ASUSは11月2日「ZenFone 9」を発表、販売を開始した。一足早く試用する機会に恵まれたのでレポートをお届けしたい。Snapdragon 8+ Gen 1を搭載しつつ6軸ジンバルカメラ内蔵、そしてコンパクトで169gと軽量な意欲作だ。
最上位モデルはSnapdragon 8+ Gen 1/16GB/256GB!
前モデルに相当する「ZenFone 8」は、2021年8月18日に発表。約1年と3ヶ月ぶりのアップデートとなる。ちょうど筆者がレビューしているので、興味のある方は合わせてご覧いただきたいが、パワーアップポイントは、5.9型のコンパクトな筐体はそのまま(ただしデザインは変更)、SoC、6軸ジンバル搭載の広角カメラおよび広角カメラのセンサー変更、バッテリ容量……などとなるだろうか。
いずれにしてもこのサイズ感でSoCにハイエンドを採用、おサイフケータイなど全部入りはAndroid搭載スマホとしてはあまり機種がないため、存在意義は大きい。主な仕様は以下の通り。
ASUS「ZenFone 9」の仕様 | |
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SoC | Qualcomm Snapdragon 8+ Gen 1(Kryo、3.2GHz x 1 + 2.7GHz x 3 + 2GHz x 4/8コア)、GPUとしてAdreno 730を内包 |
メモリ | 8GB or 16GB/LPDDR5 |
ストレージ | 128GB or 256GB(UFS 3.1) |
OS | Android 12(ZenUI) |
ディスプレイ | 5.9型OLED(2,400×1,080ドット)、アスペクト比20:9、リフレッシュレート最大120Hz、1,100cd/平方m、Corning Gorilla Glass Victus、Delta-E<1、151% sRGB/112% DCI-P3 |
ネットワーク | Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2、NFC(FeliCa対応) |
SIM | Nano SIMカードスロット×2 |
対応バンド | 5G NR n1/n2/n3/n5/n7/n8/n12/n20/n28/n38/n77/n78<BR>FDD-LTE B1/B2/B3/B4/B5/B7/B8/B12/B17/B18/B19/B20/B26/B28 TD-LTE B34/B38/B39/B40/B41/B42 ※キャリアアグリゲーション 6CA(DL)/2CA(UL) 対応 W-CDMA B1/B2/B4/B5/B6/B8/B19 GSM/EDGE 850/900/1,800/1,900MHz |
インターフェイス | USB 2.0 Type-C、デュアルスピーカー、デュアルマイク、3.5mmジャック |
センサー | GPS(GLONASS、BeiDou、Galileo、QZSS、NavICサポート)、加速度センサー、電子コンパス、光センサー、近接センサー、ジャイロスコープ、磁気センサー、指紋センサー(電源ボタンに内蔵) |
カメラ | 前面 約1,200万画素(35mm換算 : 27.5mm相当/F値2.45) 背面 1,200万画素 超広角カメラ(35mm換算 : 14.4mm相当/F値2.2)、5,000万画素 広角カメラ(35mm換算 : 23.8mm相当/F値1.9) |
サイズ/重量 | 約68.1×146.5×9.1mm(幅×奥行き×高さ)/169g |
バッテリ/駆動時間 | 4,300mAh、急速充電対応、約13.5時間(Wi-Fi時) |
防塵防水 | IP65/IP68 |
カラー | ミッドナイトブラック、ムーンライトホワイト、スターリーブルー、サンセットレッド ※メモリ/ストレージ容量によって変わる |
価格 | 9万9,800円(8GB/128GB)から |
SoCはQualcomm Snapdragon 8+ Gen 1。Kryo 3.2GHz x 1+2.7GHzx3 + 2GHzx4の8コア、GPUとしてAdreno 730を内包している。少し前にご紹介したGalaxy Z Flip4と同じSoCで、Snapdragonとしてはハイエンドとなる。
メモリは8GBもしくは16GB/LPDDR5、ストレージは128GBもしくくは256GB(UFS 3.1)。もはやミドル/ローエンドのPCを超えてしまっている。OSはAndroid 12(ZenUI)。同社としては、Android 13にアップデートを予定。最大2回ということなので14までとなるだろうか。
ディスプレイは、5.9型OLED(2,400×1,080ドット)。アスペクト比20:9、リフレッシュレート最大120Hz、1,100cd/平方m、Corning Gorilla Glass Victus、Delta-E<1、151% sRGB/112% DCI-P3とハイエンドらしい内容となる。
