【Hothotレビュー】5万円台の新定番、それがCore i5-13600K!強力な性能を扱いやすく

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Core i5-13600K

 今回は、10月20日に発売となったRaptor Lake-Sこと第13世代Intel Core デスクトップ・プロセッサー(以下、第13世代Core)のミドルレンジモデル「Core i5-13600K」のベンチマークレビューをお届けする。

 5万円台で入手できるミドルレンジCPUの実力がどれほどのものなのか、前世代のCore i5-12600Kや競合となるRyzen 5 7600Xとの比較で確認してみよう。

6基のPコアと8基のEコアを備える14コア20スレッドCPU「Core i5-13600K」

 Core i5-13600Kは、Raptor Lake-Sこと第13世代Coreのミドルレンジモデルで、6基のPコアと8基のEコアを備えた14コア20スレッドCPUだ。

 前世代のCore i5-12600KとPコアの数は同等ながら、Eコアが4基から8基に倍増した。このEコア数の増加に加え、コア当たりのL2キャッシュ容量が増加したことにより、L2キャッシュ容量も9.5MBから20MBへと大幅に増加している。

 CPU内蔵メモリコントローラは、DDR5-5600とDDR4-3200のデュアルチャネルに対応。内蔵GPUは上位のCore i5-13600Kなどと同じくUHD Graphics 770を備えているが、最大GPUクロックは上位モデルよりやや低い数値が設定されている。

 CPUのブースト機能はTurbo Boost 2.0で、上位モデルがサポートするTurbo Boost MAX 3.0やThermal Velocity Boostには対応していない。電力指標はPBPが125W、MTPは181W。

【表1】Core i5-13600Kの主な仕様
モデルナンバー Core i5-13600K Core i5-12600K
開発コードネーム Raptor Lake-S Alder Lake-S
CPUアーキテクチャ Raptor Cove + Gracemont Golden Cove + Gracemont
製造プロセス Intel 7 Intel 7
Pコア数 6 6
Eコア数 8 4
CPUスレッド数 20 16
L2キャッシュ 20MB 9.5MB
L3キャッシュ 24MB 20MB
ベースクロック Pコア=3.5GHz、Eコア=2.6GHz Pコア=3.7GHz、Eコア=2.8GHz
Turbo Boost 2.0 Pコア=5.1GHz、Eコア=3.9GHz Pコア=4.9GHz、Eコア=3.6GHz
Turbo Boost Max 3.0
Thermal Velocity Boost
CPU内蔵GPU (iGPU) UHD Graphics 770 UHD Graphics 770
GPUコア数 32 32
GPU最大クロック 1.50GHz 1.45GHz
対応メモリ DDR5-5600(2ch)、DDR4-3200(2ch) DDR5-4800(2ch)、DDR4-3200(2ch)
PCI Express PCIe 5.0 x16、PCIe 4.0 x4 PCIe 5.0 x16、PCIe 4.0 x4
PBP 125W 125W
MTP 181W 150W
対応ソケット LGA1700 LGA1700

14コア20スレッドCPU「Core i5-13600K」

Core i5-13600KのCPU-Z実行画面

ベンチマーク結果

 それでは、ベンチマークテストの結果をみていこう。

 今回実施したベンチマークテストは、「Cinebench R23」、「Blender Benchmark」、「V-Ray Benchmark」、「やねうら王」、「HandBrake」、「TMPGEnc Video Mastering Works 7」、「PCMark 10」、「SiSoftware Sandra」、「3DMark」、「VRMark」、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「Forza Horizon 5」、「オーバーウォッチ 2」、「フォートナイト」、「エーペックスレジェンズ」、「モンスターハンターライズ:サンブレイク」、「Microsoft Flight Simulator」。

CINEBENCH

 CPUの3DCGレンダリング性能を測定するCinebench R23では、Multi CoreとSingle Coreを実行した。

 Multi Coreの最高スコアはCore i5-13600Kの23,410で、Core i5-12600Kの16,945を約38%、Ryzen 5 7600Xの14,635を約60%と大幅に上回っている。

