行政が放置する生活環境の諸問題

アゴラ 言論プラットフォーム

筆者のもとには他の生活環境問題についても多種多様な報告が有り、本稿では薪ストーブ以外の問題について述べる。

廃棄物焼却による煤煙悪臭、畜産による悪臭、人工香料等による化学物質過敏症、省エネ機器等による低周波騒音、受動喫煙、公道に屯し騒ぐ行為など、他者の生活環境に悪影響を及ぼす諸問題が多数発生している。

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筆者はこれらの問題に知見が殆ど無いので、本稿では詳説をせず簡単な概要に留めるが、個別に見ていこう。詳細は各自で調べられたい。検索すればそれぞれの被害例が大量に表示される。

各事例の被害者はそれぞれ程度の差はあれ深刻な状況下にあり、困惑し悩み、生活上の実害、心身共不調、生命の危機、法規制の不備により追い込まれ救済のない状態に置かれており、各問題はかなり広範囲に亘って発生している。

政策立案者の方々には、これらの諸問題を無視や軽視をせず、見識を改め今後の真摯な対策対応を願いたい。

場合によっては関連諸官庁や業界への啓蒙、指導を併せて行うことを考慮頂きたい。

生活環境の保全は、国や自治体の基本的で重要な責務であることを認識頂きたい。

一般および産業廃棄物焼却に類する発煙行為

古典的、代表的な大気汚染被害の主原因である。

屋外焼却等は廃掃法により原則禁止のはずではあるが、残念ながら例外条項が存在し、これを援用して事実上の骨抜き状態になっている。

よく言われる「都会より田舎のほうが空気が汚く臭い」という逆転現象の主因になっている。

この項に関しては熱心に活動されている方が存在するので、そちらをご覧いただければより現状を理解可能と思われ、ぜひ熟読の上、我こそはと思われる方には賛同をお勧めしておきたい。

■ 農業由来の焼却

主に農家による残渣や雑草焼却であり、昔から焼却処理していた、灰は肥料になる、との理由で、廃掃法除外規定を援用し現在も各地で頻繁に行われている。

各自治体への苦情はあっても、殆ど取り締まられることが無いと思われる。JAも一部を除き野焼きを終息させるような積極的指導をしているという話も殆ど聞いたことがない。

野焼きを頻繁に行う農家の中には地元の名士、旧家もあり、行政やJA職員などによる注意を聞き入れず燃焼行為を強硬に辞めず、注意警告を与えに臨場した官吏に刃向かうような事例もまた多いと聞いている。

近年は移住等により田園地帯に引っ越し、そこで地元民の野焼きの洗礼にあう例も増えているという。

法では既に禁止されており、しかし元の住人から「昔からやっていた、後からきて文句を言うな」と言われるという。

農水省は、これらの野焼き行為は燻炭(これは既に秋田県や新潟県では禁止された)も含めて農作にとって必ずしも必要ないので辞めるようにとの方針を示しており、「燃やさない農業」を提唱しているはずである。

しかし現場では古くからの慣習を捨て去れず相変わらず現代でも各地で頻繁に行われている。

対策としては例外条項の廃止による禁止が考えられるが、当然に農家による大きな反発が想定される。

あくまで筆者の私案だが、現実的な解決策として雑草や残渣等を専門にJAや行政が集積しまとめて処分する、バイオマス発電所で混焼処理という方法は如何だろうか。カーボンニュートラルを標榜するなら最も適した処理方法と言えるはずである。

良質な農作物を生産しながら、近隣に煤煙悪臭を撒き散らすのは非常に残念であり、スマートではないと筆者は思う。大気汚染問題は重要であり、何らかの対策を採るべき時機は早いほうがよい。

また、ご存じと思われるが、家庭菜園は農家ではないので野焼きは明確に違法である。

■ 畜産業による臭気と煤煙

農業に関連し、酪畜産業から発する煤煙悪臭の問題も存在する。

糞尿臭気が主であり、これは当然に消臭のために各種対策が行われている。

これに対して完全に見過ごされているものに、飼育動物に与える飼料調理に薪竃を使用する事例がある。

概ね朝夕に、大量の煤煙を発しながら薪竃を使用する。

長時間ではないものの連日朝夕であり、周辺住民への生活環境破壊にはなる程度の大量の煤煙を出し、焚き付けに使用した焦げた紙片が空から舞い落ちてくることもあるという。火災の危険も有り、厳に規制すべきと考える。

