泉田氏の告発を揶揄するマスコミと政治家の不見識

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自民党の泉田裕彦国土交通政務官が新潟の星野伊佐夫県議から裏金を要求されたと暴露した事件について、「どっちもどっち」とか、「変人代議士と角栄以来のドンの馬鹿馬鹿しい喧嘩」という報道もある。

左:星野 伊佐夫氏 右:泉田 裕彦氏

だが、今回の話は悪気はなかったとしても、県会のドンが明確に選挙違反である裏金のばらまきを泉田氏に進言し、泉田氏がこれを断ったということが、録音テープである話で、泉田氏がこれを告発したことを批判するいわれはなく、「どっちもどっち」などというのは不見識極まる。無条件に泉田氏を支持するべき問題であろう。

そんなことを公開しなくてもという人もいるが、泉田氏は元長岡市長の森氏が立候補して保守分裂した結果、野党連合の米山隆一氏に敗れたのは、こうした資金をまかなかったためだ、次は交代させたいなどと批判されたから、その批判に反論するためにこの件を持ち出しただけだろう。

新潟では知事が逮捕されたこともあるし、過去に長岡市を舞台にした田中角栄金脈事件もあった。泉田氏はその風潮をかえようという方向で努力してきたことは誰しもが認めるだろう。

柏崎原発問題に対して、泉田知事は再稼働に反対はしなかったが、東京電力にいろいろ注文を出した。県民の支持は強く、四選出馬が嫌われ、地元新聞に些細な県政スキャンダルを執拗に叩かれたのに嫌気がさして出馬せず、かわりに長岡市長だった森民夫が建設業界などの支持で出馬したが、あまりにもの醜悪さに買春疑惑で知事を辞任することになる米山隆一氏が当選したという曰くがある。

その後、前回の総選挙では自民党の長島代議士(山古志村村長)が死去したこともあって、地元ではないが、知名度の高い泉田氏が自民党公認となって当選した。

ただ、泉田氏は角栄の地元の保守政治家らしい金のまき方もどぶ板もしないものだから、自民党のなかに不満はあった。そこで、森民夫氏が一部の関係者に推されて立候補を強行したが、保守分裂では野党に対抗するのは難しく、当初は不利とみられていた米山氏が漁夫の利を得た。

星野氏は配れといったのは合法的な費用負担だとかいっているが、やりとりをみると、泉田氏がもっと選挙が先の時点なら、政治団体間の寄付で処理できようが、広島の事件の後だし、いまさらこの時点ではそれもできないし(河井氏は三ヶ月前くらいなら大丈夫と前例にてらして考えたが検察と裁判所はそれを認めなかった)、違法な金になるのでできないと明確に断っている。合法的な金の配分を星野氏は要求したのではない。

金配れというアドバイスを無視したからといって、次は替われとか泉田氏が言われる筋合いはあるまい。この問題はどっちもどっちではない。

報道では星野氏が知事選挙に泉田氏を担ぎ出した恩人だとか書いているが、そのとき、泉田氏に知事選挙出馬をすすめてシナリオを書いたのは、当時、民主党の渡辺秀央氏であって星野氏ではない。

そもそも、泉田氏が硬骨漢で、裏金などとはいちばん無縁であることは承知のうえで、新潟五区から出て欲しいと四年前の総選挙で頼んだのは地元の自民党だ。

そもそも、今回の選挙で誰がまったく当選の見込みがない森氏に立候補させたのかも不思議だ。誰が得したかと云えば、もちろん米山氏だが、そう決めつけるわけにも行かない。自民党も次回の総選挙では定数が一人減って六人から五人になる。そうなると、今回の六人の小選挙区候補者がひとり余る。

さらに、比例単独で出た鷲尾英一氏と七人で五つの席を競うかもしれない。だから、よその選挙区の代議士たちも利害関係人なのである。いずれにせよ闇は深そうだが、だからといって、違法な金を要求された政治家にどっちもどっちというのはいかがなものか。

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