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ニコール・キッドマン氏のスキンケア習慣や、「一緒に身支度(get ready with me)」コンテンツを見たことがある人々は、セララボ(Sera Labs)の商品も目にしたことがあるだろう。
女優である同氏は、2020年にセララボとパートナーシップを締結して以来、同社のグローバルブランドアンバサダーおよび戦略ビジネスパートナーとして活動してきた。同社はキッドマン氏とともに、セラトピカルレボリューション(Seratopical Revolution)というクリーンで植物由来のスキンケア商品ラインを2021年に立ち上げた。キッドマン氏は同社の株式も保有しており、セラトピカルレボリューションのマーケティングと商品開発に携っている。
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この戦略パートナーシップによって、セララボは着実な成長を続けてきた。同社の親会社であるアベニールウェルネスソリューションズ(Avenir Wellness Solutions、以前の名前はキュアーファーマソーティカル[CURE Pharmaceutical])は、同社の収益が第3四半期に前年同期比32.1%増の180万ドル(約2億3600万円)に達した。2022年には約800万ドル(約10億5000万円)の売上高を記録した。セレブリティの株主と共同で作業するのは、この数年間で美容品新興企業のあいだでより一般的な戦略となったが、影響力のあるパートナーを持つだけでは成功は保証されない。
セララボの創設者で、アベニールウェルネスソリューションズのCEOを務めるナンシー・ドゥィッチ氏は次のように述べている。「キッドマン氏は当社の商品を愛している。同氏は数年前、足首を骨折したとき実際に当社商品のひとつを使用した。同氏は、自分が信用している事業の一部を保有することを望んでいる」。
アカデミー賞と関連づけたキャンペーン
ドゥィッチ氏がセララボを創設したのは2018年のことで、その後同社は現在のアベニールウェルネスソリューションズに、2000万ドル(約26億2000万円)相当の契約で売却された。アベニールウェルネスソリューションズの商品売上はすべてセララボからのものだと、ドゥィッチ氏は述べる。セラトピカルレボリューションにはアイセラム、顔や首用の化粧水、ブライトナーなど9つのSKU(在庫管理単位)がある。セラトピカルレボリューションの商品価格は19ドル95セント(約2610円)から39ドル99セント(約5240円)で、同社ウェブサイトのほか、Amazonや約1800のウォルマート(Walmart)店舗で購入できる。
両社のパートナーシップは、キッドマン氏自身がセララボの商品を使用した後、同氏のチームがドゥィッチ氏にコンタクトをとったことからはじまった。それ以来キッドマン氏は、同ブランドの広告キャンペーンや、ソーシャルメディアの投稿に数多く登場している。2021年にハーパーズバザー(Harper’s Bazaar)で公開され、35万回以上の再生回数を獲得した動画では、キッドマン氏がセララボの洗顔フォームなど3つの商品を紹介した。
第95回アカデミー賞(Academy Awards)の夜、同社はこの待望のイベントを利用してブランドへの注目を集めようと、再度キッドマン氏を起用した。今回は、キッドマン氏のセレブリティメイクアップアーティストを長年務めているケルシー・ディーニハン氏も起用し、キッドマン氏がオスカー(Oscars)に備え、セラトピカルレボリューションの商品を使ってどのような準備をしているかを、インスタイル(InStyle)やハリウッドライフ(Hollywood Life)などの雑誌に売り込んだ。ディーニハン氏はこの取り組みのため、インタビューにも参加した。
キッドマン氏がレッドカーペットを歩いて(アカデミー賞の会場に現れて)から24時間後、セラトピカルレボリューションは2万ドル(約262万円)分の商品を売り上げた。この商品ラインの平均売上額は1日あたり5000ドル(約65万5000円)だ。約3日後には、合計6万ドル(約800万円)を超える注文を受けた。同社のアドーリング(Adoring)アイセラムやフリーダム(Freedom)昼夜用モイスチャークリームは、そのときにもっとも売れた商品の一部だ。
「深夜の3時に売上が増えはじめた。深夜からこれほど売上があるとは予測していなかった」と、ドゥィッチ氏は述べている。
信頼性の高いパートナーとの取り組み
リングコミュニケーションズ(Ring Communications)の創設者で、サフォーク大学(Suffolk University)の助教授を務めるキンバリー・リング・アレン氏は、会社の権利を保有するセレブリティパートナーを持つと、そのセレブリティは単に投稿の報酬を受け取っている人ではなくなり、プロモーションキャンペーンがより信頼性の高いものになると述べている。
同氏は次のように述べている。「人々は、平凡な画像を投稿しているだけのインフルエンサーを信用しなくなった。このようなインフルエンサーは、投稿によって明らかに報酬を受け取っているためだ。ブランドにとって、自社に投資している人、または自社商品を実際に使用していたり、会社のために売上を生み出していたりする人と協業することは、より理にかなっているのだ」。
実際に、各ブランドは単なるマーケティングの道具としてではなく、ブランドの共同所有者としてセレブリティを求めるようになってきた。たとえばアルコール飲料ブランドのトーマスアシュボーン(Thomas Ashbourne)は、女優のサラ・ジェシカ・パーカー氏、バネッサ・ハジェンズ氏、アシュレイ・ベンソン氏、ロザリオ・ドーソン氏と共同で作業しているが、これらのセレブリティは同社の株式も保有している。スキンケアの分野では、ループス(Loops)が2020年、モデルのエミリー・ラタコウスキー氏が同社の少数株主として出資していると語った。
しかし、言動に問題があるセレブリティのパートナーは、ブランドにとって利益より害をもたらすおそれがあると、アレン氏は警告する。アディダスは最近、ラッパーのカニエ・ウェスト氏とのパートナーシップを、同氏の反ユダヤ主義的な声明を理由として解消した後、売れなかったイージー(Yeezy)商品により5億4000万ドル(約707億円)の損失を出したと発表した。
「結局のところ、これらのセレブリティはブランドの一部となるため、セレブリティがどのように行動するかを会社はコントロールできない。そのため、厳密な審査が必要になる。これは、単に多くのファンを抱えるセレブリティを選べばいいというものではない。今日では、人々の共感を集めることができるセレブリティを選ぶのが重要だ」と、アレン氏は述べている。
セララボへの注目が高まっている現在、同社はその勢いを維持するために、メタ(Meta)や、TikTok、Googleなどのプラットフォーム用の広告を増やすために取り組んでいると、ドゥィッチ氏は語る。また、キッドマン氏と共同で、新商品のひとつについて、TVコマーシャルの撮影も計画している。
[原文:How Sera Labs is leveraging its celebrity partnership with Nicole Kidman]
Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Sera Labs