耳を塞がない「nwm MBE001」はどこまで実用的か–NTT開発「PSZ技術」の実力は

CNET Japan

 NTTグループ内で音響機器の研究、開発を行うNTTソノリティは4月3日、自社音響ブランドのnwm(ヌーム)より、世界初の技術である「PSZ技術」を搭載した完全ワイヤレスイヤホン「nwm MBE001」を発売。本製品は、クラウドファンディングサービス「GREEN FUNDING」にて3300万円以上の支援を受けた、期待値の高い完全ワイヤレスイヤホン。販売価格はオープンだが、想定税込価格は2万4000円前後。

「nwm MBE001」
「nwm MBE001」

 nwm MBE001の特徴は、一般的な完全ワイヤレスイヤホンに多いカナル型ではなく、耳の穴を塞がないオープン型のデザインを採用している点。本記事では、実際に2週間ほど実機を試したうえで、使用感について紹介していく。

世界初の「PSZ技術」とは

 nwm MBE001に搭載されているPSZ技術は、再生している音に対して180度位相を反転させた波形(逆相)を重ねることで、周囲に漏れる音を打ち消すというもの。近年一般的になりつつある「ノイズキャンセリング」が、外側から入ってくる音を電子信号処理で打ち消す機能であるのに対し、PSZ技術は内側から外に出る音をアコースティックで打ち消すことで、音漏れを低減する機能となっている。

 実際、一般的な音量で音楽を聴く程度であれば音漏れはほぼない。音楽の再生中にイヤホンを取り外すと、スッと音が遠のいていく不思議な感覚が味わえる。ただし、オープン型という機構上、再生音量を極端に大きくすると多少は音が漏れるので、屋外での使用には少し気を使うべきだろう。

圧迫感のない装着感が特徴

 nwm MBE001は大きく分けると、音を再生するハウジング部分、電源やバッテリーを搭載した部分、イヤーフックの3パーツからなる。イヤーフックを耳の上に引っ掛け、ハウジングを耳の穴の上あたりにかぶせるように装着する。

音を再生するハウジング部分、電源やバッテリーを搭載した部分、イヤーフックの3パーツからなる
音を再生するハウジング部分、電源やバッテリーを搭載した部分、イヤーフックの3パーツからなる

 カナル型イヤホンのように耳の穴に直接挿し込む必要がないため、耳を圧迫することがなく、長時間着けていてもストレスをほとんど感じないのが魅力。片側約9.5gと、イヤーフック付きのワイヤレスイヤホンとしては軽量なので、重みによる疲れもほぼない。

片側約9.5gと、イヤーフック付きのワイヤレスイヤホンとしては軽量
片側約9.5gと、イヤーフック付きのワイヤレスイヤホンとしては軽量

 ただし、耳とハウジングの距離が大切なPSZ技術を搭載しているという特性から、イヤーフックはかなり固く、調節はほとんどできない。NTTソノリティ担当者いわく、「多くの人の耳にフィットする形状になっている」とのことだが、購入前に一度試してみるのがよいだろう。

イヤーフックを耳の上に引っ掛け、ハウジングを耳の穴の上あたりにかぶせるように装着する
イヤーフックを耳の上に引っ掛け、ハウジングを耳の穴の上あたりにかぶせるように装着する

 また、イヤーフックを耳にかけて使用する性質上、眼鏡と併用する際には若干注意が必要。ツルが細い眼鏡であれば併用自体は可能だが、慣れるのには少し時間を要する。

下部にボタンが搭載されており、再生・一時停止の切り替えやペアリングができる
下部にボタンが搭載されており、再生・一時停止の切り替えやペアリングができる

 ハウジングの反対側、電源やバッテリーを搭載したパーツには、下部にボタンが搭載されており、再生・一時停止の切り替えやペアリングができる。近年のワイヤレスイヤホンでは、タッチセンサーにて各種コントロールを行う製品が多いが、誤操作の少なさはボタン式に軍配が上がる。nwm MBE001も例にたがわず、ほぼミスなく希望の操作が行えるので、初心者にも優しいイヤホンと言えるだろう。

