【ガチ】アナゴの名産地 島根県で加工工場を見学 → 教えてもらった新鮮なアナゴの見分け方が永久保存版

ロケットニュース24

マアナゴ。日本人にとって、最も身近な魚類のうちの一つだろう。穴子の蒲焼、穴子の天ぷら、煮穴子、etc……高級料理屋からリーズナブルなチェーン店まで、日本の食文化に欠かせない魚だ。

そんなマアナゴだが、実は何年も前から日本全体で漁獲量が減少し続けている。大阪をはじめ、苦境が報道される昔からの名産地。そんな中、人知れず安定した走りを見せる県があった。島根県だ

なぜか漁獲量が安定しており、すっかり国内トップの産地に上り詰めたのだ。水揚げが盛んな浜田市や大田市はこの機に乗じ、大々的にマアナゴを売り出すことに。県もそれを後押ししており、私はこのたび加工工場を取材する機会を得た。

・アナゴ事情

圧倒的な需要に反し、実は我々はマアナゴのことをよく知らない。その生活史には未解明な部分が多いのだ。よくわからないけど、うめぇから食い続けている感じ

2012年に初めて産卵場所が1か所特定された際にはニュースになった。それ以降も研究はされているが、ビッグな進展があったという報道を見ない。

とりまく状況に似たものを感じるウナギは、2010年に完全養殖ウナギの孵化に成功。2022年12月には新日本科学が卵から人工的に育てた完全養殖ウナギの試食会を開くなど、商業化へ向けて確かな前進が感じられる。

マアナゴも東洋水産や近畿大学が研究しているそうだが、完全養殖への道はウナギより長くなるのかもしれない。

人類のマアナゴに対する理解レベルがそんな状況なので、全国的に漁獲量が減少している原因は未特定。もちろん島根県の漁獲量が安定している理由も不明だ。

マアナゴ漁に携わり続けている漁師さんや、最前線の全体図を把握していると思しき漁協関係者に所感を聞いてみたいところ。

だが……食いしん坊多めな当サイトの読者層的には、もう少し身近な情報の方が興味があるだろう。ということで、とりあえず島根の穴子料理のウマさを体験させてもらうことに。


・ウマい

やってきたのは島根県大田市にある日本料理屋「はたの」。ここは穴子専門店というわけではなく、地元でとれた食材を使った日本料理を提供しているお店。クオリティの高さに定評があるという。


こんな感じで色々な料理が出てきたのだが……


この中にナチュラルに穴子料理が紛れていた。穴子で人参や豆を巻いて蒸したものと


湯引きした穴子を酢味噌で食べるというもの。


前者は驚くほどフワッフワで柔らかく、トロみのある餡と混ざって溶けていくような食感。対して後者は穴子の身が締まっており、クニクニと弾力があって面白い。調理方法でこうも違いが出るものか……!

大田市では商工会議所が中心となり、 2017年ごろから「大あなご」のブランド化を進めてきたそう。市内にはマアナゴを使用した料理を提供してくれるウマい店が至る所にあるそうだ。ググったら大田市観光協会が運営するサイトの、「大あなご」を食べさせてくれる地元のお店をまとめたページが出てきた。

また県内におけるアナゴの漁獲量トップな浜田市でも、浜田市観光協会がアナゴについてまとめたページを作成している。観光する方は参考にしてみてくれ!


・加工工場

こうして腹いっぱいになったところでやってきたのが、アナゴの加工工場。村田漁村株式会社といい、3代にわたり浜田市でマアナゴの蒲焼を作っている。今回は特別に中を見学させてもらえることに。


まず目に入ったのは大量のマアナゴ。綺麗に木箱に敷き詰められている。今朝競り落としてきたものだという。ピッチピチだ! 値段を聞くと、1箱で1万円台半ばから2万円台半ばと幅がある。その時々で変わるようだ。


その向こうでは従業員の方々が手際よくマアナゴたちを加工している。


素早く三枚におろされ、タレに漬けられるなどした後に、専用の蒲焼マシンのベルトコンベアに乗せられる。


そして見慣れた蒲焼に。追加でタレが塗られるなどしている。それにしてもめちゃくちゃウマそうな臭いだ……!