燃えながら牧場より飛来した焦げた紙片

PM測定値

人気のブランド食肉を生産する現場が地域還元策も無いまま、一方的に煤煙を撒き散らすという、地域の環境負荷になる現実がある。木材燃焼による方法を採る必要は無い。大気汚染を起こさない代替手段を検討するように、農水省は指導を徹底されたい。

■ 建築業、造園業等による産業廃棄物焼却

事業者による産業廃棄物の違法焼却行為である。

事業により発生した廃棄物は伐採枝葉も含め産業廃棄物であり、一般廃棄物よりも処理方法が厳しく定められており、許可された事業者が、許可された設備を使用する以外、自身での運搬集積および焼却処理を行うことは違法である。

特に多いと思われるのが、中小規模の工務店や造園業者による違法焼却である。

違法焼却に使用された焼却炉と浴槽

自社の作業場や現場等に設置した簡易焼却炉、ドラム缶、穴を掘った場所に産廃を投入し燃焼処理する。伐採枝葉の他、建築廃材等が燃やされる。

当然に大量の煤煙が放出される。薬剤含侵廃木材、タイヤ、屋根材、塗料片、余剰薬剤、樹脂系壁材やその他塵芥までも燃やし、これらは強い異臭と黒煙が出る。

建築解体廃材

酷い例では、夏季は「焼却炉」だと言い、冬季は暖をとる「薪ストーブ」だと、都合よく言い換えて摘発を逃れようとする悪質な造園業者を確認している。

「暖をとる」のであれば、どんなに煤煙悪臭を出して何を燃やしても良いと身勝手な主張を展開し、公務員の制止指示を聞き入れず警察官にさえ逆らうという。

違法焼却現場、警察官による取締

これらは摘発が困難である。職業柄、強硬に反発する業者もあるようで、特に顕著に見られるのが、官庁の休日や夜間を狙って廃材焼却を行う例であり、この場合は警察への通報によるしか無い。

■ 山焼き

山腹や平原の雑草を焼き払う行為であり、いずれも古代から風物詩として継続して行われてきたという情緒論的な理由で継続し行われている例が多い。

草木類を毎年、人為的に焼き払うことで生態系や美観の維持、病害の発生を抑止しているというが、結果としてはあくまでも人間の都合に寄せられた事情によって継続されているものである。

必要論に対しては、計画範囲外への延焼、人的被害、家屋等の焼失も発生しており、環境面以外に安全上の観点からも必ずしも必要であるかの議論は行われるべきであろう。

あくまでも筆者個人としては、放置すれば元の自然の形態に戻るだけであり何の支障もないはずであり、人為的焼却は環境保護、大気汚染防止上、収束させるべきと考える。

熱帯雨林の焼畑農業を問題視するなら、これらの山焼き行為は完全に農業生産に寄与しない不要な焼却といえるものであり、悪しき慣習は機会を持って捨て去るのが、時代の要請に沿うものであると言えないか。

人工香料等による化学物質過敏症

化学物質過敏症、一般には所謂、CSや香害と呼称されている。

洗剤、柔軟剤、消臭剤等に含有される芳香成分(その基材としての揮発性有機物)が揮発し、鼻腔や皮膚より吸収され激しいアレルギー症状を起こす被害の報告が急増している。

一旦発症すると次第に微量の曝露であっても激しい炎症反応が起き、他の物質によるアレルギーも併発し、事例によっては呼吸困難、意識喪失や精神に問題を起こすこともあるという深刻な事態が起きている。

芳香成分は微小樹脂カプセル内にあり、これが順次破裂し内容物が気化飛散することにより芳香となるが、その気体成分が身体に悪影響を及ぼすことが次第に明らかになってきており、欧米の一部の国ではこれらを製品に混入することが禁止となっているようである。

また、この微小樹脂カプセル自体も衣類から脱落し微粒子として大気中に飛散、周辺にまでその臭気成分が到達侵入し被害を及ぼす、という事例も有るという。

症状は他人には理解しがたいものであり、周囲の理解を得ることも難しいという。
被害者の多くは言う。昨日までは何でもなかったはずが、ある日突然原因不明の発作が起きたと。