オープン型らしい広がりのある音質

 音質としては、オープン型のイヤホンらしく、広がりや奥行きの表現が印象に残る。インパクトの強い低音やキビキビとした細やかな表現はやや苦手なものの、臨場感の表現はかなり優秀といえる。左右でしっかりと奥行きが表せるので、音楽だけでなく、映画の視聴などに用いるのもおすすめだ。

 音を再生している時のイメージとしては、イヤホンを装着しているというよりも、小型のスピーカーを耳の周辺に置いている感覚に近く、没入感も十分味わえた。なにより、耳の穴に直接ハウジングを装着しないという性質から、〝聴き疲れ〟を起こしにくいのが大きなメリットだ。

 もちろん、耳の穴は完全に開いた状態なので、再生音量を極端に大きくしない限りは、着けていないのと遜色ない形で会話ができる。筆者の場合は自宅で使用する機会が多いが、インターホンの音を聞き逃さずに済むのはありがたい限りだった。

 内蔵ドライバーは12mmと、イヤホン製品としては大型。対応コーデックはSBC、AAC、aptXの3種で、Bluetooth 5.2に対応している。2台の再生デバイスを同時に待ち受ける「マルチポイント機能」は非対応だが、NTTソノリティ担当者に確認したところ、アップデートにて対応することも検討しているとのこと。PCでウェブ会議、スマートフォンで電話をする機会の多いビジネスパーソンにとって、マルチポイント機能は必要不可欠ともいえる便利機能なので、期待して待ちたいところだ。

ケース、バッテリーには改善の余地あり

 nwm MBE001はバッテリー駆動時間が最大6時間。屋外でも使用する完全ワイヤレスイヤホンとしては、少し物足りない印象もある。加えて気になるのが、購入時に付属するケースは「キャリングケース」というもので、一般的な完全ワイヤレスイヤホンのように、充電機能を備えていないという点。つまり、nwm MBE001を充電する際には、本体を一度キャリングケースに戻したうえで、USB Type-Cケーブルに接続する必要がある。

キャリングケースに収納したところ
キャリングケースに収納したところ
属するケースは「キャリングケース」
属するケースは「キャリングケース」

 バッテリーが搭載されていない分、キャリングケースは薄型になっており、ポケットにもしまいやすいといったメリットがあるが、出張や旅行に持っていくことを考えると、結局ケーブルを持ち運ぶ必要があるのは残念。特にiPhoneユーザーの場合は、Lightningケーブルに加えてUSB Type-Cケーブルが必要となるので、改善してほしいポイントである。

薄型で持ち運びしやすいが、充電にはUSB Type-Cケーブルが必要になる
薄型で持ち運びしやすいが、充電にはUSB Type-Cケーブルが必要になる

 また、防水性能はIPX2相当となっており、少しの雨や汗ですぐに故障する恐れはないが、長時間雨にあたるといった使用シーンは避けるべきだろう。ストレスの少ない装着感や、音漏れを低減するPSZ技術を搭載したイヤホンだけに、もう少し屋外での利用シーンに順応してほしいと感じている。

専用アプリ「nwm Connect」。イコライザーの調節が可能
専用アプリ「nwm Connect」。イコライザーの調節が可能
ボタンクリック時の操作確認ができる
ボタンクリック時の操作確認ができる

 なお、nwm MBE001の発売に合わせて、iPhone、Androidスマートフォン向けに、専用アプリ「nwm Connect」が配信されている。アプリではイコライザーの調節やボタンクリック時の操作確認ができる。リリース間もないアプリながら、直感的でわかりやすいUIになっているのは好印象。今後、nwm MBE001や後継モデルで機能が追加されていけば、アプリでできる操作も増えていくだろう。

気になるポイントはあれど未来を感じる完全ワイヤレスイヤホン

 イヤーフックの仕様やバッテリー性能、キャリングケースなど、使っていて〝惜しい〟と感じるポイントもこまごまとあるものの、耳を塞がない快適さや装着感の軽さが特徴のnwm MBE001。新技術であるPSZ技術も含め、これまでのイヤホンとは違う、新しい体験ができる製品になっている。

 仕様上のクセがあるため、万人におすすめとは言わないが、新しい技術を体感したい人や、カナル型イヤホンの圧迫感が苦手な人には、ぜひ試してほしい。

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