10年後に投資額を10倍に–スタートアップ育成5カ年計画に向けた10の提言

CNET Japan

 自由民主党の新しい資本主義実行本部に設置されているスタートアップ政策に関する小委員会は11月22日、「スタートアップ育成5カ年計画に向けた提言」を取りまとめ、内閣総理大臣を務める岸田文雄氏に申し入れたと報告した。

 4月に提出した「スタートアップ・エコシステムの抜本強化に向けた提言」に続く2度目の提言。より一層の具体化を目指して有識者へのヒアリングを実施し、「5年後に国内スタートアップへの投資額が10倍を超える規模」となるべく実行、検証、アップデートする施策として、10の提言にとりまとめた。

(左から)衆議院議員でスタートアップ政策に関する小委員会 委員長代理を務める平井卓也氏、衆議院議員で事務局長を務める小林史明氏
(左から)衆議院議員でスタートアップ政策に関する小委員会 委員長代理を務める平井卓也氏、衆議院議員で事務局長を務める小林史明氏
  1. 大胆かつ具体的な目標設定とスタートアップ政策の体制強化
  2. スタートアップへの人の流れの強化 ~起業家の輩出・育成のための基盤の抜本強化
  3. スタートアップへの資金の流れの強化 ~多様な主体からの資金供給拡大
  4. Deep-techシーズの創出強化 ~大学を核としたエコシステム形成
  5. web3で世界をリードする
  6. インパクトスタートアップ(社会的起業)のエコシステム整備
  7. 「調達」を増やす ~政府・地方自治体の調達におけるスタートアップ活用
  8. グローバルに資本・人材を呼び込む ~スタートアップのグローバル競争力の強化
  9. 「出口」を増やす ~「出口」戦略の多様化
  10. 地方におけるスタートアップ創出支援の強化

 衆議院議員でスタートアップ政策に関する小委員会 事務局長を務める小林史明氏は、今回の提言をイメージした図を用いて説明。スタートアップが盛んな米国と比較すると、「将来上昇が予想される株を持ちやすい『ストック・オプション』、上場前に株式を現金化できる『セカンダリーマーケット』など、スタートアップを大きくしやすいきっかけがある。全てに優遇が付いていて綺麗に回っている」などが異なるという。

10の提言のイメージ
10の提言のイメージ
米国のスタートアップ・エコシステムのイメージ
米国のスタートアップ・エコシステムのイメージ
日本のスタートアップ・エコシステムのイメージ
日本のスタートアップ・エコシステムのイメージ

 スタートアップになり得る研究、技術といったシーズは日本にも存在するものの、成長する体制に差があり、「人材と資金がしっかり回る仕組みを作る必要がある」(小林氏)と語った。

10年後に投資額10倍、ユニコーン100社、スタートアップ10万社–官民挙げた総力戦で

 衆議院議員でスタートアップ政策に関する小委員会 委員長代理を務める平井卓也氏は、4月に提出した1度目の提言後を振り返り、「スタートアップに積極的に取り組むこと、スタートアップ担当大臣の設置や、2022年内の5カ年計画の作成などが決まった」と評価した。

 一方で、第4次安倍内閣で科学技術担当大臣を務めた際に自らスタートアップ担当と名乗り、エコシステムの拠点形成などを推進した経験を踏まえつつ、「スタートアップ(政策)は、1人の大臣でできるものではなく、全省庁にまたがるもの」(平井氏)と、スタートアップ政策を実施する体制や制度の重要性を語った。

 今回の提言では、スタートアップへの投資額が現状の10倍を超える規模、つまり2021年の0.8兆円から2027年には10兆円になることを目指すほか、「ユニコーン100社創出」「スタートアップを10万社に」など、日本が「アジア最大のスタートアップハブ」「世界有数のスタートアップの集積地」となることを目指すことが掲げられた。

 平井氏は、「日本のスタートアップは世界から見ても強い力を持っているとは全く思えないが、政府が5カ年計画を取りまとめるということは、国家の強い意思を示すという意味で初めての取り組みとなり、国の最優先政策の1つとして、また新しい資本主義をこれから進めていくにあたる柱の政策となる。非常に高い目標を掲げているが、実行できなければ日本の成長力、競争力は取り戻せない。細かい点も含めた提言になっているが、“1つできれば(いい)”、という簡単なものではない。環境を整えるための政策として総合的に全てを進めていくことが重要。日本におけるラストチャンスと捉えている」とし、諸外国に比べ特に劣っている点を中心に、大胆かつ具体的な目標を設定し、官民挙げた総力戦の展開が可能となる体制の必要性を語った。

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