メーカーによる真摯な対応も必要だが、現段階では全くそれがなされていないという。啓蒙啓発も一部の行政機関によるのみで、法令等による使用制限等は一切行われておらず、公的機関による具体的な対策はほぼ実施されていない。

化学物質過敏症被害者の名言を一つ紹介しておこう。

「明日は我が身」

これらについての研究は一部で行われているようではあるが、未だ実態解明の途上である。今後は詳細な研究が望まれるカテゴリといえる。

参考に一般社団法人経皮毒研究会を紹介しておこう。

受動喫煙

ここにいう煙草は通常の煙草以外、加熱式煙草も含まれる。

受動喫煙の有害性についてはかなり以前から指摘されているのは周知の事実である。

しかし、喫煙に関するルール運用が地域によってまちまちであること、喫煙者のモラル依存が主体であること、嗜好品とされ禁止薬物でもなく厳しい罰則が無いことから、受動喫煙対策として現実には守られていない施設もまだ多くあるという。

日本人が煙草に寛容だった時代を未だに引きずっている社会通念がこれらの制限を緩い方向に決してしまった。(煙草議員連盟の存在)

最近特に多いと思われるのが、公共の場所での無配慮な喫煙と、自宅において近隣家屋による喫煙から発する受動喫煙である。

外出中はまだ逃げることが可能な場面もあるが、自宅では逃げ場がない。隣家の喫煙に苦情を言うことは難しく、引っ越すが我慢するか、それしか対処法が無いという。

関連して、加熱式煙草の害については東北大学の最近の研究があるので紹介しておこう。

省エネおよび再エネ関連機器類による低周波騒音

家庭設置の機器による事例

具体的製品名は伏せるが、電気温水器、ヒートポンプシステムの動作時に発生する低周波音が、設置家屋ではなく近隣家屋の住人を悩ませる事例が増加している。

設置位置の配慮や、機器自体の遮音構造、動作時刻の設定変更などで、ある程度は被害を防止できる事例もあろうが、低周波の性質上、かなり遠方まで到達し、耳に聞こえずともかなり不快な「ソニック」として人体に受容され、不眠、不定愁訴、原因不明の体調不良を惹起する例が実は増加しているという。

また、ボイラや空調の室外機の不適切な設置による騒音被害もこの類型にあり、機器そのものが発する騒音の規制基準や、設置要領の見直しについて、製造各社、設置を担う販社には今一度考慮を願いたい。(参考:【NPO法人】STOP!低周波音被害

風力発電施設による事例

再生可能エネルギーとして各地で導入されている風力発電施設が、低周波音の発生源となっている事例がある。

これについてはこちらをご覧いただきたい。

低周波音という風力発電のデメリット

公道に屯し騒ぐ行為

いわゆる「道路族」と呼称される騒擾および屯し行為である。

公道上で子供たちが大騒ぎし遊ぶ行為や、大人の長時間にわたる大声の井戸端会議を指す。

酷い例では、公道上に器具等を設置しBBQやプール遊び、路上落書き、球技等を行い近隣を騒音で悩ませ、車両の通行を妨害するという。酷い例では、他家敷地への無断侵入、罵声を浴びせる、家屋や自動車等の財物損壊事案も起きているという。

これらの行為、特に騒音に対する直接の法規制は無く、現状では公道を占有する行為の部分に関してのみ道路交通法のみが有効であり、近隣住民を困惑させる原因になっている。

そしてついに「道路族マップ」なるサイトまで登場した。

我慢の限界を超えた被害者がついに加害者になってしまった殺人事件まで起きているので、これは何らかの法規制(公道占有行為と騒擾制限)が多くの現被害者から求められているが、官庁による具体的な制限を行う動向は殆ど見られない。

これに関しては言論プラットフォーム「アゴラ」内の記事をふたつ紹介しておこう。

「道路族」に告ぐ!子供の「道路遊び」が否定されるべき3つの理由

道路遊びや路上ライブなど「道路の不正使用」を擁護する左派の怪


編集部より:この記事は青山翠氏のブログ「湘南に、きれいな青空を返して!」2023年1月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「湘南に、きれいな青空を返して!」をご覧ください。

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