ゆで卵はおいしい。白身があって黄身があって、その2段階な味わいがおいしい。いっぺんに2つ3つ食べてしまいたいくらいおいしい。マヨネーズをつければ4つはいける。
そんなゆで卵から黄身がなくなったらどうだろう? 白身だけのゆで卵。それは想像しただけでもかなり淡白だ。黄身があるから白身が引き立ち、白身があるから黄身の味わいが深まる。両方あって、ゆで卵なのだ。
そこで思いついた。白身だけのゆで卵を作ったら……、
黄身がない→黄身が欲しい→君が欲しい。
そう、好きな相手に白身だけのゆで卵を食べてもらって、こちらの「君が欲しい」という気持ちに気付いてもらう事が出来るかもしれない。
白身だけのゆで卵とかけまして、せつない恋心と説きます。
その心は、「どちらもキミが欲しいでしょう」。
という訳で、白身だけのゆで卵を作ってみる事にした。
※2007年8月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
最初に白身だけのゆで卵を作る
白身だけでゆで卵を作るため、生の卵から白身と黄身を取り出し白身だけを殻に戻して茹でる事にした。通常、タマゴは殻と白身と黄身の割合が1:3:6の比重らしい。つまり、3個分の白身を1つの殻の中に入れれば、ちょうどタマゴ1個分の「白身だけのゆで卵」が出来る計算となる。
生卵の殻に小さな穴を開けて、そこから白身を取り出していく。
3個分の白身が用意出来たら、空になった殻に戻す。
白身はスライムのようにニュルニュルと固まっているので、殻に開けた小さな穴から入れるのが難しい。慎重に入れないと、すぐにニュルっと穴から逸れてこぼれてしまうのだ。
それでもなんとか3個分の白身を殻の中に入れる事が出来た。
別のタマゴの殻でフタをして周囲をガムテープで固定する。茹でている間に剥がれてしまわないよう、ガムテープは2重で巻く。
これで準備は整った。
あとは、この白身だけ卵を茹でていけばいいのだ。
ガムテープを巻いているので普通よりも熱の伝わりが弱いと考えて、茹でる時間を長めに設定した。
15分間茹でたらすぐに冷水で卵を冷やした。そうすると殻を剥きやすくなる、と「伊東家の食卓」でやっていた。いや、伊東家じゃなかったかもしれない。
殻を剥くと、一見普通のゆで卵が現れた。
しかし、このゆで卵を二つに割ると…
そう、白身だけのゆで卵なのである。
黄身がない→黄身が欲しい→君が欲しい。
お店に協力してもらう
「君が欲しい」という気持ちを伝えるためには、好きな女の子に「君が欲しい卵」を食べてもらわないといけない。
いきなり「コレ食べる?」とゆで卵を差し出したところでそれはとても不自然だ。ガムじゃないんだから。
ここは一つ、お店の協力を仰ぐ事にしよう。デートで行く予定のお店を事前に訪問して「君が欲しい卵」を渡しておき、頃合いを見てそれを出してもらうようお願いしておくのだ。
お店は屋台のような気取らない場所の方がいい。「大事な話があるから」と前フリをしておいて、屋台に連れて行くのだ。大事な話、と聞いていた女性はフレンチレストランのようなお店を期待しているに違いないが、そこを敢えて外すのである。
期待を一旦裏切っておいて、最後に「君が欲しい卵」でグラッといわす。まさにゆで卵的な、2段階の演出なのだ。
いざ、プロポーズ
白身だけでゆで卵を作り、屋台のオヤジとも約束を取り付けた。これで全てのお膳立てが整った訳だ。
あとは意中の女性をデートに誘い、屋台に連れてくればいい。
「ここの屋台、ダンチュウで紹介されてたんだよ」等と適当なウンチクを述べながら、女性を席に着かせる。
とりあえず乾杯をして、軽いつまみを頼む。いきなり核心に迫ってはいけない。
ある程度時間が経ったところで、事前の打合せ通り、オヤジに「君が欲しい卵」を出してもらう。
「君が欲しい卵」が出て来たら、すかさず「この卵、変わってるんだよ」と解説を加える。すると、女性が「何が?」と聞いてくるので、そこはストレートに黄身がない旨を伝える。
女性は黄身がない事を確かめようとするので、きっと卵を二つに割るはずだ。
二つに割ると確かに黄味がない。
そこで、「物足りないよね? 黄身が欲しいでしょ」とカマをかける。「君が欲しい」それが僕の気持ち。と告げて、更に追い打ちをかけるように言う。
「それだけじゃないんだよ」
そうなのだ。
オヤジに渡しておいた「君が欲しい卵」は、ダイヤモンドを忍ばせて茹でたものだったのだ。
給料3ヶ月分のゆで卵である。
君が欲しい卵の中に婚約指輪。
これであなたのプロポーズは完璧だ。
指輪入りの「君が欲しい卵」はかなりうまく作る事が出来た。屋台「竹の子」のご主人も感心してくれた。
もし実行に移す方がいたら女性が飲み込んでしまわないよう、注意が必要だと思う。給料の3ヶ月分を飲み込まれてしまったら、相当ショックは大きいから。
取材協力:五反田駅ガード下「竹の子」