地上の携帯電話と直接接続できるように開発された新たな大型人工衛星が、夜空の大半の星より明るいことから、天文学者らは、研究と人類の宇宙観にとって脅威になると訴えている。
提供:KPNO/NOIRLab/IAU/SKAO/NSF/AURA/R. Sparks
軌道上にある問題の物体は、テキサス州に本拠を置く衛星通信会社AST SpaceMobileが運用する試験衛星「BlueWalker 3」だ。米国時間9月10日に打ち上げられ、11月に入って64平方メートルの太陽電池パネルとアンテナのアレイが完全に展開された。
国際天文学連合(IAU)が世界各地からの観測をまとめた結果、この衛星は夜空で15番目に明るいアンタレスと16番目に明るいスピカなどの星とほぼ同じ明るさであることが分かったという。また、反射率が若干弱く、22番目に明るい星などと同程度とした別の観測結果もある。
天文学者らが懸念しているのはBlueWalker 3だけではない。ASTは、軌道上から地球に5G接続を提供する(IAUが「宇宙の携帯電話電波塔」と呼ぶ)コンステレーション(衛星群)ネットワーク構築計画の一環として、大型衛星「BlueBird」を100基以上打ち上げることを目指しており、BlueWalker 3はその試験モデルとしての役割を担っているという事情もあるからだ。
IAUの「コンステレーションによる干渉から暗くて静かな空を守るためのセンター」(CPS)のディレクターPiero Benvenuti氏は、「BlueWalker 3はコンステレーションの問題における大きな変化であり、われわれが立ち止まるべき根拠となる」とプレスリリースで述べている。
天文学者らは、SpaceXのブロードバンド衛星「Starlink」のように、数千基の衛星で構成されるメガコンステレーションがもたらす潜在的な影響に対してより大きな懸念を示してきたが、IAUはASTの計画について、天体観測に干渉を及ぼし得る強い電波を送信することから、新たな問題を提起するものだとしている。
南アフリカとオーストラリアにある電波望遠鏡「スクエア・キロメートル・アレイ」(SKA)の事務局長Philip Diamond氏は、軌道上の電波塔が、電波天文学者を地上のセルラーネットワークによる干渉から守る「米国指定電波規制地域」(NRQZ)の対象にならないことを懸念している。
Diamond氏はIAUのプレスリリースで次のように述べた。「天文学者は、人間の活動から可能な限り離れた場所に電波望遠鏡を建設しており、携帯電話の電波が限られているか、まったく届かない地球上の場所を探している。(中略)BlueWalker 3などの新たな衛星はこうした状況を悪化させかねず、影響を適切に軽減しなければ、科学的研究に従事するわれわれの能力を損なうことになる」
IAUは、可能性のある影響緩和策についてすでにASTと協議を始めたとしている。
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この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。