 Single CoreにおけるCore i5-13600Kのスコアは1,944で、1,829のCore i5-12600Kを約6%上回り、1,942のRyzen 5 7600Xとほぼ同スコアだった。

【グラフ01】Cinebench R23 (R23.200)「Multi Core」

【グラフ02】Cinebench R23 (R23.200)「Single Core」

3DMark「CPU Profile」

 CPUスレッド数毎のパフォーマンスを計測する3DMarkの「CPU Profile」のスコアをまとめたものが以下のグラフだ。

 Core i5-13600Kは、1スレッドテストにて2ポイント差という僅差でRyzen 5 7600Xに遅れをとっているものの、ほかの条件では全体ベストのスコアを記録している。特に、8スレッド以上のテストでは、Core i5-12600Kを14~29%、Ryzen 5 7600Xを16~44%と大きく上回った。

【グラフ03】3DMark v2.25.8043「CPU Profile」(1/2)

【グラフ04】3DMark v2.25.8043「CPU Profile」(2/2)

Blender Benchmark

 Blender Benchmarkでは、Core i5-13600Kが全てのテストでベストなスコアを記録しており、Core i5-12600Kを37~43%、Ryzen 5 7600Xを46~50%と大きく上回った。Core i5-12600Kから倍増したEコアがマルチスレッド性能を大きく引き上げていることが伺える結果だ。

【グラフ05】Blender Benchmark 3.1.0 (Blender v3.3.0)

V-Ray Benchmark

 V-Ray Benchmarkでも、Core i5-13600KがCore i5-12600Kを約39%、Ryzen 5 7600Xを約42%上回る傑出したスコアを記録した。

【グラフ06】V-Ray Benchmark v5.02.00 「V-RAY (CPU)」

将棋ソフト「やねうら王」

 将棋ソフトの「やねうら王」では、NNUE型でとKPPT型でベンチマークテストを実行した。

 今回のテストにおいて、Core i5-13600KとCore i5-12600Kでテストをそのまま実行するとEコアでしか処理が行われないという不具合が発生した。これについては、プロセスの優先度を「通常以上」に設定することで解消したため、全てのCPUでプロセスの優先度を引き上げて実行している。

 この不具合については、Core i9-13900Kレビュー時には確認されていなかったもので、Windowsのアップデートによってコマンドプロンプトがタブ機能を備えたものに更新されたことが影響しているものと思われる。ハイブリッドアーキテクチャを採用するCPUで同様の現象が発生する場合は、プロセスの優先度を調整してみると良いだろう。

 肝心のベンチマーク結果に関しては、マルチスレッドテストではCore i5-13600KがCore i5-12600Kを38~48%、Ryzen 5 7600Xを52~54%上回って圧倒している。

 シングルスレッドテストについては、ベストはRyzen 5 7600Xで、Core i5-13600KはNNUE型で約4%Ryzen 5 7600Xを下回り、KPPT型でほぼ同等の速度を記録した。Core i5-13600KはCore i5-12600Kを10~15%上回っていることから、前世代よりPコアのシングルスレッド性能が向上していることが分かる一方、Pコア自体の性能はRyzen 5 7600XのCPUコアと同程度であることが伺える。

【グラフ07】やねうら王 v7.50 「マルチスレッド」

【グラフ08】やねうら王 v7.50 「シングルスレッド」

動画エンコードソフト「HandBrake」

 オープンソースの動画エンコードソフト「HandBrake」では、フルHD(1080p)と4K(2160p)の動画ソースをYouTube向けプリセットでエンコードするのに掛かった時間を測定した。

 Core i5-13600Kは全ての条件で最速を記録しており、そのエンコード速度はCore i5-12600Kを26~38%、Ryzen 5 7600Xを38~48%上回った。