ネットワークはWi-Fi 6、Bluetooth 5.2、NFC(FeliCa対応)。SIMはNano SIMカード×2。ただしSIMカードを2枚挿入し5G回線を同時に使用することはできない。また残念ながらeSIMには未対応だ。昨今eSIMがそれなりに流行りだしているので、本機唯一の弱点かもしれない。対応バンドは表をご覧いただきたい。5G対応だがミリ波未対応となる。
インターフェイスはUSB 2.0 Type-C、デュアルスピーカー、デュアルマイク、3.5mmジャック。センサーはGPS(GLONASS、BeiDou、Galileo、QZSS、NavICサポート)、加速度センサー、電子コンパス、光センサー、近接センサー、ジャイロスコープ、磁気センサー、指紋センサー(電源ボタン兼)を搭載。前モデルと変わらずmicroSDカードには非対応なのは残念なところ。
カメラは前面が約1,200万画素(35mm換算 : 27.5mm相当/F値2.45)。背面が1,200万画素 超広角カメラ(35mm換算 : 14.4mm相当/F値2.2)と、5,000万画素 広角カメラ(35mm換算 : 23.8mm相当/F値1.9)。望遠はない。
急速充電対応の4,300mAhバッテリ内蔵、防塵防水IP65/IP68対応でサイズ約68.1×146.5×9.1mm(幅×奥行き×高さ)、重量169gと、構成のわりにかなりコンパクト。大きめのスマホ(特にハイエンド)が多い中、本機の最大の売りとなる。
カラバリはミッドナイトブラック、ムーンライトホワイト、スターリーブルー、サンセットレッド。ただしメモリとストレージの容量によって対応する色の組合せが異なる。
価格は、9万9,800円(8GB/128GB)、11万2,800円(8GB/256GB)、12万9,800円(16GB/256GB)と、最小構成が10万円切っている。しかしZenFone 8は同じ構成で7万9,800円~10万8,800円。円安の関係なのだろうが、約2万円ほど高く残念な部分だ。
なお純正のアクセサリとしてConnex Accessories Set(ケース、スマートスタンド、カードホルダー)/5,280円、Smart Backpack Mount(ASUS Store限定)/9,980円などを用意。前者は写真も掲載したが、なかなか使いやすく価格も手頃。本体と合わせて購入するものありだろう。
今回手元に届いたのはミッドナイトブラック(16GB/256GBはこの色のみ)。筐体は扉の写真からも分かるようにコンパクト。片手に楽々収まる。重量も実測で172g(SIMあり)と軽量級だ。ただ感覚的にかなり小さいと思ったが、iPhone 13 Proと比較するとそうでもなかった(もちろん少し小さいのだが)のは意外だった。背面はマットな感じの艶消しアルミ製ミッドフレームが使われ、滑りにくく指紋も付きにくい。
前面は左上にパンチホール型の前面カメラ。背面は左上に背面カメラ。NFCは背面カメラの右側にある。右側面に音量±ボタンと指紋センサー兼の電源ボタン。上側面に3.5mmジャック。下側面にSIMスロット、Type-C、スピーカーを配置。付属品は、ケース、ACアダプタ(30W)、Type-C/Type-Cケーブル、イジェクトピン。
5.9型OLEDのディスプレイは、1,100cd/平方m、Delta-E<1、151% sRGB/112% DCI-P3と謳っているだけあってさすがに綺麗だ。明るさ、コントラスト、発色、視野角すべて文句なし。もちろん最大120Hzなので描画もスムーズ。正にハイエンドのパネルと言ったところ。フチもこれ以上狭いと持った指で画面が隠れてしまうのでギリギリ感がまた良い。
発熱は季節柄もあるだろうが、ベンチマークテストで負荷をかけたり、長時間映像を再生しても暖かくなる程度だった。このあたりは、ベイパーチャンバー初搭載でZenfone 8のヒートパイプ使用面積比+230%という放熱機構がかなり効いているのだろう。
サウンドはASUS AudioWizard(動的モード/音楽モード/シネマモード/ゲームモード)、調整可能イコライザー機能(60hzから20k、合計10の周波数帯)、同社製ヘッドフォンのProfile設定などを搭載しているが、音楽モードで視聴した。スピーカーは横位置時にステレオ。サイズのわりにパワーもあり、低音も(スマホとしては)それなりに出る。3.5mmジャックからの出力は、ソニーのMDR-EX800STで試したところパワーも低音も十分出るが、高域の抜けがイマイチだろうか。このあたりは好みに応じてイコライザーで調整したいところ。
超広角/広角に加え6軸ジンバルやライトトレイルモードなど機能満載!
