スマホのホーム画面をカスタマイズする若者たち–ウィジェットで「推しに囲まれたい」

CNET Japan

 スマホをカスタマイズしているだろうか。デフォルトのまま使っている、フォルダにまとめる程度、といった方もいるのではないか。「親のスマホを見せてもらったら、デフォルトで使っていてびっくりした。要らないアプリもそのままだし、アプリの位置も動かしていないらしい。使いづらくないのかと驚いた」と、ある学生は心底驚いた様子でいう。

 若者世代でスマホのカスタマイズが人気な理由と背景について紹介したい。

「デフォルトは不便なのになぜ」と驚く若者たち

 若者世代は、大人世代と比べてスマホに対する愛着が強い。スマホを日々熱心に活用しており、使いこなす技にも詳しく、何でもスマホで行うという若者も少なくない。そのため、親世代がスマホに対して愛着が少ないとか、うまく活用できていないことを知ると驚く。

 「私や同世代は絶対にiPhoneがいいのに、母は少し前までガラケーだったほど。『(3G停波で)ガラケーが使えなくなる』というニュースを見て、やっとスマホに変えたくらい。安いからとAndroidにしてきた上に、最低限しか使えていない」と、ある学生はいう。

 「便利だからとおすすめアプリとかSNSを入れてあげたのに、ほとんど使っていないとか。使い方も教えてあげたのに、使えるところまでいっていないみたい」

 またある学生は、「使いやすいようにアプリを並べ替えたり、自分らしくカスタマイズしたりするのは当たり前かと思っていた。なのに、うちの親はアプリもただ並べているだけだし、ホーム画面に使わないアプリがそのままある。動かし方もカスタマイズも仕方もわからないらしくて、不便じゃないのかと驚いた」と、目を丸くしていた。

 中には、あえて「タップする数を減らしたいから」と、アプリをフォルダにまとめたりしない学生もいる。しかし、やはりよく使うアプリは手に持った時に操作しやすい位置に移動させており、自分なりのこだわりを持ってカスタマイズしていることは同じだ。

 若者たちは、タイムパフォーマンス(タイパ)や効率性を重視する世代だ。時間や情報に追われている中、効率的に情報を得たいというニーズがあるのだ。

iOS14でホーム画面カスタマイズが可能に

 マイナビティーンズラボの「2020年ティーンが選ぶトレンドランキング」では、「2020 ティーンが選ぶ流行ったコト」ランキングで、「スマホのホーム画面カスタマイズ」は37.2%を集めて第2位にランクインした。

 元々、Android端末ではホーム画面をカスタマイズできる機能が用意されており、好みのホームアプリを探せば自由にカスタマイズできていた。それに対して、ホーム画面のカスタマイズができないことは、iPhoneの欠点とされていた。

 若者におけるiPhone支持率は高く、筆者の大学の受講生ではiPhone所持率は95%ほど。友だちと同じ方が同じアプリが使えて便利とか、おしゃれなイメージがあるからとか、ケースが豊富だとかいろいろな理由があるようだが、「とにかくiPhone」という学生は多い。そんな学生でも、iPhoneではホーム画面がそのままなのは不満だったようだ。

 ところが、2020年9月に「iOS 14」がリリースされ、iPhoneでもホーム画面がカスタマイズでき、ウィジェットが追加できるようになったのだ。これが若者のツボにはまり、それ以来、ホーム画面のカスタマイズは当たり前となっている。

 ウィジェットを追加すれば、アプリを起動しなくても、日時や天気、ニュースなどが確認できるようになる。頻繁に確認するアプリがあれば、追加することで利便性が高まるというわけだ。

推しのいる画面にして好きに囲まれていたい

 カスタマイズが支持されるには、効率性以外の大きな理由もある。

 こだわりのある学生は、「Widgetsmith」というウィジェット作成アプリで、好みのデザインのウィジェットをホーム画面に置いている。通常のアプリ4個分、8個分などのサイズの推しの写真を置いて、ホームを好みにデザインしている学生は多い。

 「推しがいるホーム画面にしたくて。見ていても癒やされるし、好きなものに囲まれたかった。スマホケースも透明にして、推しの写真を入れてカスタマイズしている」と、その学生はいう。

 それだけでなく、いつも使うSNSなどのアプリのアイコンも変えている学生もいる。まず、好みの色やデザインのアイコンを作成して設置。ショートカット機能で指定したアプリが起動するのだ。このようにすると、ショートカットアプリを起動してから指定したアプリが起動するためワンテンポ遅れるが、通知バッジが表示されず気にならないところがかえっていいという。

 「テーマや色合いを決めて、統一感をもたせたい。YouTubeとかInstagramとかの派手なデフォルトのアイコンは自分のホーム画面にはなじまないから、アイコンは変えたい」と、別の学生はいう。

 学生たちは、効率性も求めつつ、好きなものにはこだわりを持って活用できている。大人世代も学ぶところがあるのではないだろうか。

高橋暁子

ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。

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