電子楽器の巨匠による最終作。
電子楽器エンジニアのデイヴ・スミスによって設立されたシーケンシャル・サーキット社は、80年代を席巻した名シンセ「Prophet-5」を生み出し、MIDI規格の創案や普及に大きく貢献したブランドです。80年代後期にシーケンシャル・サーキットは消滅してしまいましたが、デイヴ・スミスは21世紀に入って新会社を設立。現在はシーケンシャル社として、Prophet-5の発展型ともいえる製品を多く生み出しています。
Prophet-5はYMO、小室哲哉、冨田勲、ニュー・オーダー、ハービー・ハンコックなどを筆頭に、多くのアーティストの作品でその音を聴くことができます。倍音のニュアンスで太いベースからキンキンの金属音まで、幅広いサウンドを作ることができました。5音ポリで自作した音色のメモリーができる点も画期的でした。しかし、80年代当時の価格は170万円もしたので、当時の中高生は指を咥えて見ているほかなく、国産の安いシンセでなんとかProphet-5みたいな音を出そうと涙ぐましい努力をしていたものでした。
かなり攻めた音作りもいけそう
そのシーケンシャルが新モデル「TRIGON-6」を発表しました。今年5月に亡くなったデイヴ・スミスにとって、最後に開発に関わったシンセとなります。
スペック的には6音ポリフォニックで、3VCO(三角波、ノコギリ波、パルス波)とラダーフィルターを搭載しています。複数のフィルターを直列したラダーフィルターは、厚みのあるしっとりした音はもちろん、フィードバックなどの過激な音作りをも可能にします。レゾナンスの効きもよく、このフィルターが音作りのキモになっているっぽいですね。さらにポリモジュレーション機能や、ステップシーケンサーとアルペジエーターも装備していて、シーケンスプレイしながらツマミをうねうねして音色変化を楽しむとイイ感じ。音色は500ファクトリープリセットに加え、500ユーザープリセットをメモリー可能。エフェクトもリバーブ、ディレイ系だけでなく、ディストーションも独立して使用できるなど充実しています。
パネルデザインも豊富なツマミやスイッチ類がわかりやすく配置されていて、複雑な音作りを視覚で確認しながらできそうですね。動画を見る限りそのサウンドはかなりリッチで、ヴィンテージ風サウンドだけでなく、ギラっとしたEDM系でも使えるでしょう。発売日や価格はまだ公表されていませんが、早く実物に触れてみたいですね。
Source: Sequential