【グラフ09】HandBrake v1.5.1

動画エンコードソフト「TMPGEnc Video Mastering Works 7」

 動画エンコードソフトのTMPGEnc Video Mastering Works 7では、フルHD(1080p)と4K(2160p)のソース動画をH.264形式とH.265形式に変換するのに掛かった時間を測定した。

 x264を用いたH.264形式へのエンコードで最速を記録したのはCore i5-13600Kで、そのエンコード速度はCore i5-12600Kを17~37%上回り、Ryzen 5 7600XとはフルHD動画のエンコードで同タイムだったものの、4K動画のエンコード速度では41~50%上回った。

 x265を用いたH.265形式のエンコードでも、全ての条件でCore i5-13600Kが最速を記録。そのエンコード速度はCore i5-12600Kを18~34%、Ryzen 5 7600Xを8~36%上回った。先日のCore i9-13900KのレビューではAVX512をサポートするRyzen 9 7950Xが強さを見せたx265だが、今回もRyzen 5 7600Xが差を多少詰めてはいるものの、8基のEコアを備えるCore i5-13600Kとの差を逆転するには至らなかったようだ。

【グラフ10】TMPGEnc Video Mastering Works 7 (v7.0.25.28)「H.264形式へのエンコード」

【グラフ11】TMPGEnc Video Mastering Works 7 (v7.0.25.28)「H.265形式へのエンコード」

PCMark 10

 PCMark 10では、もっとも詳細なテストである「PCMark 10 Extended」を実行した。

 総合スコアはCore i5-13600KとRyzen 5 7600Xが横並びとなっている。サブスコアについても両CPUの差は僅差で、日常的なアプリ操作やオフィスアプリでのパフォーマンスを計測するEssentialsやProductivityでRyzen 5 7600Xがやや優勢な一方、クリエイティブ系のDigital Content CreationとGamingではCore i5-13600Kが優勢だった。

【グラフ12】PCMark 10 Extended (v2.1.2574)

SiSoftware Sandra 「CPUベンチマーク」

 SiSoftware SandraのCPUテストから、「Arithmetic」、「Multi-Media」、「Image Processing」の結果を紹介する。

 CPUの演算性能を測定するArithmeticではCore i5-13600Kが全てのテストでベストなスコアを記録しており、Core i5-12600Kを14~41%、Ryzen 5 7600Xを12~83%上回った。

 マルチメディア性能を測定するMulti-Mediaでは、AVX512命令をサポートするRyzen 5 7600Xが大きくスコアを伸ばしているが、Quad-IntでRyzen 5 7600Xを約26%下回ったことを除き、ベストスコアはCore i5-13600Kが獲得している。

 画像処理性能を計測するImage Processingでは、CPUによって得手不得手が分かれており、Core i5-13600Kがベストを獲得したのは8項目中4項目だった。Core i5-13600Kがベストを逃した項目ではRyzen 5 7600Xがベストを獲得しており、うち3項目は比較的僅差だがNoise ReductionではCore i5-13600KがRyzen 5 7600Xを約35%下回った。一方、Core i5-13600Kがベストを獲得した項目のうちBlurこそ僅差であるものの、ほかの項目ではRyzen 5 7600Xを52~99%と大差で上回っており、総合的にはRyzen 5 7600Xを凌ぐパフォーマンスを発揮していると言える結果である。

SiSoftware Sandra「メモリベンチマーク」

 SiSoftware Sandraで、メインメモリの帯域幅とレイテンシの計測を行なった。

 DDR5-5600メモリに対応したCore i5-13600Kは、61.38GB/sを記録してベストなメモリ帯域幅を記録する一方、レイテンシについては83.5ナノ秒でワーストとなっている。メモリ帯域幅の拡大とレイテンシの増加については前回のCore i9-13900Kの検証でも同様の結果が得られている。

