日経平均3万円、今度こそ本物か?

アゴラ 言論プラットフォーム

日経平均が3万円を超えてきました。日本の株式市場にフォローの風が吹いていることは確かですが、さて、これは本物なのでしょうか?少し見ていきたいと思います。

その前にみておきたい指標があります。TOPIX(東証株価指数)なのですが、あまり注目されないことが不思議な気もします。こちらは実は現在、1990年8月以来の水準を更新し続けています。バブルのピークが89年12月でしたのであと8カ月分を回復すればバブル期をしのぎ、史上最高になります。TOPIXは1968年1月の東証一部全銘柄の時価総額を分母に、概ね2200銘柄の時価総額に調整を加えて分子にして計算します。

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TOPIXは時価総額が大きいところの動きを拾いやすく、日経平均は値嵩株の動きを拾いやすい特徴があり、NT比率で見ることで現在の市場の動きを比較することも可能です。

一方の日経平均ですが、こちらの超長期チャートを見ると21年9月に30670円をつけており、それ以前ですと3万円水準は90年9月の時点まで遡ることになります。ですので次回、株価がお茶の間で話題になるとすればこの30670円を抜けた時になるかと思います。現在、TOPIXの方が先行しているということは半導体関連銘柄の株価が冴えないことが理由ではないかとみています。このセクターの株価回復にはもうしばし時間がかかると思われます。一方、TOPIXに影響を与えやすい銀行が奇妙に注目される状況にあります。

3大メガバンクの決算は三菱UFJとみずほが悪くなかったと思います。三井住友は失望感でした。ただ収益性は3行共に今後、上がっていくと思われます。長年悪口を言われたみずほもいよいよ垢落としになりそうな気がします。欧米と比べ3大メガバンクの収益力はそのポテンシャルと比べてまだ余力が相当あるはずで銀行が頑張れば他の産業も元気が出るのでこのセクターは注目です。また地銀に関しても今般クレディセゾンがスルガ銀行を持ち株会社にするなど再編が引き続き進むでしょう。

とすればお前は日経平均が更に上伸するとみているかのか、といえば目先はYESでありますが、不安材料があります。その一つは為替です。私が年初に日経平均は結局、27000円程度なんじゃないか、と申し上げたのはアメリカの利上げが止まれば円安から円高に振れるとみているからです。ところが為替は現在でも多少円安のバイアスがかかっています。これはおかしいのですが、たぶん、市場は植田日銀総裁がそう簡単に動かないだろうと踏んでいるからではないかと思います。つまり植田氏の心臓を市場が試している、とも言えます。

もう少し市場の中身を見ると絵図は明白に見えてきます。東証プライム市場指数は新市場区分けになってから最高値を更新し続けています。スタンダード市場指数もようやく最高値に届くところです。ところがグロース市場指数やマザーズ指数をみると全然ダメ。特にマザーズは目も当てられないほど下がったまま上昇のきっかけを探せていません。

と言うことは現在の株価は外国の機関投資家によるマネーであり、かつ、市場が煮え切らないアメリカ市場からの逃避マネーであることはほぼ確実であります。

以前も申しあげたとおり、ハゲタカマネー、いや鳶は一気に襲来し、「アゲ」をかっさらって撤収する傾向が強く、今の日本株ブームも腰が据わったマネーではないかもしれません。つまり、北米市場が回復すればそのマネーはさっさとポジションを変えるのではないか、と感じるのです。

では北米市場はお前はどう見ているのか、と言えば近いうちに落ち着くと見ています。現在、北米の最大の懸念はインフレではなく、消費者のお財布の中身であります。端的に言えば財布が軽すぎて消費が続かない懸念からR(景気後退)リスクが点灯している点です。それがハードランディングか、ソフトランディングかの論争はありますが、株価が現在、それを織り込みつつあるので近いうちに現在の膠着状態、チャートの見方によっては三角保ち合いが上放れしてもおかしくない状況です。

外国人投資家は「油揚げ」を狙う場合と買収を画策する買いの2通りがあります。日本企業は外国企業に買収されにくいのが日本の国際化につながらない一面もあります。最近は外国人社長は普通になってきたのですが、外国企業が持つ日本のオペレーションはまだほとんどない状態です。ということは外国企業から見て投資対象にならないと思われている根本的理由があるはずです。その話は別次元になりますので今日はしませんが、それが最終的には日経平均が4万円を超えられるかどうかの試金石とも言えなくはありません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年5月18日の記事より転載させていただきました。