火の見櫓のある風景って、ステキ(群馬県六合村赤岩集落)
「火の見櫓(ひのみやぐら)」というものをご存知だろうか。 それは、かつて火災の見張り台、警報発信台として 日本全国で活躍していた小さな鉄塔のことである。
市内放送用のスピーカーが普及し、すっかりその役目を終えた今、 都会ではめっきり見られなくなってしまったけれど、 地方に行けばまだまだ数多く目にすることができる集落景観のシンボル的存在。
そんな火の見櫓は、見れば見るほど味のある素敵な構造体。 今回は、それら火の見櫓の鑑賞法を紹介したいと思う。
※2007年12月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
とりあえず、火の見櫓を見てみよう
さて、火の見櫓を鑑賞すると言われても、そもそも火の見櫓がどんなモノなのか、いまいちピンと来ない方もいるのではないだろうか。 まずは火の見櫓というものはどういうものなのかを見ていただいて、それから説明に入りたい。
下の写真は、典型的な「三脚六丸型」火の見櫓の姿である。
おっと、いきなり「三脚六丸型」というワケの分からない言葉を使ってしまったが、これは火の見櫓のタイプを表すものだ。
とは言っても、そんな難しいものではない。これはすなわち、脚が三本の鉄塔で、屋根の形が六角形、見張り台の床の形が円形。 それで「三脚六丸型」。ホラね、簡単でしょう。
このタイプ名はとても重要。 なぜなら、火の見櫓の鑑賞ポイントは、ズバリこの言葉に集約されているから。 つまり、火の見櫓鑑賞で押さえるべき場所とは……
・脚
・屋根
・見張り台
ということなのである。 ……あ、いや、ゴメンナサイ。もう一つだけ重要なのがあった。
見張り台に吊るされている半鐘、そのチェックも忘れてはならない。 半鐘は火の見櫓の魂。最近では火の見櫓の役目が無くなり、半鐘が外されてしまった火の見櫓も多いが、そんなのは、火の見やぐらではないと主張したいくらいだ。
もう一度言うと、脚、屋根、見張り台、そして半鐘。ぜひともこれらをじっくり観察し、その様々な種類を楽しんでもらいたい。
さぁ、これらを踏まえた上で、今度は別の火の見櫓を見てみよう。
一見、先ほどのものと同じようにも見えるけれど、よくよく見てみると少し違う。屋根の形が四角だというのは言わずもがな。全体的に先ほどのものより豪華な意匠となっているのがお分かりだろうか。
見張り台の手すりにはマダームな装飾が施され、より丁寧な仕事がなされているように見える。脚の湾曲もスラリとしていて野暮ったさが無い、エレガントな火の見櫓だ。
……とまぁ、評を言うならばこんな感じだろうか。
しかしまぁ、ここまであれこれ言っておいて何なのだが、正直、別に好きに見ていただいて構わないような気もする。近づいて下から見上げるなり、遠くから熱視線を送るなり、お好きなやり方で鑑賞してもらいたい。
あ、でも登るのはまずいかな。うん、それはまずそうだ。許可なしで勝手に登ったりしたらきっと怒られる。ご注意を。
っていうか、火の見櫓ってどこにある?
さてさて、なんとも今更な話だが、 そもそも火の見櫓がある場所が分からなければ鑑賞などできやしない。火の見櫓とは、一体どこにあるのだろうか。
全国に万遍なく分布しているのかと思いきや、それはどうも違うらしい。私の経験からすると、関東地方や中部地方には多くの火の見櫓が現存しているように思う。いずれも市街地より郊外、湾岸部より山間部の集落に残っていることが多いようだ。
火の見櫓があるのは、たいていその集落の消防団や消防設備倉庫などの横。当然ながらこれは、火の見櫓は火災を見張る目的、または火災の際の避難勧告、消防団召集を行う目的で作られたためだ。
今ではその本来の目的はすっかり消え、スピーカーに取って代わられてしまっているが、中には火の見櫓そのものにスピーカーが取り付けられているものもある。
火の見櫓があまりに個性豊かなワケ
これまでのいくつかの火の見櫓の写真を乗せたが、その中で同じ形状のものは一つも無いことにお気づきだろうか。火の見櫓は一つ一つが異なる姿、風情を持っている。その理由は至って簡単。
火の見櫓は工業的な一括生産によって作られるわけではなく、その町の鍛冶屋によって一つ一つ手作りで作られていたからだ。それ故、意匠に微妙な違いが出てくるのである。
また、場所によっては同一の職人が周囲の火の見櫓をまとめて作っている所もあるらしく、もしくは近場の火の見櫓を参考にして作られた場合もあるのか、付近に形状がよく似た火の見櫓が見られる場合もある。
そういうのを見つけていくのもまた火の見櫓鑑賞の一つの楽しみなのだ。