情報源の信頼性や安全性を事前に確認できる「About This Result」
新たに提供する「About this result(この結果について)」機能は、検索結果の画面に3つの点のメニューアイコンを追加。このメニューアイコンをタップすると、「この結果について」(ベータ版)というコンテキストパネルが開き、検索結果に関する情報の入手元に関する内容が表示される。
もしも検索結果の情報がウィキペディアに記載されている場合には、そのサイトに関する最新で検証済みのウィキペディアの情報が表示される。
表示されたものが聞いたことがないサイトの場合にも、ウェブページにアクセスする前に、検索結果に関する詳細なコンテキストを確認でき、安心して情報を活用できるようになるという。
Google Public Liaison for Searchのダニー・サリバン(Danny Sullivan)氏は、「サイトに表示されている情報元の名前を知らなくても、コンテキストを見て、著名なサイトであることや、情報源が正しいことが理解できるようになる」と説明した。
また、サイトへの接続がセキュアであるかどうかもコンテキストを通じて確認できるという。パネルでは、Googleのプライバシー設定にアクセスしたり、Google検索がどう機能しているのかを確認したりできる。
「今後数カ月間で、日本語での情報をさらに追加することになる。たとえば、クエリーに対する結果を表示する上で、Googleの検索システムでは、どんな要素を評価しており、どんな内容を検索システムに採用しているのかといった情報を追加する」という。
About this resultは、デスクトップ向けウェブブラウザーやモバイルウェブブラウザー、AndroidのGoogleアプリで、順次利用できるようになる。「先行した英語版でも、まだベータに位置づけており、今後、進化を続けていくことになる」という。
2021年から提供を開始している英語版では、全世界ですでに24億回使用されているという。今回は、日本語を含む8言語で新たにサービスの提供を開始した。
急激に変化する情報ソースを検知する「Contents advisories」
また、「Contents advisories」機能を提供していることにも触れた。最新ニュースなどのトピックスに関して、あまり情報がない場合や、トピックスに関わる内容が変化している場合、信頼できる情報が得られない場面において表示されるもので、情報やソースが数多く出てきてから検索を行うようにアドバイスをするという。
「検索システムをトレーニングして、内容の変化や公表されているソースが少ない場合には、そのことを検知できるようにしている。情報が少なく、出ている情報が信頼できるものかどうかがわからない場合にも役立つ機能である。信頼性があるものが見つかっていない場合にも、この通知が出る」という。
これも信頼できる情報にアクセスするための手段のひとつだという。
提供する情報の質向上と、ユーザーのリテラシー教育に注力
Googleのサリバン氏は、「Googleのミッションは、世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすることであり、検索品質の向上は、それに合致した取り組みである。高品質の検索結果を提供することは、Googleにとって大切な仕事である」と語った。
Googleが検索サービスを開始した当初はスパムへの対応が最大の課題であり、その後、変化するウェブへの適用を進めることに力を注いできたという。そして、最近の課題は、誤った情報への対応であり、Google Trendの情報を見ると、誤った情報に対する利用者の関心が最も高くなっているという。
「Google検索にとって、情報の質をいかに高めるかが最も重要な取り組みである。また、同様に、情報に対するリテラシー教育も大切である。この2つの観点に投資をしている」と述べる。
質の高い検索結果を出すための取り組みとしては、先に触れたAbout this result機能や、Contents advisories機能などの開発、実装も含まれる。もちろん、それ以外にも数々の取り組みがある。
サリバン氏は、「検索の15%はこれまでになかった新たなものである。これだけ多くの新たなクエリーに対応するために、正しいものを選ぶための自動化のアプローチが必要になる。その際には、言葉の関連性だけでなく、その情報が信頼できるものであることをもとに検索結果を表示できなくてはならない」とする。
たとえば、「コロナワクチン」、「危険」という2つの言葉で検索した場合、言葉の意味や関連性だけでマッチングしてしまうと、「危険」という言葉をそのまま理解し、危険な情報や、信頼性がない情報までが表示されてしまう。「危険」という言葉があっても、情報が信頼できるものであることを前提に、関連性がある結果を表示しなくてはならない。
「Google検索では、1日数10億の検索が行われている。それらの全ての結果において、信頼性を提供しなくてはならない」と語る。
「EAT」に基づくシグナルで情報の信頼性を判断
情報の信頼性の確保については、いくつかの手法があるという。
ひとつは、「シグナルを理解する」手法。ウェブ上のソースが信頼できるかどうかを、シグナルを通じて理解し、同時に利用している人々がその情報を信頼できるものだとしていることも判断材料にしているという。
Google検索が、どんなシグナルを見て、質を判断しているのかは、検索品質評価ガイドラインに基づいており、これは一般にも公開している。ここでは、Expertise(専門性)、Authoritativeness(権威性)、Trustworthiness(信頼性)と呼ぶ「EAT」が基準になっているという。
また、検索品質評価ガイドラインでは、品質が低いコンテンツに対する定義も行っており、約束した内容を提供していないことを確認したり、ヘイトを含む内容が記載されていたり、暴力を広めたり、人をだまそうとしている内容がある場合などには排除しているという。また、マルウェアなどの脅威が含まれている場合も排除している。
「ガイドラインとレイティングデータを利用して、システムをトレーニングし、新たに出てくる数1000億件のドキュメントの質を常に見ている」という。
また、表示結果の順番を決めるランキングシステムは常に改善を加えているほか、ウィキペディアのサイト荒らしを検知するといったことも行っており、情報をより正確にするためにさまざまな取り組みが行われているという。
さらに、品質を確保するための重要なコンセプトのひとつに「コンセンサス」があるという。
「これは、検索品質評価ガイドラインのなかでも定義されているものである。専門家の間のコンセンサスがあるかどうかを見ており、歴史的なコンセンサスが取れているか、健康、金融についての情報については、信頼性のある情報源のものであるかといったことを見ている。検索システムをトレーニングすることで、どのページが高品質の情報を反映しているか、専門家のコンセンサスを反映しているのかが理解できるようになっている」という。
ユーザーが情報の真偽に自信を持てるよう、情報リテラシーへ教育に投資を続ける
情報リテラシー教育に対して、継続的な投資をしていることにも触れた。
「SNSなどで会話をしている際に、話題になっている情報の内容を確認するために検索をしていることが多い。だが、誤った情報を、誤った情報だと理解できない人も少なくないのが実態である」と指摘する。
Googleが、PoynterやMediaWise、YouGovと連携し、米国、日本、英国、ブラジル、ドイツなど、世界8500人を対象に実施した調査では、世界の62%が誤っている情報や誤解を招くような情報を毎週見ていると回答。だが、それが、誤情報とわかったと自信を持っている人は10人に1人に留まったという。日本では、情報が間違っていることに自信が持てないとした人が32%に達し、10人のうち4人が、自分の家族が間違った情報を、他人とシェアしてしまう心配があると回答している。
「多くの人が、情報を理解し、評価し、処理できるようにならなくてはならない。Googleは、それに向けた新たな機能の開発にも投資をしてきた。検索結果とニュースの内容に対して、情報を評価し、それに基づいた決断ができるようにしている」とする。
Googleでは、ジャーナリズムの未来のため報道機関とのコラボレーションを推進する「Google News Initiative」を通じて、さまざまな年齢の人たちに対して、情報リテラシーの教育を実施。2018年以降、Google News Initiativeによるプロジェクトやパートナーシップに7500万ドルを投資をしたという。
「情報リテラシーに関する機能を開発、実装することで、サイトの情報の正しさを確認し、情報の真偽について自信を持って利用できるようにする環境を実現したい」と述べた。