【グラフ18】SiSoftware Sandra v31.99 「Memory Bandwidth (メモリ帯域幅)」

【グラフ19】SiSoftware Sandra v31.99 「Cache & Memory Latency (メモリレイテンシ)」

SiSoftware Sandra「キャッシュベンチマーク」

 CPU内蔵キャッシュのレイテンシや帯域幅を測定した結果が以下のグラフだ。

 L2キャッシュ容量が増加したCore i5-13600Kは、Core i5-12600Kより1~2MBあたりの帯域幅とレイテンシが改善している。一方、4~16MBのあたりでみられるL3キャッシュの帯域幅については、Core i5-13600Kが260GB/s前後であるのに対し、Ryzen 5 7600Xは660~900GB/sと圧倒的に高速であることが確認できる。

【グラフ20】SiSoftware Sandra v31.99 「Cache & Memory Latency (レイテンシ)」

【グラフ21】SiSoftware Sandra v31.99 「Cache & Memory Latency (クロック)」

【グラフ22】SiSoftware Sandra v31.99 「Cache Bandwidth」

3DMark

 3DMarkでは、「Speed Way」、「Time Spy」、「Fire Strike」、「Wild Life」、「Port Royal」を実行した。

 GPU負荷の高いSpeed WayやPort RoyalではCPUの性能差がスコアに反映されていない一方、Time SpyやFire Strike、Wild Lifeの無印テストではCPUごとに優劣が別れる結果が得られた。

 差がついたテストのうち、Time SpyではCPU Testでスコアを稼いだCore i5-13600Kがベストを獲得しているが、Fire StrikeではCombined Scoreでスコアを稼いだRyzen 5 7600Xを約3%下回り、Wild Life無印テストでもRyzen 5 7600Xを約10%下回った。

VRMark

 VRMarkでは、「Orange Room」、「Cyan Room」、「Blue Room」を実行した。

 GPU負荷が高い5KテストのBlue RoomではCPU性能差がスコアに反映されない一方で、Orange RoomとCyan RoomではRyzen 5 7600Xが傑出したパフォーマンスを発揮しており、Core i5-13600KはRyzen 5 7600Xを17~22%という大差で下回る結果となっている。

【グラフ28】VRMark v1.3.2020「スコア」

【グラフ29】VRMark v1.3.2020「平均フレームレート」

ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク

 ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマークでは、描画品質を「最高品質」にして、3種類の画面解像度でテストを実行した。

 ここでは、フルHDとWQHDではRyzen 5 7600Xがベストスコアを獲得しており、Core i5-13600Kはそれを2~7%下回っている。よりGPU負荷が高くなる4KではCore i5-13600KがRyzen 5 7600Xを5%上回って逆転している。

【グラフ30】ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク「スコア」

【グラフ31】ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク「平均フレームレート」

FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク

 FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークでは、描画品質を「高品質」にして、3種類の画面解像度でテストを実行した。

 Core i5-13600Kは、フルHDとWQHDでRyzen 5 7600Xを約5%上回ってベストスコアを獲得する一方、4KではRyzen 5 7600Xを約2%下回って2番手となっている。なお、前世代との比較ではCore i5-12600Kを2~18%上回っている。

【グラフ32】FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク v1.3

Forza Horizon 5

 Forza Horizon 5では、描画品質を「エクストリーム」に設定したフルHD~4Kの画面解像度と、フルHD解像度で描画品質を「中」に引き下げた高fps設定で、ゲーム内ベンチマークモードを実行した。

 ここでは、Core i5-13600KとRyzen 5 7600Xのフレームレートが高fps設定を含めてもほぼ同等という結果が得られた。このCore i5-13600Kの結果は、前世代のCore i5-12600Kを5~25%上回るものであり、Alder Lake-SからRaptor Lake-Sになることでゲーミング性能が向上したことが伺える。

【グラフ33】Forza Horizon 5 (v1.517.253.0.HV)

