「核シェルター」問い合わせ続々 – SmartFLASH

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放射性物質、生物化学兵器などの有害物質を完全遮断する核シェルター「クライシス01」

 2月24日、ロシアがウクライナに武力侵攻した。首都キエフなど主要都市を爆撃しただけでなく、原子力発電所に砲撃を加え、炎上させた。原発が爆発したら、想像を絶する放射能が拡散し、世界中がパニックに陥っていたに違いない。

 戦争や核爆弾の脅威からいかに身を守り、生き残るか、防備の重要性が問われ始めている。

「ウクライナ侵攻の影響もあり、このところ問い合わせが急増しています。遠くは奈良県や新潟県などから、すでに80件を超えました。プーチン大統領の『核使用も辞さない』という発言もありましたし、核シェルターに対する人々の関心が高まったようです」

 茨城県結城市にある「直エンジニアリング」の古谷野喜光専務は、世界情勢の急変による風向きの変化に複雑な思いをにじませる。

 同社は2021年10月より、放射性物質、生物・化学兵器、火山性有毒ガス、火山灰などの危険を防ぐ一般家庭向け核シェルター「クライシス-01」の販売を開始している。

「当社は、企業や大型店舗が使用する非常用発電機ボックスの製造が本業です。ですが、7年ほど前から、溶接と板金加工の技術を生かした新製品の開発を模索するなかで、日本では普及率が低い核シェルターに着目したのです」(古谷野専務)

 NPO法人「日本核シェルター協会」(兵庫県神戸市)の調べによると、2014年時点における世界の核シェルター普及率は、スイスおよびイスラエルが100%、ノルウェー98%、アメリカ82%、ロシア78%、イギリス67%、シンガポール54%に対して、日本はわずか0.02%となっている。

 1962年10月のキューバ危機を契機に、スイスは核シェルター設置を義務づける法律を制定し、国家的事業として取り組んできた。これに引き換え、日本の普及率は極端に低い。国会で核シェルター導入が取り上げられたこともあるが、まったく進展がないのが実情だ。

「日本は広島、長崎で2度の原爆投下の被害に遭い、福島第一原発の爆発でも放射能の被害を受けています。巨大地震の発生も想定され、災害大国と言われているにもかかわらず、国家レベルでも個人レベルでもまったく無防備なんです」(同前)

 核シェルターといえば、コンクリート造りで地下埋設型をイメージするが、同社製の核シェルターは屋外設置型で、移動も可能。古谷野専務は「トヨタのアルファードが置ける駐車スペースがあれば設置できる」と続ける。

「核シェルターは幅約2メートル、長さ約4メートル、高さ約2メートル。重量約2.3トンで、外壁は厚さ2.3ミリです。鉄板、鉛板、防音、断熱など7層構造の堅牢な造りとなっており、ボルトやビスは一切使用していません。すべて溶接加工となっています」(同前)

 室内のスペースは約3.5畳で、5人が2週間程度の避難ができる。室内にはLED照明4灯、エアコン、換気扇、コンセントがあり、さらに壁面には核フェルターが設置されている。この核フェルターの機能によって、あらゆる有害物質の侵入を完全に遮断し、室内の安全が保たれるのだという。

「放射能で汚染された外気をこの特殊フェルターでろ過します。フェルターはイスラエル製で、日本では製造できません。室内の空気は換気扇で室外に放出しますが、その際、室内の気圧を高めるので、外気が換気扇から逆流することはありません」(同前)

 このような防災システムを備えた核シェルターは、1基いくらくらいなのか?

「本体は570万円からです。これに消費税、運搬・設置費用などが別途加算されます。じつは、核フェルターは輸入品なので200万円するんです」(同前)

 なかなかの価格だけに、問い合わせは多いものの、成約はまだないという。

■ふるさと納税の返礼品にも採用

 一方、同社の核シェルターに注目した茨城県結城市は、ふるさと納税の返礼品に採用した。

「2021年12月、消費者などから返礼品にどうかとの要望があり、部内で検討。話題性があって市の知名度アップにもなるのではと考え、2022年1月から申し込みを開始しました」(森田安宏契約管財課係長)

 結城市は、伝統工芸の結城紬などを返礼品に採用しているが、核シェルターほどのインパクトはない。ちなみに、返礼品として核シェルターを扱う自治体は、栃木県矢板市に次いで2番めだが、矢板市の核シェルターはコンクリート造りで埋設型である。

「核シェルターは2090万円の寄付を当市に納めてくれた方が対象になります。これには運搬・設置費用も含まれています。まだ申し込みは1件もありませんが、ふるさと納税の申し込みは年末にかけて多くなるので、年末まで期待して待っています」(森田係長)

 本来なら、核シェルターなど必要としない平和な社会が理想だが、世界各地で戦乱や災害が続発し、多数の犠牲者が出ているのが現実だ。

 核シェルターがあれば、避難はもちろん、平時でも書斎や勉強部屋、テレワークに使用できる。外に音が漏れる心配がないので、楽器演奏やカラオケも可能だ。自宅にひとつ、いかがだろうか。

取材&文・岡村青

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