旧ソ連の宇宙開発で用いられた地球儀で宇宙船の位置を示す「Globus」とは?

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旧ソビエト連邦で行われた宇宙開発では、有人宇宙船のソユーズに「Globus」と呼ばれる慣性航法装置が用いられていました。エンジニアのKen Shirriff氏がGlobusの修理とリバースエンジニアリングを行った際に複雑な内部機構や部品が明らかになっています。

Inside the Globus INK: a mechanical navigation computer for Soviet spaceflight
https://www.righto.com/2023/01/inside-globus-ink-mechanical-navigation.html

Globusは外部からの情報を受け取ることなくソユーズの位置を表示するための慣性航法装置で、宇宙飛行士が初期位置や軌道周期を設定するための複数のダイヤルが配置され、インジケーターには宇宙船の緯度や経度、衛星の数などが表示されます。また、この装置には着陸船の着陸位置を予測するモードもあったとのこと。


Globusの正面に配置された地球儀には、山や川、湖などの地形が表示され、着陸地点の選定に役立てられました。また、ソ連の国境や共産・非共産主義国家の区分も表示されていました。


地球儀における赤道には金属のリングが取り付けられ、水平軸を中心に回転しました。軌道傾斜角はソユーズの標準軌道である51.8度に固定されていたため、ランデブードッキングといった軌道を変更する必要がある際にはGlobusは役に立たなかったとのこと。そのため、Globusは2002年のソユーズTMA-1の打ち上げの際にはすべてコンピューターディスプレイでの表示に置き替えられました。


Globusは歯車の回転速度に応じて地球儀が軌道軸を中心に回転する速度を増減させることで、ソユーズの軌道速度を調整することが可能でした。


さらにGlobusは、現在のソユーズの軌道を投影し、着陸の際に指定された角度に基づいて着陸位置を計算することで、着陸船の候補地を約150kmの精度で表示するための仕組みがありました。設定の際には、着陸の角度をダイヤルで設定します。するとGlobusは着陸地や地球の位置などを考慮して地球儀を回転させ、指定された位置で自動的に地球儀の回転を停止させたとのこと。


Globusの電子基板には4つのリレーやトランジスタ、抵抗、ダイオードが搭載されています。リレーは着陸位置を計算する機構を制御し、ダイオードはフライバック方式で作動します。また、トランジスタはソユーズの起動位置を電圧信号に変換したものを増幅する働きがありました。


また、Globusは軌道回転用と地球回転用の2つのラチェットによるソレノイドで駆動し、電気信号の1周期ごとに歯車が1つ動き、地球儀を動かすことが可能でした。


地球儀にはNASAの追跡拠点と無線通信の精度を高めるUSNSのバンガードの印が貼られていることから、このGlobusは1975年のアポロ・ソユーズテスト計画用に作られたものであることが確認できるとのこと。


Globusの歴史は古く、1960年代にボストークボスホートの打ち上げで使用された簡易的なシステムから始まりました。その後、1967年のソユーズ宇宙飛行を成功させるためにより複雑なGlobusが作られ、宇宙船の情報表示システムの一部となりましたが、2002年のソユーズTMA-1の打ち上げからはすべてデジタル表示に置き換えられています。


Globusは、歯車やカム、差動装置などの複雑なシステムを通してソユーズの軌道位置を計算することが可能で、宇宙船の位置を正確に表示することができました。

しかし手動での設定が必要で、外部からの遠隔での操作が不可能であったため、精度が低く、機能的には限界があるとされています。Shirriff氏は「確かに最近のデジタルディスプレイの機能は充実していますが、Globusの実際に回転する地球儀のような物理的な魅力に欠けます」と述べています。

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