オーバーウォッチ 2

 オーバーウォッチ 2では、描画品質を「エピック」に設定したフルHD~4Kの画面解像度でAI同士のカスタムマッチを実行してフレームレートを計測した。テスト時の上限フレームレートは600fps。

 同一シーンでの比較ではないため、ある程度バラツキが生じるテストであることを加味すると、WQHD以上では各CPUの差はそれほど大きく反映されていないと考えることもできる内容で、フルHDでは拮抗しているCore i5-13600KとRyzen 5 7600Xのパフォーマンスは近いものであると考えられる。両CPUはフルHDでCore i5-12600Kを約20%も上回っており、前世代のミドルレンジを大きく超えるゲーミング性能を備えていることは確かだ。

【グラフ34】オーバーウォッチ 2 (v2.1.0.2.106615)

フォートナイト

 フォートナイトでは、描画品質を「最高」に設定したフルHD~4Kの画面解像度と、フルHD解像度で描画品質を「中」に引き下げた高fps設定でフレームレートを計測した。テスト時のグラフィックスAPIはDirectX 12で、3D解像度は100%。

 4Kのフレームレートは140fps台前半で横並びとなっているが、WQHD以下ではCore i5-13600Kがもっとも高い平均フレームレートを記録しており、Core i5-12600Kを13~32%、Ryzen 5 7600Xを5~7%上回った。

【グラフ35】フォートナイト (v22.20)

エーペックスレジェンズ

 エーペックスレジェンズでは、描画品質を可能な限り高く設定して、フルHD~4Kの画面解像度でフレームレートを計測した。テスト時の上限フレームレートは300fps。

 フルHDでは上限フレームレート付近での動作となるため、各CPUの平均フレームレートは295fps前後で大差のない結果となっている。WQHD以上では、Core i5-13600Kがやや高いフレームレートを記録しており、Core i5-12600Kを2~3%、Ryzen 5 7600Xを約2%上回った。

【グラフ36】エーペックスレジェンズ (v3.0.15.37)

モンスターハンターライズ:サンブレイク

 モンスターハンターライズ:サンブレイク では、描画品質を「高」にして、フルHD~4Kの画面解像度でフレームレートを計測した。

 Core i5-13600Kは全ての条件でもっとも高いフレームレートを記録しており、Core i5-12600Kを24~31%、Ryzen 5 7600Xを7~11%上回った。

【グラフ37】モンスターハンターライズ:サンブレイク (v12.0.1.1)

Microsoft Flight Simulator

 Microsoft Flight Simulatorでは、描画設定を「ウルトラ」にしたフルHD~4Kの画面解像度と、フルHD解像度で描画品質を「ミドル」に引き下げた高fps設定でフレームレートを測定した。グラフィックスAPIは「DirectX 11」と「DirectX 12」でそれぞれテストしている。テストでは、羽田空港から関西国際空港へのルートをエアバスA320neoでAIに飛行させ、離陸から3分間の平均フレームレートを計測している。

 DirectX 11では、全ての条件でCore i5-13600Kがベストなフレームレートを記録しており、Core i5-12600Kを22~25%、Ryzen 5 7600Xを1~10%上回った。

 DirectX 12では高fps設定でRyzen 5 7600Xがベストなフレームレートを記録しており、Core i5-13600Kはそれを約9%下回った。それ以外の条件ではCore i5-13600Kがベストで、Core i5-12600Kを22~25%、Ryzen 5 7600Xを4~7%上回った。

【グラフ38】Microsoft Flight Simulator (v1.27.21.0)「DirectX 11」

【グラフ39】Microsoft Flight Simulator (v1.27.21.0)「DirectX 12」

システムの消費電力

 ワットチェッカーを使ってシステムの消費電力を測定し、アイドル時の最小消費電力と、ベンチマーク実行中の平均消費電力および最大消費電力をグラフ化した。

 アイドル時消費電力がもっとも低かったのは103.2WのCore i5-12600Kで、以下112.5WのCore i5-13600K、113.9WのRyzen 5 7600Xと続いている。

