KDDI株式会社は、SpaceXが提供している衛星通信サービス「Starlink」の法人・自治体向けサービス「Starlink Business」を年内にも提供開始することを発表した。
StarlinkはSpaceXが提供している衛星通信サービスで、上空約550kmにある低軌道衛星を介したインターネットサービスを実現する。衛星の打ち上げは再利用可能なロケット「Falcon 9」を介して行なわれているのだが、既に累計180回の打ち上げで合計3,400機超のStarlink衛星が打ち上げられており、今後も数を増加させることでカバーエリアの拡張や通信速度の確保を行なう。
Starlink Businessは、現在東日本でしか展開されていない個人向けのサービスとは異なり全国をカバー。また、回線の帯域割当が優先的に設定されているため、混雑時でも個人向けより高速に通信できる。受信速度は最大350Mbps、送信速度は最大40Mbps、遅延は20~40msといった仕様となっている。
アンテナも個人向け(円形)とは異なる長方形のもので、上空視野角は35%改善した140度。またIP56準拠の防塵防水仕様に対応(個人向けは現在IP54準拠)しているほか、融雪能力は75mm/hと個人向けアンテナの1.7倍となっている。ただし個人向けのアンテナも今後長方形のものになるとしている(同等かどうかは不明)。
KDDIではサービス契約にあたって、設置/導入支援のほか、構内LANや閉域網、クラウド、セキュリティといった総合的な通信/DX提案を行なう。さらに、カスタマーサポートもKDDIが担うとしている。
今回のサービス導入により、山間部といった光通信が困難な場所における通信、緊急時/災害時の通信、山小屋や離島における通信、未開地域における事務所の通信環境の整備などが可能となるとしている。なお、現在は地上がメインだが、将来的には海上への展開により船舶などでの利用も見込む。
衛星通信が可能になったStarlinkの背景
19日に開かれたサービス開始説明会では、KDDI株式会社 執行役員 経営戦略本部長 兼 事業創造本部長 松田浩路氏が、サービス導入の背景や特徴などについて解説を行なった。
Starlinkは米国でサービスを開始したが、10月11日に日本でもサービスを開始。これはアジア地域にとっても初である。これは、日本が自然豊かで山間部が多い、離島が多いといった背景から、導入機会が高いためだという。
Starlinkの軌道距離は550kmとなっており、約36,000km離れた静止衛星と比べると距離が約65分の1となっている。静止衛星では電波を用いても0.2~0.3秒ほどの遅延が生じるため、ある程度のリアルタイム性を求められるインターネットには向かなかったが、Starlinkは近距離のため大容量/低遅延通信が可能となっている。
ただ、衛星間通信はもとより、地上にある基地局および地上のネットワークも重要になっている。このためKDDIはSpaceXと協業し、これまで日本国内における地上ネットワークの構築と基地局に注力してきたとする。ちなみになぜKDDIかと言えば、日本で初めて宇宙通信(日米間TV伝送)を行なったのがKDDI(1963年11月)だったからだといい、11月に60年目という節目を迎えるからだという。
KDDIは今後、Starlinkを活用しau通信網(基地局バックホール)への採用も見込む。これにより光通信が困難な山間部に基地局を設置できるようになり、スマートフォンのモバイル通信が可能になる。さらにその先ではスマートフォンと直接通信することも考えているが、現時点ではサイズ的な制約から高速通信は難しいだろうとしている。
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