カメラは、前面が約1,200万画素(35mm換算 : 27.5mm相当/F値2.45)。背面が1,200万画素 超広角カメラ(35mm換算 : 14.4mm相当/F値2.2)、5,000万画素 広角カメラ(35mm換算 : 23.8mm相当/F値1.9)。センサーは順にソニーIMX663、ソニーIMX363、ソニーIMX766が使われている。
出力画素数は3,024×4,032ピクセル、3,024×4,032ピクセル、3,072×4,096ピクセル(ポートレートモード、デジタル2倍ズームも含む)。広角は5,000万画素あるので、本来ならもっと出力画素数は大きくなるが、おそらく複数のピクセルを1ピクセルで扱ったり、デジタル2倍ズーム時に余裕があるようにしているのだろう。
撮影モードはスローモーション、タイムラプス、動画、写真、ポートレート、パノラマ、ライトトレイル、その他。そのほかにはPROモード、夜景、PROビデオ。ポートレートは画角が1.5倍(固定)になる。ライトトレイルモードは新しく追加されたモードで、作例のようにライト(や川など)が流れるように写す、いわゆるスローシャッターだ。従ってカメラを固定(手持ちでもある程度は大丈夫)して撮影する必要がある。
前面カメラは、スローモーション、タイムラプス、ライトトレイル、PROモード、PROビデオが使えない。ポートレートは、肌のトーン/3、ファンデ/3(肌のスムージング)、美白/3、目の大きさ/0、小顔/0の調整が可能(後ろの数字はデフォルト)。前面カメラも同様の機能を持つ。
設定は、画面上部中央にある下向き矢印か、画面を下へスワイプするとそのモードで有効なものが表示され、全体設定は右下の歯車となる。50MP出力やPROモードではRAWにも対応。6軸のハイブリッドジンバルスタビライザーは、動画の設定 > 歯車 > その他 > スタビライザーガイドONで有効になる。
表示/編集はギャラリーを使う。編集機能は、回転/トリミング、フィルター、詳細調整(露出/周辺光量/コントラスト/影/ハイライトなど)、描画、モザイク、テキスト。また人物の場合は、肌のトーン、紅潮、肌を和らげる、肌の明るさ、大きな目、やせた顔の調整が可能だ。もちろん、ポートレートで撮影した場合はボケ味の調整もできる。
以下作例を日中10点、夜10点、人物(前面/背面)2点の計22点掲載する。基本写真モードでオート(HDR/Auto、ストロボ/OFF)で必要に応じて露出補正(っと言ってもほとんどしていない)。バイクと人物はポートレート。ビューティ系のエフェクトはデフォルトのまま撮影した。望遠はx2まで。
実際の使用感は、起動、AF、撮った画像の確認、どれもキビキビ動きストレスはない。メインカメラのx0.6、x1、x2もワンタッチで便利。デジタル2倍ズームも画素数が足りているので荒くならない。季節柄もあるだろが、発熱もほとんどない感じだ。
上記したZenFone 8の作例を見ながら撮った写真を眺めると、絵作りが随分変わり彩度高めで空などは塗ったような青になる。この関係もあるのか、全体的に立体感が乏しく、平面的な写りだ。また夜景は気にならないものの、日中は寒色系(青っぽい)になるケースが見られる。前面カメラの肌色もたまたまかもしれないがもっと健康的な方が良い。iPhone 14 Pro、Galaxt Z Flip4とハイエンドが続いたが、発色に限ってはこれらよりは劣る感じだ。
最後にiPhone 14 Pro同様、本機もジンバルを搭載している。iPhone 14 Proはどちらかと言えばソフトウェア的な処理で実現しているが、本機は物理的な6軸ハイブリッドジンバルスタビライザーを搭載。作例は前回使った階段からの小走りが人がいたためできず、大きめのコンクリートブロックの上に乗り、飛び降りてから(つまり上下のブレ幅は今回の方が大きい)の小走りとなっているが、ご覧のように安定して映っている。自転車やスケボ、これからの季節だとスキーやスノボで撮ると楽しそうだ。
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ハイエンドらしいパフォーマンスに加えバッテリ駆動12時間超え!
ベンチマークテストは簡易式だが、GeekBench 5とGoogle Octane 2.0、そしてバッテリ駆動時間はWi-Fi経由でフルHDの動画を輝度50%、音量50%で全画面連続再生した結果となる。またGeekBench 5とGoogle Octane 2.0に関しては、バッテリモードをダイナミック(デフォルト)と高性能の2種類で測定した。
GeekBench 5は、Single-core: 942(1,258)、Multi-core: 3,077(4,033)、Vulkan: 6,483(6,507)。Google Octane 2.0は37,674(53,311)。カッコ内が高性能モードとなる。少し前にご紹介したSamsung「Galaxy Z Flip4」も同じSoCで、高性能モード少しマイナス的なスコアとなっている。このあたりがSnapdragon 8+ Gen 1の性能となるだろうか。
バッテリ駆動は12時間半で電源が落ちた。このサイズ感、Snapdragon 8+ Gen 1搭載で12時間超えればOKというところか。ZenFone 8(4,000mAh)では10時間40分だったので結構伸びている。
以上のようにASUS「ZenFone 9」は、5.9型のOLEDパネルにSnapdragon 8+ Gen 1、メモリ8もしくは16GB、ストレージ128もしくは256GBを搭載したSIMロックフリーAndroidスマホだ。片手に楽々収まるサイズ感で重量169gも魅力的。バッテリ駆動時間は若干伸び、新搭載の6軸ジンバルもなかなかすごい。
eSIMやmicroSDカード未対応、そして円安による2万円ほどの値上げは残念な部分であるが、この大きさとパワーにグッと来た人に使ってほしい1台だ。
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