「広告収入は10分の1ぐらいになっている。ほとんどのYouTuberがそうだと思う」というYouTuber、ラファエルさんの発言が話題となっている。ラファエルさんは2014年からYouTubeでの活動を開始しており、登録者数181万人を超える人気YouTuberだ。
さらにラファエルさんは、「YouTuberというYouTubeで収益を上げて稼ぐというビジネスモデルはいずれ終わると思う」とまで言っている。YouTuberはもう終わりなのだろうか。実態と背景について見ていきたい。
ラファエルさんの再生数は最盛期の12分の1
広告収入が減ったというラファエルさんだが、実際、再生数は落ち込んでいる。
ユーチュラ調べによると、ラファエルさんの再生数は2017〜2018年の夏が一番多く、月間再生回数は6000万回程だった。11月の再生回数は約500万回であり、再生回数にして12分の1にまで落ち込んでいる。
ただし、ラファエルさん自身、YouTubeに手を抜いていたことを認めている。SNSのDMやLINEもスタッフ任せ、動画のコメントなど視聴者からの反応も拾っていなかったとしており、その影響もあるだろう。
このように単純に動画の質が落ちていた影響もあるだろうが、それだけではなさそうだ。「FLASH」によると、同じくYouTuberのシバターさんも2017年11月と2022年11月を比較すると、総視聴回数が約1200万から340万と4分の1程度に減っているという。
なお、広告収入は入札制であり、単価が時期などによって変動する仕組みだ。そのため、再生回数が4分の1になったからといって収益も4分の1になるわけではない。しかし、全体として再生数が減少傾向にあること、広告収入もそれに伴って減っているだろうことは推測できる。
著名YouTuberは減らし、TikTokが優勢
ほかにも、古参YouTuberの解散や活動休止が相次いでいることをご存知だろうか。
8月には「オワコンボーイズ」に改名した元禁断ボーイズが活動を休止し、9月には「アバンティーズ」が無期限活動休止に。最近では、はなおさんとでんがんさんによるコンビYouTuber「はなおでんがん」が解散を発表、元バンドマンのヴァンビさんと元アイドルのゆんさんによるYouTuberコンビ「ヴァンゆん」も活動休止を発表している。
多くは新しい活動をしたい、次のステージに行きたいなどを理由としているが、YouTuberをめぐる環境の変化も影響している可能性があるだろう。
ユーチュラの「2022年ユーチューブチャンネル登録者数増加ランキングトップ30」を見ると、1000万人を増やした1位の「さがわ」などTikTok発や、2位以下の「Byashi TV」、「ISSEI/いっせい」「Junya.じゅんや」「M2DK.マツダ家の日常」「Saito さいとう」など、すべてショート動画が売りだったり、TikTokで多くのフォロワーを抱えたりするYouTuberが大きく増やしている。
一方、同じくユーチュラの「2022年YouTubeチャンネル登録者数減少ランキングトップ20」によると、6位に「ヴァンゆんチャンネル【VAMYUN】」、12位「アバンティーズ」、20位に「ラファエル Raphael」がランクイン。
そのほか、7位「Yuka Kinoshita木下ゆうか」、10位「水溜りボンドの日常」、17位「ねおチャンネル」、20位「しばなんチャンネル」「しばなんと一緒」など、著名YouTuberでもじりじりとチャンネル登録者数を減らしている状態だ。
芸能人YouTuber増加やTikTokの躍進も影響
そもそもYouTubeの広告収入自体、第三四半期に1.9%減少している。
これには、企業側の広告予算が緊縮傾向にあることだけでなく、TikTokの影響も大きいと考えられる。TikTokは2021年度世界一ダウンロードされたアプリであり、Z世代を中心にユーザー数も伸ばしている。そのため、限られた広告予算をYouTubeではなくTikTokにかける企業も現れている。
また最近の傾向として、芸能人が多く参入するなど、YouTuberのプレイヤー数が増えたことも当然影響しているだろう。元々知名度がありファンも多い芸能人がライバルなのだから、苦戦を強いられるのも当然だ。
今後も、専業YouTuberはYouTubeの広告収入だけでは苦しい状況が続きそうだ。ただし、熱心なファンがいるのであれば、ライブ配信で投げ銭を得る方法もある。また、ラファエルさんやヒカルさんのように、知名度を生かして別のビジネスをしたり、テレビなどでの活躍を増やしていくという方法もあるだろう。
そもそもYouTube自体、規約を次々と変えたり、広告の収益率を下げたりするといった変更を何度も行っている。一つのサービスに生活すべてをかけるのではなく、あくまで知名度を高め、ファンを獲得する場としてうまく活用し、活動を広げていくのが良さそうだ。YouTubeをビジネスに活用されている方は参考にしていただければ幸いだ。
高橋暁子
ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。
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