インテルが学生を主にターゲットとし、PCの実際の利用シーンを再現する新しい売り場を提案する内覧会を開催した。インテルEvoプラットフォームが注力するカジュアルゲーミングとカジュアルクリエーションの2つを軸にし、パートナー各社と協業しながら、若い世代に向けてPCをアピールすることを目指すという。
Evoプラットフォームはプレミアム仕様を卒業
モダンPCの証であることを示す誇らしげなEvoロゴ。Evoは第12世代Coreのリリースと共に追加要件改定が入り、第3世代まで進んでいる。この世代ではWeb会議などのコミュニケーション機能の充実が新たな要件として加わっているのが特徴的だ。これもコロナ禍のもたらした結果というか成果であるといえる。
インテル株式会社マーケティング本部長の上野晶子氏は、2023年のPCマーケットはほぼフラットな状況が予測され、そんな状況下で、いかにPCの販売促進を行なうかが悩みどころになっているという。
そこで上野氏が選んだのは、これまではプレミアム仕様とされていたEvoプラットフォームを、さまざまなユセージモデルにおける入り口に置くという戦略だ。Evoであらゆることを始めてもらい、Evoがその期待を裏切らない、間違いがないということを実感してもらった上で、Hプロセッサの世界から、最終的には自作の世界の洗礼を浴びさせるのだという。それをゲームとクリエーションのカテゴリで試行し、クリエイティブ業界とクリエーターを次のステージへといざなう。
また、ゲームではこれまでコンソールゲームに夢中だった層を『PC「も」』へと移行させる。実はNintendo Switchなどでゲームをプレイしていた多くのカジュアルゲーマーは、Iris Xeグラフィックスを目の当たりにすると、その性能に驚き、これがPCのめくるめくゲーム世界なのかと感動するらしい。ここを狙ったのがアップセルの仕組みだ。
さらに上野氏は、クロスセルの市場拡大プランについても言及した。これは、販売促進において、ゲーム×プログラミング、PC×カメラ、ゲーム×実況・配信、PC×キャンピング、PC×美容家電、PC×DTMといったPC売り場を超えた提案ができる複数のクロスセルを作り、ユーザーが自分ゴト化しやすい売り場作りを提案するという。
いわば、PCでできることは、まだまだたくさんあるという提案を、インテルが積極的に展開し、さらなる市場拡大を狙い、PCを購入する単価を向上させようというのが、来春にかけてのインテルの戦略だ。
個人的には、PCは2in1ではなかろうというムードを感じてもいる。
1,000回目にあたって
実は、毎週ご愛読いただいているこの連載コラムの初回掲載は2004年5月で、連載開始から18年とちょっとが経過した。
途中、途切れたことはなかったはずだが、ちょっと回数の計算が合わないなとも思いつつ、きっと番外編なども勘定に入れたのだろう。今書いているこの原稿が1,000回目となった。
次の節目は2年後の20周年だとは思うが、今まで連載を愛読していただいた読者の方々に深く御礼申し上げたい。連載打ち切りの話などが出てくることもなく(知らないだけであったかもしれない)、これだけの長い間、連載を続けることができたのは、ひとえに読者の方々の応援のおかげだ。ホームランが出ることはまずなかったかもしれないが、それなりにヒットは打つことができてきたようにも感じている。そのすべての原稿がまだちゃんと読めるPC Watchというメディアは素晴らしいと思うし、そこでこれだけの間、連載を続けさせていただけているのはライター冥利につきるというものだ。
かつてであれば、まとめて単行本にでもしようという企画でも進めたいところだが、Webでいつでも読めることのほうが大事かもしれない。
18年間という時間が長いのか短いのか。少なくとも2004年連載開始当時はEvoの登場は予想もしていなかった。ただ、2000年にNECのノートPCとして「Lavie MX」という製品が出たのだが、それに搭載されていたTransmetaのCrusoeというプロセッサが、バッテリ駆動時間8~11時間を誇っていた。反射型液晶だったことで炎天下での視認性も申し分なかった。プリインストールされているOSはWindows 2000で、丸1日、ずっと電源を入れっぱなしで持ち運んで使おうという気になってチャレンジしたりもしたのを思い出す。早い話が、今のEvo PCが当たり前として持てるものを、当時のPCに望んでいたのだろう。
Evoが伝えるPCの価値
Evoには、これからのPCはこうあって欲しいという希望が凝縮されている。方向性も微妙に調整され、パートナー各社の意向も取り入れられるようになり、各社のPCがすべて同じになってしまうのではなく、各社ごとの独自性を含めることが許容されている。
スペックや要件で縛られた画一的な製品を生み出すためのものではなく、各社各様のモダンなPCを実現するためのプラットフォームとして規定されているのだ。そして、それをプレミアム仕様ではなく、PC世界への入り口としての最低要件として規定するというのがインテルの上野氏の考えだ。
極端なマーケティングだとは思う。何しろ、今や、一般の人にとってコモディティになったPCは、10万円を超えると高いと言われる始末だ。しかも、あると邪魔だがなければ困るどころか、なくても困らないという声も少なからず聞こえてくる。10万円を超えるスマホは許容されても、10万円を超えるPCは高いとされるのだ。その一方で、同じPCユーザーにも10万円じゃ、グラボさえ買えないとうそぶく層が存在する。ダブルスタンダードだ。
インテルが予想する来期春商戦では、市場全体の販売台数が減少傾向にある。マイナス要因としては過去2年のコロナ需要による反動、消費者物価指数の上昇、景気動向指数の悪化などがある。一方で、プラス要因としてWindows 8.1のサポート終了や小中高のGIGAスクール構想、そしてPC利用頻度の上昇がある。
上野氏が言うところのPCはこんなに便利で楽しく役にたつという「事実」への「気づき」を提供することこそが今必要だ。これまでのインテルは「さあ、その先へ」にこだわってきた。この「intel lead ahead」が登場したのは2006年で、結果として、3より5、5より7、7より9といった序列を生んだ。
だが時を経た今回はちょっと違う。Evoはスタート台であり、踏み切り板であり、スターティンブロックだ。PCへのハードルをほんの少し持ち上げることで、たぶん、失望を抑止する。PCを期待を裏切らない存在にするためのものだ。PCもそういう売り方が議論されるようになったのかと少し驚く。だが、それがインテルの新しい当たり前なのだと思うと、ちょっと頼もしい。ちなみにインテルの企業ロゴが今のものになったのは2020年だ。
というわけで次回は、連載1,001回。引き続き、ご愛読くださいますよう。
コメント