キヤノンは16日、世界最高出力と高指向性を両立した小型テラヘルツデバイスの開発に成功したと発表した。テラヘルツ技術は、電波と光の中間の周波数波長を有し、双方の特性を併せ持つ電磁波「テラヘルツ波」を利用するもので、次世代のセンシングや情報通信などの分野で活用が期待されている。
従来、テラヘルツ波を発生させる装置は、高出力を確保すると装置全体も大きくなるという課題があったという。今回キヤノンが開発した装置は、共鳴トンネルダイオード(RTD)を用いた方式で、半導体とアンテナを一体集積したアクティブアンテナからテラヘルツ波を放射することが特徴。従来は、アンテナや逓倍器、レンズなどを別体で実装していたが、アクティブアンテナで一体集積することで、装置自体を従来の1/1000サイズに小型化することができたという。
また、キヤノン独自の半導体デバイスの設計技術と製造技術により、アクティブアンテナアレイに半導体チップ1個あたりに36個のアクティブアンテナを集積し、全てのアンテナの出力を合成することによる高出力も実現している。出力は従来の約10倍で、世界最高出力という。同時に、同社独自の高周波フィルタ設計により、アクティブアンテナを増やしたことで生じるノイズを抑制し、電力効率において従来比約1.4倍を実現したとしている。
同社は、今回開発したテラヘルツデバイスの活用例として、リアルタイムアクティブイメージングにより、数m先から歩いてくる人物の衣服の下に隠された武器をリアルタイムに検知するデモを公開。遊園地やイベント会場など多くの人が通る入口において、高いスループットで人流を止める必要がないセキュリティ対策の実現が将来的に期待できるとしている。
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