 CPUベンチマークや動画エンコードテストでもっとも高い平均消費電力を記録したのはCore i5-13600Kの288.5~310.7Wで、以下Ryzen 5 7600X(233.8~250.2W)、Core i5-12600K(224.7~238.2W)の順で続いている。

 3DMarkやゲームベンチマーク実行中の平均消費電力については、325.5~609.2WのCore i5-13600Kと、326.7~613.4WのRyzen 5 7600Xが拮抗している。瞬間最大消費電力はFINAL FANTASY XV(4K/高品質)実行中のRyzen 5 7600Xが記録した646.4Wが最大で、同条件でCore i5-13600Kは645.8Wというほぼ同じと言える数値を記録している。

【グラフ40】CPUベンチマーク実行中とアイドル時のシステムの消費電力 (平均/最大)

【グラフ41】動画エンコード実行中のシステムの消費電力 (平均/最大)

【グラフ42】3DMark実行中のシステムの消費電力 (平均/最大)

【グラフ43】ゲームベンチマーク実行中のシステムの消費電力 (平均/最大)

 Cinebench R23のMulti Coreスコアをシステムの平均消費電力で割ることでワットパフォーマンスを比較してみた結果、ベストは81.1のCore i5-13600Kで、74.3のCore i5-12600Kを約9%、62.1のRyzen 5 7600Xを31%上回った。

 消費電力自体は前世代よりも増加しているCore i5-13600Kだが、増加したEコアでマルチスレッド性能を高めた結果、CPUがフルロードするような条件での電力効率は前世代や競合のRyzen 5 7600Xを上回ることに成功していることが分かる。

【グラフ44】システムの平均消費電力1WあたりのCinebench R23 (Multi Core) スコア

CPU温度とモニタリングデータ(Cinebench R23)

 モニタリングソフトのHWiNFO64 Pro v7.30を使って取得した、Cinebench R23のMulti Coreテスト実行中のモニタリングデータから、CPU温度などをまとめてみた。

 ファンスピード最大にした360mmサイズのオールインワン水冷クーラー「ADATA XPG LEVANTE 360 ARGB」で各CPUを冷却した結果、Core i5-13600KのCPU温度は平均73.6℃(最大76.0℃)、Core i5-12600Kは平均56.5℃(最大59.0℃)、Ryzen 5 7600Xが平均89.0℃(最大89.8℃)となっている。

 このとき、CPUが消費している電力はCore i5-13600Kが平均155.4W(最大180.8W)で、Core i5-12600Kの平均104.8W(最大119.2W)より平均値で50Wほど高く、Ryzen 5 7600Xの平均119.4W(最大121.4W)より平均値で36W高い。優れた性能と引き換えに消費電力と発熱は確実に増加していることが分かる。

 いずれのCPUもサーマルスロットリングや電力リミットによる大きなスロットリングは生じていないようで、CPUクロックに大きな変化はみられない。Core i5-13600Kは終始Pコア=5,100MHz、Eコア=3,900MHzというブースト動作を維持していた。

CPU温度とモニタリングデータ(ファイナルファンタジーXIVベンチマーク)

 Cinebench R23と同じように、ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマークを「フルHD/最高品質」設定で実行したさいのモニタリングデータをまとめてみた。

 Core i5-13600KのCPU温度は平均44.5℃(最大51.0℃)とおとなしい数値となっており、CPU消費電力も平均63.8W(最大78.7W)となっている。

 Core i5-13600KのCPU消費電力はRyzen 5 7600Xの平均62.8W(最大75.5W)を上回っているが、GPU消費電力がやや低かったことでシステム全体の消費電力ではRyzen 5 7600Xを下回る結果となっている。これはGPU性能を引き出せなかったことを意味しており、実際にベンチマークスコアでは約7%下回っているので良い結果というわけではない。

