ニコン、新型ミラーレスカメラ「Z8」発表–フラッグシップ級の性能を凝縮

CNET Japan

 ニコンは5月10日、新型ミラーレスカメラ「Z 8」を発表した。発売日は5月26日。価格はオープンプライスで、想定価格は60万円前後となる。


ニコン「Z 8」

 Z 8は、同社が2021年に発売したフラッグシップモデル「Z 9」クラスの機能と性能を追求した、プロ・ハイアマチュア向けモデル。静止画だけでなく、動画をメインに撮影するユーザーもターゲットに据える。


Z 8の背面

 撮影素子として、有効画素数約4571万画素の積層型CMOSセンサーを搭載。「Z7 II」比で12倍の高速静止画読み出しを実現する。イメージセンサーにはフッ素コートや導電コートを採用するほか、レンズ交換時に機能するセンサーシールドを搭載し、ゴミの付着を抑制する。画像処理エンジンは「EXPEED 7」を採用。Z 7II比で約10倍の高速処理を実現する。


イメージセンサーを保護するセンサーシールド

 シャッタースピードは最速1/32000秒で、常用ISO感度は64-25600。また、物理シャッターを搭載しない「メカシャッターレス機構」としており、世界最速のスキャンレート達成により、ローリングシャッター歪みを最小限に抑えているという。連写速度は、「JPEG(L)FINE」または「高効率RAW」の撮影モードにおいて、秒間約20コマを実現。1000コマ以上の連続撮影が可能だ。加えて、約1100万画素のJPEG撮影時には、秒間最高120コマの「ハイスピードフレームキャプチャ+」も使用できる。さらに「プリキャプチャ機能」も搭載し、シャッター全押しから最大で1秒さかのぼってJPEGで記録できる。

 ファインダーには、3000カンデラ/m2対応のQuad-VGAパネルを採用。また、連写時にファインダー像の消失や表示飛び、同一画像の表示がない「Real-Live Viewfinder」を採用しており、高速連写時でも常に被写体の動きが確認できる。


接眼目当ては、ニコン上級機伝統の円形

 オートフォーカスでは、人物や動物(犬、猫、鳥)、飛行機など、計9種類の被写体検出機能を搭載。AFポイントの形状を選べる「カスタムワイドエリアAF」は、静止画では20パターン、動画では12パターンが使用可能。低輝度限界は-9EVを達成している。

 動画撮影性能では、12bit RAW動画の内部記録、8.3K 60p対応の12bit N-RAW、12bit ProRes RAW HQ、10bit ProRes 422 HQ(4K UHD)、クロップなしの4K UHD 120p(H.265)、オーバーサンプリングによる高精細4K UHD 60p、50p、30pにそれぞれ対応。4K UHD 60pでは最長125分、8K UHD30pでは標準モードで60分、モバイルバッテリーなどを接続する高温モードで90分の連続撮影が可能だ。加えて、レンズを操作せずにズームが可能な「ハイレゾズーム」にも対応している。

 描写性能として、美肌効果機能を新たに搭載。人の顔を自動で検出し、目や髪のシャープさを保ったまま、肌のみを滑らかに描写できる。最大3人まで同時適用可能で、動画やライブストリーミングでも使用可能だ。また、色相や明るさを調整できる人物印象調整や、人物撮影時のオートホワイトバランス性能向上といった機能強化も図っている。

 ボディは、前面にマグネシウム合金を採用。背面などには、帝人が開発した新素材の「Sereebo Pシリーズ」を採用し、マグネシウム合金同等の強度を確保。これにより、デジタル一眼レフカメラ「D850」と同等以上の堅牢性や信頼性を確保した。重量は約910gで、Z 9よりも約30パーセント軽量化している。背面モニターは、縦横4軸チルト式。縦位置撮影の自動回転表示にも対応する。また、「スターライトビュー」やボタンイルミネーション、赤色画面表示など、暗所での撮影機能も搭載する。手ブレ補正機構は、ボディとレンズを連動させる「シンクロVR」に対応し、最大で6.0段の補正を実現。Zレンズによる動画撮影時には、電子手ブレ補正機能も使用できる。


充給電用と通信用の2つのUSB Type-C端子を搭載

背面モニターは縦横4軸チルト式で、縦、横とも画面チルトが可能だ

 メモリーカードスロットは、CFexpress TypeB/XQDカード用と、SDカード(UHS-II対応)用を装備。USB端子はType-C対応で、充給電専用と通信用の2つの端子をZシリーズで初搭載。通信しながらでも充給電が可能となる。


CFexpress TypeB/XQDカード用とSDカード用のスロットを搭載

 このほか、Z 8専用のパワーバッテリーパック「MB-N12」を新たに発売する。撮影時間や撮影枚数を約1.8倍に拡大するもので、ボディ同等の防塵防滴性能や、マイナス10度での動作性能を確保。USBでの充給電に対応しており、単体での充電やホットスワップにも対応する。想定価格は、約5万3000円となる。

映像業界への訴求を図るZ 8

 ここまで列挙したZ 8のスペックは、そのほとんどがフラッグシップ機であるZ 9と同等だ。メモリーカードスロット(Z 9は、CFexpress TypeB/XQDカードのダブルスロット)や、堅牢性・信頼性(Z 9は「D6」相当)などで差異はあるものの、Z 8は実質「ミニZ 9」と言える。

 ただしZ 8は、「Z 9の縦位置グリップ部分を切り取っただけ」の製品ではない。スペック表に現れる差別化はもちろんだが、その他にも、ボディの小型化にともなう電池容量の削減や、これを受けた消費電力の削減、新型VRユニットの搭載など、内部的にはさまざまな点で違いがあるという。

 また、ニコンのデジタル一眼レフでは、フラッグシップ機に次ぐプロ・ハイアマチュア向け製品として、D800番台シリーズを展開していた。今回のZ 8は、直接的な後継機ではないが、開発陣は「8」という数字を意識し、結果的にZ 9に匹敵する高性能機となったという。

 特に今回力を入れたのが、動画撮影機能だ。海外ではミラーレスカメラに動画撮影機能は必須と認識されているといい、今回の宣伝コピー「READY.ACTION.」でも、映像業界で使われる掛け声を用いることで、業界への訴求を図ったという。先発のZ 9では、映像業界のプロへのニーズを着実に獲得しているといい、ニコンではZ 8の投入によって、さらなる映像業界での認知拡大を図る構えだ。

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