ASUSのゲーミングWi-Fiルーターに、新たなハイエンドモデル「GT-AX11000 Pro」が投入された。型番からわかるとおり、2019年に発売された「GT-AX11000」のリニューアルモデルとなる。
有線ではWAN/LANで切り替え可能な10GBASE-Tを備えつつ、無線では5GHz帯を2つ備えたトライバンド。さらに同社が得意とするゲーミング向けの機能を含めた多彩な機能を備え、名実ともに同社のハイエンド製品となっている。
高性能機というと使い方も難しそうに思うかもしれないが、初期設定がスマホアプリで簡単にできるなど、使用感も優れている。今回は実機を試用し、性能だけでなく使い勝手の面もチェックしていく。
10Gbpsに対応した最速トライバンドWi-Fiルーター
まずはスペックを確認しておく。
市場想定価格 | 8万7674円 |
CPU | Broadcom BCM4912(クアッドコア、2GHz) |
メモリ | 1GB |
Wi-Fi規格 | Wi-Fi 6 |
最大速度(2.4GHz帯) | 1148Mbps |
最大速度(5GHz帯) | 4804Mbps×2 |
Wi-Fiストリーム数 | 4×4(5GHz帯)、4×4(2.4GHz帯) |
WAN | 2.5GBASE-T×1、10GBASE-T×1(WAN/LAN切り替え可能) |
LAN | 1000BASE-T×4 |
USB | USB 3.0×1、USB 2.0×1 |
有線はWAN側が2.5GBASE-T、LAN側が1000BASE-T×4。これにWAN/LAN切り替えが可能な10GBASE-Tが加わる。10GBASE-Tはインターネット接続が2.5Gbpsを超えるならWANとして使えばいいだろう。筆者宅は最大2GbpsのNURO光を使っているので、今回は2.5GBASE-TのWANポートをそのまま使用した。
無線はWi-Fi 6対応で、5GHz帯は現状最速となる4804Mbpsを2つ備える。2.4GHz帯もWi-Fi 6対応で1148Mbpsとなり、トライバンドWi-Fiルーターとして現状最速の製品だ。
従来モデル「GT-AX11000」と比べると、有線のWANポートが1000BASE-T、WAN/LANポートが2.5GBASE-Tとなっていたものからグレードアップしている。またCPUがBroadcom BCM4908の1.8GHzから高速化。メモリは1GBで同量ながら、DDR3からDDR4に変更されており、こちらも高速化していると思われる。USBポートは2つあるうちの1ポートがUSB 2.0へグレードダウンしている。
タイミング的にはWi-Fi 6Eに対応して欲しいと言いたくなるが、Wi-Fi 6E対応のゲーミングPCはまだ少なく、家庭用ゲーム機では1つもない。本機のように2つの5GHz帯をゲーム用とその他で分ける方が、現状では最適と言える。
大型の平置き筐体に8本のアンテナを装備
続いて外見を見ていく。本機はとにかくサイズが大きい。外寸は355×355×193mmとなっており、A4ファイルサイズの長辺310mmよりまだ長い。重量は2,180gと見た目どおりに重く、壁掛け用の穴もない。平置きが前提になるため、購入前には必ず設置スペースを確認しておきたい。
193mmの高さはアンテナを直立させた時のもの。アンテナは外側に少し開くように動かせるほか、左右に回転できるので、高さをいくぶん下げることはできる。
有線ポートは本体後部に固められており、一般向けの製品では珍しくLANポートが2段2列で4つ配置されている。このうちLAN1と2のポートはリンクアグリゲーションにも対応する。またWAN/LAN切り替えの10GBASE-Tだけは少し離れた場所にあり、わかりやすい。その他、USBポートや電源コネクタ、電源スイッチは、右奥の切り欠き形状の部分に配置されている。
ACアダプタは最大65W出力でWi-Fiルーターにしては大きめで、コンセント直結型ではなくコードの途中にある形。本体に比べれば小さく見えるが、こちらも取り回しは考えておきたい。
天面にはROGのマークをかたどったLEDライティングを備える。左側面にはWPSボタンとLEDボタンがある。LEDボタンを押すと、上部のLED装飾が消灯する。ただし上部前方にあるインジケーター類のLEDは点灯したままになる。