ちなみにこの蒲焼マシン。実はめっちゃ長い。この焼く行程は、加減の管理が難しそうに思えた。


・状態で用途が変わる

こうして蒲焼が作られる一連の行程を見せて頂いたのだが、途中で気になる行程があった。三枚におろす段階でアナゴを仕分けていたのだ。どういう目的とルールで分けているのだろう?


聞くと、これはマアナゴの状態を瞬時に見極め、クオリティ別に分けていたのだそう。

実は村田漁村では、蒲焼だけでなく煮穴子や白焼きも作っている。最高にクオリティの高いマアナゴのうち、煮アナゴになれるのはサイズの大きいものだけ。そして、続くサイズのものが白焼きになれるのだという。


煮穴子と白焼きの場合、少しでも傷んでいたら臭くなってしまうのが理由らしい。しばらく観察していたが、白焼きになれるマアナゴはわりと出てくるのに対し、煮穴子用はなかなか出てこない感があった。

ちょ、待てよ……? その見分け方を教えてもらえれば、我々がマアナゴを買う時にも状態のいい個体を判別できるようになるのでは……? そう考え工場のエラい人に聞いてみたところ、快く教えてもらえることに。


1:目が綺麗

これはよく知られていることだと思う。目が濁っておらず、綺麗な魚は鮮度がいい。マアナゴにもこの法則は当てはまる。


2:肌が金色

2つ目にしてマニアック度がブチ上がってきた感。これは知らない人も多いだろう。鮮度が抜群なマアナゴは、肌が金色に輝くのだそう。この写真のような感じ。シャイニーなほどフレッシュ。


ここにあるのは全て朝に競り落として来たばかり。鮮度はその辺のスーパーに出回っているモノより相当に良いはずだが、それでも全てのマアナゴが金色に輝くほどの鮮度を有しているわけではないようだった。きっと網に入ってから船が港につくまでの間でも差が生じるからだろう。


3:お腹の張り

これは見極めに経験が必要かもしれない。エリートなマアナゴは、お腹がピチピチで張りがいいのだという。

下に写っているのは煮穴子用に仕分けられた、外見の時点でエリートなお腹(この後さらに内側もチェックされるなどして、合格した真のエリートだけが煮穴子になるもよう)。


外見からしてお腹がブニブニなマアナゴは風味がよくない可能性が高いのだそう。内臓にダメージを受けていたり、海水温が高いところで生育した個体だったりすることが理由らしいのだ。

内臓の状態についてはなんとなくわかるが、海水温の影響はどういうものなのだろうか? 聞くと、海水温が高い環境では彼らの食べるエサの質が悪くなり、内臓の臭みが強くなる傾向がみられるのだという。


4:身が真っ白

最後は外見からは見分けられない部分だ。マアナゴの品質は身にも出るらしく、パーフェクトなマアナゴは身が真っ白。この条件をクリアしていなければ、白焼きや煮穴子にはできないという。


参考までに、身が白くないマアナゴがこちら。明らかに赤くなっている。黄ばんでいるパターンもあるもよう。


どこかでボディにダメージを負ったのが原因だそう。魚同士でバトルしたか、水揚げの段階で何かにぶつかったかして傷んでいるのだ。人間で言うと痣ができているようなものか。

買ってきたマアナゴを捌いて、身が真っ白だったら超上物をゲットできたということだ。調理方法に幅が広がるぞ!

ということで、以上が永久保存版なマアナゴの鮮度の見極め方だ! 皆さんが近所でマアナゴを買う時の参考にしてくれ。

えっ、材料名がイラコアナゴな加工品しか売ってねぇって? まあ地域によってはそんなパターンもあるよな。私の住む埼玉の場末もそんな感じだし。そういう時は、島根に行けばいいんじゃないかなって。

参考リンク:村田漁村はまナビmaina! 美味な大田日本経済新聞農林水産省南日本新聞
執筆&写真:江川資具

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