先日、ついに第1話が放送となったアニメ『チェンソーマン』。少年ジャンプ推しではない私(中澤)ですら待ってたくらいなので「満を持して」という言葉がぴったりのアニメ化と言えるだろう。当日もトレンドに入りまくってたし、待望だったのは私だけではあるまい。
クオリティーも申し分ない堂々の出来。エッジーな作風はアニメにも受け継がれているし、2022年秋アニメの本命はこれで決まり! と思いきや、完全ノーマークだった『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』が神すぎた。嘘だろ!? スルーするところだったぞ!
・中国のアニメ
私がスルーしかけていたのは、本作が中国のアニメだからだ。もはや、中国産のアニメもクオリティーが高い時代なので、特に作画とかに偏見はないのだが、私が中国のアニメにいまいち馴染めないのはキャラ設定や舞台設定である。
仙女的な美女が登場したり、何かと大軍が出てきたり、これまで見てきた中国のアニメは、日本アニメ風に仕立てた作品でも随所に大陸オーラがあふれ出ていた。
さらに、セリフも翻訳したもののためかチープに感じる。文化的なバックグラウンドが違うためだろうか? 現代の話であっても、なんだか、向こうの古典を読んでいるように感じてしまうのだ。
もちろん、古典が悪いという話ではない。ただ単に、私がアニメに求めているのは中国の古典みじゃないというだけの話である。
・流し見のはずが
というわけで、『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』も完全に流し見だった。携帯をイジりながら見るともなく一応聞いている感じ。しかし、1分30秒を過ぎた頃、私はスマホを置いていた。
『もののけ姫』みたいになってる……! ただ背景が苔むした森なだけではない。アクションのスピード感がスタジオジブリみたいなのである。内容としては、猫が走ってるだけなのにその縦横無尽さに目が自然と惹きつけられた。
そこからオープニングになだれ込むのだが、とても美しいアクリルの背景をバックに流れる曲は笛が主旋律のアコースティックなインスト。ここまで人語は一切なし!
・裏切り
そんなオープニングが終わると、一転暗い雰囲気。都会の裏路地で猫狩りをする少年3人組が登場する。ストーリー中で初めて登場した人間だが、この3人組もまさかのセリフなし。サイレント映画的なもの凄く硬派な猫のロードムービーなんだろうか? と思いきや……
直後に登場したライオンみたいなのがセリフを話す。
うわっ! 痺れる!! そう、初めて人語を話すのは人間じゃないのである。これってひょっとしてシャオヘイ視点なのだろうか? 猫狩りの少年たちがやたらと無表情なのもそのためか?
ここまで約5分40秒。気づけば、スマホの存在が頭の彼方に吹っ飛ぶくらい惹きつけられていた。スマホ見てる場合じゃねェェェエエエ!
・しゃべれたんかいワレ
そこから主人公の猫がシャオヘイという名前なことが判明するのだが、そのライオンっぽい妖精・フーシーとの邂逅でもやっぱり猫語のシャオヘイ。あくまで、シャオヘイは猫を貫くのだろうか?
と思いきや、そんなシャオヘイが9分あたりで初めてセリフを話す。しゃべれたんかいワレ! 次々と転じていく物語に、たった9分で印象は180度変わっていた。このアニメは凄いかもしれない……!!
その後はもうあっという間。もはや確信を持って言える。「これは神作品だ」と──。
思えば、最初の入りが猫のアクションというのも良かったのかもしれない。人間のキャラでペラペラ話す感じだったら、前述の違和感を覚えていたかもしれないし。最初、もろ色眼鏡で見ていた私ですら良さの分かった本作は、文化や趣味の違いなどを超えていける作品であると思う。
・中国を代表するアニメ作品だった
プレスリリースによると、本作は元は中国の動画サイトで公開されたWEBアニメシリーズのようだ。2011年公開後、人気が上昇し続けて、劇場版が制作され、中国国内での興行収入は3.15億人民元(約49億円)の異例の大ヒットを記録したという。
今回のテレビ放送は、2020年に公開された日本語吹替版映画を5話で分割放送しているものだというから、類まれなる神作品なことも頷けた。
なお、全5話なので11月4日までの放送である本作。実は、その後の週である11月11日からは、本作を制作したスタジオ・寒木春華(HMCH)スタジオが携わる『万聖街』が放送開始するのだとか。というわけで、今のうちに乗っておくと、この秋が楽しくなるかもしれない。
執筆:中澤星児
画像:(C) Beijing HMCH Anime Co.,Ltd