三菱UFJ信託銀行は10月13日、同社が運営するパーソナルデータを管理・運用する情報銀行サービス「Dprime」を活用して開発した、廃棄食材を使用したサステナブルビール「WASTE 2 BEER」を開発したと発表した。10月14日より、横浜のブリューパブ「里武士・馬車道」で提供するほかAJBのオンラインショップでも販売を開始している。価格は、「花」が720円、「輝」が700円、「我」が1050円、「実」が1000円(すべて税込)で、オンラインでは4本セット3300円(税込)から。
データを活用して作り上げた「WASTE 2 BEER」
野沢温泉の湧き水を使用し、長野県でクラフトビールを製造するAnglo Japanese Brewing Company(AJB)とコラボレーションして実現した。
Dprimeは、2021年7月に三菱UFJ信託銀行が立ち上げた情報銀行サービスだ。アプリに登録した個人データを企業・団体等に渡すことで、個人ユーザーはさまざまな特典が受けられるほか、自身のデータを通じて、社会課題解決に向けた商品・取組等を応援できることをコンセプトにした取り組み。
三菱UFJ信託銀行 常務執行役の谷川和路氏は、サービスを立ち上げた経緯について「金融機関としてのノウハウを個人のデータにも応用できるのではないかと考えたから」と説明する。
AJB 創業者のリヴシー絵美子氏と三菱UFJ信託銀行 常務執行役の谷川和路氏
「銀行は、お金を預かってるイメージをお持ちの方が多いかと思うが、重要なパーソナルデータもたくさん扱っている。たとえば、株主名簿、企業年金の加入者名簿、遺言や財産の保有状況なども厳重に管理している。そういったノウハウを生かすことで、情報銀行の取り組みを進められるのではないかと考えたことが開発のきっかけ」(谷川氏)
Dprimeには現在10万人の会員がおり、300社を超える企業が参加する。2023年度までに25万人の参加を目指す。
WASTE 2 BEERは、Dprimeを活用して「あなたのデータと廃棄食材で創る新感覚クラフトビール」をコンセプトに開発されたもの。共創プロジェクト「Dprime Lab」の第一弾で、個人ユーザーからのデータ提供により、企業と社会課題解決に資する商品を共創する試みだ。
プロジェクトの立ち上げとメンバーについて
アンケートを活用してパイロット版を作成、データを分析して商品を完成させた
具体的には、Dprimeのユーザー登録時の年齢や趣味嗜好といった基本データに加えて、どういうシチュエーションでビールを飲みたいかなどのアンケートを実施した。さらに試供品を送り、そのフィードバックをもとに商品開発を進めた。
「(企業側に)個人名を特定せずに、そうした開発ができるのが、Dprimeの強みであり、他と差別化ができるところ」(三菱UFJ信託銀行 法人コンサルティング部 部長の石川幸治氏)
AJB創業者のリヴシー絵美子氏は「当初は(データを活用する)イメージがあまりできなかったが、クラフトビールが好きな方、飲まない方、知らない方の意見も聞けたので、いままでとは違う開発ができた」とコメントした。
元サッカー日本代表の中田英寿氏も登壇
なお、発表会にはゲストとして元サッカー日本代表の中田英寿氏も登壇。データの活用について「インターネットの発達によって、データがより確実に取れるようになってきた。データは特に答えを出してくれるわけではないが、仮説を立てるのにも役立ち、実際に結果が出た時に見返すのも非常に重要なこと。さらにもう1歩重要なのは、自分の経験によるどういう仮説を立てるかということ。データの使い方はまだ入口の部分ではあるが、データと人間のこれまでの経験を掛け合わせてはじめてより効果を発揮する」とコメントした。
今回、4種類のクラフトビールの材料は、グレープフルーツジュース、グレープフルーツピール、カカオハスク、パイナップルジュース。使用する廃棄食材は、できる限り無農薬にしぼって選定しており、取り組みに賛同してくれる生産者の選定に時間がかかったという。
サステナブルビール「WASTE 2 BEER」の商品ラインアップ
ビールは、20~30代女性が多く好む味で、華やかなライフスタイルを送る方々のデータを元に製造した“花”のほか、宮崎県産グレープフルーツとケルシュを掛け合わせた“輝”、カカオハスク(外皮)をアップサイクルした香り高いインペリアルスタウトの“我”、ホップ由来のフルーティーな香りと、パイナップルの甘酸っぱい香りが楽しめる“実”の計4種類。
なお、DprimeLabの第二弾として、(1)伝統技術×データで共創する最高のグラス・酒器等の開発、(2)ロスフラワー×データで創る癒しのオフィスアイテム開発――の2つのプロジェクトを10月14日より開始する。
今後も三菱UFJ信託銀行は、信託機能と新しいテクノロジーの積極的な活用を通じて、さまざまな社会課題の解決に貢献していくとしている。