さぁどうなる、入国規制撤廃の日本:為替頼みは円高に振れて逆回転

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10月11日から日本への入国規制が撤廃されます。外国人にとって最大の入国障壁の一つだった査証の取得が無くなったことで今後、人事往来は極めて活発化するとみています。

今年9月7日までは入国に際してPCR検査で陰性証明が必要でした。半年ぐらい前はそれでも様々な国が入国規制でそれを要求していたこともあり、クリニックなど旅行用のPCR検査会場ではそれなりに混みあっていましたが、今年の夏には閑散としていたというのが実情。誰のためにPCR検査会場を開けているのと言えば日本のため、という感じでした。

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思い出してみれば入国してもホテルで隔離され、公共機関の乗り物には乗れないという扱いだった頃からすれば格段の改善、そしてようやく入国が自由になったとなれば私としては安堵であります。先週、日本に入国した際も前回に比べてはるかにスムーズとなりました。4月に来た際には成田空港でもPCR検査があり、その結果を待つのに300人3時間待ちだったのです。

私の顧客のアメリカ人もこの吉報を聞きつけ来月初旬から日本に3か月来ます。「この時を楽しみにしていた」と嬉しそうに語ります。先日はお客さんのイタリア人に「初来日してどうですか?」と聞けば「ラーメン最高!今は自分の住んでいる周りから少しずつ探検していて行動範囲を広げているところ」とワクワク感を見せてくれました。

とは言え、どうも日本人は必ずしもこの状況を手放しで喜んでいないようです。22年3月の調査なので現在と多少違うと思いますが、56%の日本人が「外国人に(できれば)来てほしくない」と思っていると答えています。パンデミック前は「外国人さまさま」という感じで報道でも日本人より観光地をよく知っているとか地方経済の復興に援軍などと褒めちぎっていたのを考えると不思議なものです。

今後、コロナ第8波などが来ないことを前提にすれば日本人のマインドも確実に変わっていくと思いますが、改めて保守的な性格を見せつけました。昨日のマスクの話ではありませんが、清潔好きの日本人が空気感染するぐらいの抵抗を示しているようにも見えます。

ある研究によると日本人のコミュニケーション文化は目を使うが欧米は口である、だから日本人はマスクを着け続けることに抵抗がない、と述べています。その象徴が絵文字にある、とされます。なるほど確かにそうかもしれません。欧米人はもともとマスクが大嫌いですがそれはその奥に隠される本心が見えないのが怖いのだと思います。Zoomなどオンラインミーティングが急速普及したのもマスクを取って会話するためのものだったと私は考えています。しかしながら日本人とZoomすると画面の向こうでもマスク姿なのでこれでは電話で話すのと変わらないと思ったこともあります。

個人的には経済的に前向きの影響は大きいと思います。今回、スーパーマーケットなどで買い物をしていて思ったのはあまりの安さに驚愕してどれも欲しくなった点でしょうか?中にはカナダで500円ぐらいする同じ商品が日本なら350円の値札で思わず買い物かごに入れてしまいました。旅行、飲食などこれから大きく伸びることでしょう。それに合わせて景気の下支え感が出てくるとみています。

ところで円相場が145円台となっていますが、私の見方はそろそろピークだと感じています。つまり、1989年のレベルを更新するかしないかで今後、円高に振れていく逆回転が始まるとみています。何故か?これは超長期のチャートを見ていればわかりやすいのですが、71年のニクソンショックまで円が安すぎたのです。それでも足りなくて85年にプラザ合意をして更に為替水準が調整されたと考えればわかりやすいでしょう。

日本が高度成長期に貿易でしこたま儲けたのは1㌦360円だったから、これが主因でその間に経済の実力をつけ、その後、内需に強くシフトしてバブル経済が生じたということです。よってプラザ合意で水準訂正したレンジ相場である80円から150円の幅は日米間で本質的変化が起きない限り抜けない、と私は見ています。

するとこの円安海外旅行客ブームも為替頼みの部分は剥離しやすいとみています。せいぜい、今年一杯ではないでしょうか?

とすれば日本人が外国人を受け入れるにはコロナ前とは一工夫しないと誰でも彼でも儲けられる2匹目のドジョウはいないことは気に留める必要があると思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年10月11日の記事より転載させていただきました。