距離を問わず安定した高速通信が可能
次にiperf3を使ってWi-Fi接続の通信速度をテストする。子機となるPCは160MHz幅の2402Mbpsに対応したもの。通信相手は2.5Gbpsで有線接続されたPC。同室内での近距離通信のほか、筆者宅である3LDKのマンションで、通路側の部屋に本機、ベランダ側の部屋の端にPCを置き、間にある3枚の木製扉を閉じた状態で通信した。
本機と子機の接続には、2つある5GHz帯のうちの2番目を使用し、制御チャンネルは116に設定。アンテナは全て直立で使用した。
上り | 下り | |
近距離 | 1258 | 1585 |
遠距離 | 29.5 | 96.8 |
※単位はMbps。iPerf3はパラメーター「-i1 -t10 -P10」で10回実施し、平均値を掲載
テストの結果は素晴らしい。近距離では上り下りとも1Gbpsを超えており、下りでは1.6Gbpsを超えるタイミングも多かった。また上りでも安定して1Gbpsを超えており、近距離での通信は申し分ない。
遠距離でも十分な通信速度が出ている。詳細なデータを見ても、通信が途切れることがほとんどなく、少量のデータながら極めて安定した通信ができている。途切れない通信はオンラインゲームにおいてはとても重要で、本機であれば遠距離でも安心感がある。
最高級機種でも設定はスマホのみでOK
続いて使用感も見ていく。本機の初期設定は、Webブラウザからのアクセスのほか、スマートフォンアプリ「ASUS Router」を使用できる。同社が最近発売したWi-Fiルーターは全て「ASUS Router」でセットアップできるようになっている。今回は筆者宅の環境で試すが、NURO光のONU兼ルーターはルーター機能を切れないため、あえて本機でDHCPを受け、2重ルーター状態で使用した。
「ASUS Router」を使った設定の手順を紹介しよう。まずは本機のWANポートにインターネット接続するLANケーブルを接続し、電源を入れる。次に「ASUS Router」を起動して、「セットアップ」を選ぶ。
次に設定するデバイスを選択。3つの項目が並ぶが、今回は一番上にある「ASUS RT/GT/TUF/GSシリーズルーター」を選択。
すると近くにある初期設定待ちの製品が自動的に検出されるので、タップして選択。もしうまく発見できなければ、本機の裏面にあるQRコードを読み込むことでも設定できる。
選択してしばらく待つと、本機に接続され、画面上に「GT-AX11000 Pro」の絵と名前が表示される。
続いて初期設定の開始。システム設定として「ISPにVLANタグと~」といった画面が出るが、特に記憶になければそのまま次へ。
次はWi-Fiネットワークの作成。Wi-FiのSSIDとパスワードを設定する。本機はトライバンドなので3つ分のSSIDの設定が必要になる。
「2.4GHz、5GHz-1、5GHz-2を分離」のチェックを外すと、SSIDを共通にして接続先を自動で振り分ける「スマートコネクト」も使えるが、本機では使わず個別のSSIDを設定することをおすすめする。
次にログインアカウントをセットアップする。これは今後、本機の設定を行う際に必要になるIDとパスワードになる。Webブラウザで設定画面を開きたい時などに使うので、忘れないようにしたい。
ここまで済めば設定は完了。あとはスマートフォンに本機のSSIDとパスワードを設定してWi-Fi接続する。
設定してから「ASUS Router」アプリに戻ると、ネットワークの最適化が自動で行われる。
しばらく待つと作業が完了し、設定したSSIDとパスワード、およびログインIDとパスワードが表示される。こちらをスクリーンショットで保管しても構わないが、他人に漏れないように注意したい。
以上で設定完了。あとは必要な機器を有線・無線で接続すれば使用可能だ。普通にインターネット接続するだけなら、「ASUS Router」の指示通りにやるだけで簡単に設定できるようになっている。
ゲーミング向けを始め、極めて多くの機能を搭載
