によって生じる運転整理案のバラつきを縮小し、列車遅延による利用者への影響を最小限にとどめることができるという。

 JR西日本グループでは2020年、株式会社JR西日本イノベーションズがオルツに出資。JR西日本グループの保有する技術ノウハウのAI化に取り組んできており、その1つとして、運転整理を行うベテラン指令員の思考・判断のデジタル化の実現可能性を検証。2022年度には、JR西日本管内の実在する線区・実在するダイヤのデータを使って、列車の運行乱れが発生した際に自動で運転整理を行うためのAIモデルを検証した。

 このAIモデルが指令員の運転整理を支援できる有用なソリューションとなる見込みが立ったため、検証フェーズから製品開発フェーズに移行し、JR西日本による主導のもと、オルツとの共同開発をさらに加速させることとした。

 オルツでは、個人の意思をデジタル化したAIクローンをクラウド上に配置し、あらゆるデジタル作業をAIクローンにさせることを目的とした「P.A.I(パーソナル人工知能)」を開発している。このP.A.Iを組み合わせたベテラン指令員の運転整理再現が可能になれば、さらなるダイヤ復旧の質向上が実現するとしている。

 オルツによると、鉄道DXの試みの1つとして「鉄道指令業務アシストAI」を開発。列車のダイヤ乱れが発生した際、指令員が作成した運転整理案とAIの運転整理案について、数十事例を比較・検証した結果、AIの解が指令員の案と同等もしくはそれ以上の結果を出すことに成功したという。

 今後、次なるフェーズにおいて、このAIモデルの実用化に向け、現在は一部区間で行っている実証範囲を拡大。実際の現場での利用に耐えうる精度とUIの設計・実装などを行うほか、新たな機能の追加、また、JR西日本での活用に限らず、共同で鉄道各社へ鉄道DXソリューションの販売を展開する予定だ。

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