Dropbox Japanは、10月26日に提供開始した動画メッセージツール「Dropbox Capture」と、高度な動画分析機能を追加した営業向け支援ツール「Dropbox DocSend」について説明。さらに、2023年の日本におけるビジネス戦略についても説明した。
動画を用いて非同期コミュニケーションを支援する「Dropbox Capture」
Dropbox Captureは、スクリーンショットやGIFを活用しながら、画面を直接録画した動画メッセージを作成できるツールで、会議やチャット、メールでの業務連絡の代わりに動画を活用することで、文字では説明しにくかった確認事項を共有したり、働く時間や働く場所が異なる同僚とのコミュニケーションに動画メッセージを活用したりできる。
Dropbox Japanアジア太平洋・日本地域総括ソリューション本部長の岡崎隆之氏は、「非対面でのコミュニケーションが増加するのに伴い、動画の活用が増えている。Dropbox上に追加されている動画ファイル数は数10億件に達しており、動画編集ファイルもコロナ前に比べて50%増加している」と、状況を説明した。
「だが、41%のユーザーが、ビデオ会議が多すぎると指摘するなど、動画に関わる課題も発生している」と、時間を合わせなければならない同期型コミュニケーションが求められる問題を指摘。これを、Dropbox Captureにより解決できるとした。「メールやチャット、ドキュメント、ビデオ会議で取るべきコミュニケーションを、短時間の動画に置き換えることができ、非同期的コミュニケーションも推進することができる。パーソナライズされたメッセージで文脈を伝えることができ、より深いつながりも実現できる」とメリットを訴求する。
手軽にスクリーンショットが撮影でき、トリミングや矢印、説明文、ぼかしの追加などの加工が簡単に行えるほか、画面上にマーカーで書き込むといった作業や、カメラやマイクからの入力を加えた画面キャプチャも簡単にできる。録画した音声は自動的にテキスト化して表示することも可能だ。画質は4Kにも対応する。
さらに、動画の再生位置にコメントを入れたり、絵文字によるフィードバックができたりするため、チーム内でのコミュニケーションの活性化にもつながるという。「開発チームでは、マルゲリータピザのように、シンプルでありながら、味わい深い製品になることを目指した」という。
Dropbox Captureは全てのDropboxプランで利用でき、Basic、Plus、Familyの各プランでは、1080pで最大2時間の録画と、5分以下の動画の編集が可能。Professional、Standard、Advanced、Enterpriseの各プランでは、動画をストレージの上限まで4Kで録画できるほか、あらゆる長さの動画メッセージを編集できる。
Dropbox Captureは、株式会社鴻池組が先行導入をしており、動画による業務手順書の作成に活用しているという。
営業部支援用として展開する文書共有ツール「Dropbox DocSend」
Dropbox DocSendは、営業部門向け支援ツールと位置づけられ、現時点では、英語版だけの提供となっている。営業案件において、添付ファイルを安全なDocSendリンクに置き換えて、機密ファイルの悪用を防いだり、共有後もリンクのアクセス権を編集して管理をしたり、閲覧者がドキュメントを開いたときの通知など、エンゲージメント管理や電子署名への対応も図っている。
「簡単で、セキュアなドキュメント共有ができる点が特徴である。特定顧客向けの特別価格の情報なども、他社に漏洩しないように管理でき、営業担当者はセールスに集中できる」と、岡崎氏はその特徴を説明した。
配信したドキュメントの分析も可能で、価格表を見ている時間が長かったり、上司が見ている回数が増えてきたりした場合には、営業活動を活発化させる、といったことにもつなげられる。「メールに代わるツールとして利用できる。ドキュメントを安全に共有でき、効果を推し量ることもできる」という。
新機能として、動画による共有機能や分析機能を追加。動画の視聴時間や、動画の早送り視聴の有無なども確認できるという。マーケティング支援やDX支援などを手掛ける株式会社SpeeeがDropbox DocSendを先行導入しており、ウェブセミナーの開催後や顧客との打ち合わせ後にDocSendで資料を送付して反応を確認したり、新卒採用の説明会後に参加者の状況を把握したり、といった活用がされている。見られていないページを把握できることから、コンテンツの改善にも役立てられているという。
電子署名ソリューション「HelloSign」は「Dropbox Sign」に