内蔵GPUのパフォーマンスをチェック

 最後に、Core i5-13600Kが内蔵するGPUコア「UHD Graphics 770」のパフォーマンスを確認しておこう。

 内蔵GPUドライバについては、Core i5-13600KとCore i5-12600Kに「31.0.101.3729」、Ryzen 5 7600XのRadeon Graphicsに「Adrenaline 22.20.02」を適用している。そのほかの機材は以下の通り。

【表3】内蔵GPUテスト機材
CPU Core i5-13600K Core i5-12600K Ryzen 5 7600X
コア数/スレッド数 6P+8E/20T 6P+4E/16T 6C/12T
CPU電力/温度リミット PL1=PL2=253W、Tau=56秒、TjMAX=100℃ PL1=PL2=241W、Tau=56秒、TjMAX=100℃ PPT=230W、TDC=160A、EDC=225A、TjMAX=95℃
内蔵GPU UHD Graphics 770 UHD Graphics 770 Radeon Graphics
GPUドライバ 31.0.101.3729 31.0.101.3729 Adrenaline 22.20.02 (31.0.12002.92)
マザーボード ASUS ROG MAXIMUS Z790 EXTREME [UEFI=0502] ASRock X670E Taichi [UEFI=1.09]
メモリ DDR5-5600 16GB×2 (2ch、40-42-42-78、1.3V) DDR5-4800 16GB×2 (2ch、40-42-42-78、1.3V) DDR5-5200 16GB×2 (2ch、40-42-42-78、1.3V)
CPUクーラー ADATA XPG LEVANTE 360 ARGB (ファンスピード=100%)
システム用SSD CORSAIR MP600 1TB (NVMe SSD/PCIe 4.0 x4)
アプリケーション用SSD CFD CSSD-M2B2TPG3VNF 2TB (NVMe SSD/PCIe 4.0 x4)
電源 Thermaltake Toughpower Grand RGB 1050W Platinum
OS Windows 11 Pro 22H2 (build 22621.675/VBS有効)
電源プラン バランス
室温 約25℃

 Core i5-13600KとCore i5-12600Kが備える内蔵GPUコアは同じUHD Graphics 770で、Core i5-13600Kの方が最大ブーストクロックが50MHz引き上げられてはいる

 同じUHD Graphics 770を搭載するCore i5-13600KとCore i5-12600Kの間には1割前後のパフォーマンス差が生じている。一応、GPUコアの最大クロックは50MHzだけCore i5-13600Kの方が高いが、この差が生じた要因はGPUクロックの向上より、DDR5-5600メモリに対応したことによるVRAMの帯域幅向上によるものだろう。

クリエイティブもゲームもこなせるバランスの良いCPU「Core i5-13600K」

 前世代からEコアとL2キャッシュを倍増したCore i5-13600Kは、Ryzen 5 7600Xを大きく上回るマルチスレッド性能と、互角以上と言えるゲーミング性能を実現しており、クリエイティブとゲーミングの両面で優れたパフォーマンスを発揮する製品となっている。

 今回は360mmサイズのオールインワン水冷を使用してテストを行なったが、消費電力とそれに伴う発熱量を考えると、空冷CPUクーラーでもブースト動作を最大限に維持すること期待できるレベルであり、性能だけでなく扱いやすさという面でもバランスの良いCPUであると評価できる。

 Core i5-13600Kの実売価格は5万7,800円前後で、今回比較したRyzen 5 7600Xより8,000円ほど高価ではあるのだが、BIOS更新で既存のLGA1700対応マザーボードが使える点や、マザーボード次第でDDR4メモリを利用できる点を考慮すると、初期費用を圧縮できる余地はライバルよりも大きい。

 ゲーミングPCやクリエイティブ環境の強化を検討しているユーザーにとって、Core i5-13600Kは強力な選択肢となるだろう。

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