本機はゲーミングWi-Fiルーターとして極めて多くの機能を持っている。1つ1つを試していると途方もない量になるので、どんな機能があるかをざっと紹介しておく。多くの設定項目は「ASUS Router」アプリで対応できるが、細かいものはWebブラウザのみ対応というものもある。
ゲーム向け機能はQoSや、モバイルゲームの優先機能など
まずはゲーミング向けの機能。特定の通信を優先させる「Adaptive QoS」により、ゲームの通信を最優先に設定することで、ゲーム以外の通信で混雑している状態でもゲームの通信を安定させる。逆にテレワークやメディアストリーミングを優先させることも可能で、各々の使用状況に合わせて切り替えられる。
設定項目には「ゲームブースト」というものも用意されている。これは「Adaptive QoS」のゲーム向け設定のプリセットに当たるもので、とにかくゲームを最優先にしたいだけであればこちらを使うのが便利だ。
さらにモバイルゲームに限って通信を優先させる「モバイルゲームブースト」も利用できる。こちらは「ASUS Router」アプリからオン/オフの切り替えが可能。スマートフォンでオンラインゲームを遊ぶ時だけオンにする、といった使い方が可能だ。
このほかオンラインゲームのタイトルに合わせたポート開放を設定できる「Open NAT」機能を搭載。最近はポート開放を必要とするゲームは少なくなったが、通信で何かしら不具合が出た時には、対処の1つにはなるだろう。使い方も一覧からゲームタイトルを選ぶだけで簡単だ。
さらにセキュリティやVPN、デュアルWAN、簡易NASなどの機能も
ゲーミング以外の機能も取りこぼしがない。
セキュリティ機能の「AiProtection」やペアレンタルコントロール機能、VPN非対応機器もVPN経由で通信させられる「VPNフュージョン」、回線トラブル時のフェールオーバー機能も備える「デュアルWAN」、USBストレージを簡易NAS化できるUSB機能、IPv6 IPoE接続サービスの1つであるv6プラスへの対応などなど、同社のWi-Fiルーターが持つ機能はほぼ完全に網羅している。
機能・性能に文句なしのハイエンド機
本機を実際に使ってみて、機能的に不満を抱く点はどこにもない。
Wi-Fiは距離を問わず安定して高速だし、ゲーミング機能を含めてあらゆる機能を有している。「ASUS Router」もWebブラウザのインターフェイスも使いやすく、多機能でも何ら悩むことはない。初心者から上級者まで安心しておすすめできる。
ハイエンド機だけあって価格は張るのだが、現状で最高・最速のゲーミングネットワーク環境を構築したいのであれば、本機を選んでおけば間違いない。それでも本機を推奨しない環境は、インターネット回線とPCの両方が10GBASE-Tに対応している場合くらいだろう。
2つある5GHzをどう使う?筆者的「オススメ設定」
最後に本機のWi-Fiでおすすめの設定を紹介したい。本機に2系統ある5GHz帯は使用できるチャンネルに違いがあり、1つ目は36~64ch、2つ目は100~144chとなっている。つまり1つ目がW52/W53、2つ目がW56と、帯域を分けてある。
このうち1つ目については、チャンネル設定の項目に「DFSを含むチャンネルの自動選択」というチェックボックスがある。このチェックを外すと、DFSの影響を受けないW52のみを使用する設定となり、DFSによる切断を回避できる。ただし使用できる帯域は80MHzまでとなり、通信速度は最大1201Mbpsになる。
オンラインゲームで必要な通信は、ゲームのダウンロード時など大量の通信が発生する瞬間を除いて、細くとも安定した通信の方が必要になる。よって5GHz帯の1つ目は「DFSを含むチャンネルの自動選択」のチェックを外し、ゲーム専用として活用。2つ目の方はゲーム以外で使うようにする。これならゲームの通信を極力邪魔されず、不意の切断を受ける可能性も減らせる。
ゲームの安定性より通信速度を優先したいのであれば、DFSの回避をせずに使うという手もあるが、それは2つ目の方に任せておけばいい。最大通信速度が落ちるデメリットもあるので必須とは言わないが、スマートフォンでシビアなオンラインゲームをプレイする場合などを想定するなら、上記の設定をおすすめしたい。合わせて「モバイルゲームブースト」も活用すれば完璧だ。
(協力:ASUS JAPAN株式会社)