このほか、電子署名ソリューションの「HelloSign」を、「Dropbox Sign」に改称した。ユーザーや組織が、Dropboxが提供する豊富なツールで利用しやすくしたという。無料プランを含む全てのDropbox Signプランにおいて、署名者が自分自身のみの場合は無制限で利用できる。
また、Dropbox SignのStandardおよびPremiumプランを契約すると、フォームビルダー/入力サービスの「Dropbox Forms」も利用できる。Dropbox Formsとのやりとりは、1カ月に50回まで無料で利用でき、書類の対応をDropbox上で完結できるという。
BtoB向けマーケットプレイスを提供しているクムクム株式会社では、Dropbox Signを導入し、月間数百件の代理店契約や業務委託契約を電子化。業務効率を大きく改善しているという。マーケットプレイスの登録サイトに組み込んでいるため、サイトを離れず署名作業を完了できるようになっているのも特徴だとした。
「日本の成長率は世界を上回る」、2023年はドキュメントワークフローに注力
日本におけるビジネス戦略の説明も行われた。
Dropbox Japan代表取締役社長の梅田成二氏は、同社の戦略と日本市場についてコメント。「Dropboxは、クラウドストレージ専業ベンダーとしては最大規模であり、潤沢なフリーキャッシュフローを背景に製品ラインアップの拡張に投資をしている。日本の成長率は、世界のビジネス成長を上回っている。日本はファイルサーバーからの移行案件が多く、海外では、クラウドストレージの前後のドキュメントワークフローの案件が多いという違いがある。そのため、日本ではデータ管理基盤の統合などの大きな案件が発生しやすいという背景はある。今後は、ドキュメントワークフローの案件に力を入れたい」と述べた。
全世界でDropbox上に保存されているコンテンツの数は前年比1.5倍の8000億件となり、有料ユーザー数は1755万、業務で利用しているユーザーの構成比は80%に達しているという。「Dropbox Japanでは、『現場力上がる、使えるデジタル』を2022年の目標に掲げ、現場の声を聞くことに力を入れた。今後の主戦場は、米国と同様にドキュメントワークフローになると考えており、それにあわせて製品ポートフォリオの拡張や他社ソリューションとの連携強化に力を入れてきた。さらに、Dropboxが推進してきた『バーチャルファースト』による新しい働き方の提案にも注力した」と振り返った。
東急建設株式会社では、3D CADの設計データや写真、契約書など、合計140TBのデータをDropboxで一元管理。隈研吾建築都市設計事務所では、ワークスタイル変革にDropboxを採用して、BIMデータや3D CGデータなどを共有。株式会社はくばくでは、ランサムウェアの検知機能や巻き戻し機能を評価して、Dropboxを採用したという。
ソリューション連携では、ブレインズテクノロジー株式会社のエンタープライズサーチの「Neuron」や、脱PPAPを実現するmxHEROの「Mail2Cloud」、電子帳簿保存法に対応する株式会社エムティーアイの「PlusFind」の例を挙げた。
さらに、新たな働き方の実践における社内評価についても公表。同社が推進したバーチャルファーストの働き方については、肯定的とする回答が97%を占める一方で、社内外のコミュニケーションの評価では、直接顔を合わせたいといった声が一部に出ていたこと、健康・体調面では、より良い環境を実現するための支援が必要であることなど明らかになったという。これらの情報を社外にも公開し、日本の企業における新たな働き方の検討や推進に利用できるようにしたとしている。
製品ポートフォリオの拡張について、梅田氏は、「製品の機能強化に留まったという反省がある。今後は、さらなる製品の品揃えに力を入れたい。今回のDropbox Captureの投入は、そのひとつになる」と語った。
2023年の方針として、梅田氏は「ドキュメントワークフローを強化する製品群の投入」「他社ソリューションとの連携強化」「さまざまな現場での活用の促進」「新しい働き方を実践し、得られた知見を広く開示する」の4点を挙げ、「スマートな働き方を創造するための支援を行う」と述べた。
また、現在は建設業での導入が中心になっているが、公共分野などへの展開を進める考えも示し、2023年を目標に、ISMAP(Information system Security Management and Assessment Program:政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)の認証取得を目指していることも明らかにした。