高知県の古民家に泊まってきました。
神奈川在住の友人夫婦から、「高知県の四万十川近くにある、古民家を貸し切りにできる宿へいかないか」とのお誘いを受けた。
高知県、確か四国だったような。
四国という場所は、ライター岸川さん以上にチンプンカンプンでピンとこないのだが、以前にもそこに泊まったことのある友人の話によると、その古民家には五右衛門風呂やら囲炉裏やらが備わっているそうで、どう考えても楽しそうだ。
囲炉裏でやってみたいことがあるし、ちょっといってこようかな。
※2006年11月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
四国って遠いんですね
古民家に泊まると最初聞いたとき、「公民館」と聞き間違え、なんで高知県までいって公民館に泊まらなければいけないんだろうと不思議に思った。
そんな古民家、どこにあるのかなあとの地図検索で調べたら、ただでさえ遠い四国の中でも、さらに東京から一番遠い場所だった。
遠い。
ぱっと見た限りで東京から1000キロくらい離れている。
しかし遠いといっても所詮日本、飛行機使えばすぐ着くだろう。
でも今回の旅は全行程が車だ。
仕事帰りにそのまま神奈川の友人宅に集合し、そこから大人6人乗り込んだ車は、夜の高速道路を西へ西へと延々進む。
今回のメンバーのうち、4人は数年前に目的地である古民家に泊まったことがあり、その時も車でいったそうだ。元気な人達だ。
ちなみに、参加者全員、車の免許を持っているのだが、車の保険の関係で、運転できるのは年長者の二人だけ。
なので若輩者の私は後部座席でうたた寝だ。
ごめんなさい。
四万十川到着
神奈川を出てから実に14時間、ようやく高知県は四万十川に到着。遠かった。
14時間もあれば、飛行機でアメリカでもヨーロッパでも世界中の大抵の場所にいけるけれど、我々一行は14時間かけて未だ日本だ。
日本って自分が思っていたより広いや。
まだ宿のチェックインまで時間があったので、四万十川に掛かる沈下橋という、増水すると川に沈む橋のたもとで一休み、というか一遊びする。
川の水が冷たい
今回四国にいったのは九月末で、もう川の水温もだいぶ下がっていたのだが、ここまで運転をして疲れ切っているはずのKさんが、「四万十川まで来て川に入らなかったら負け!」とばかりに、俺は泳ぐと言い出した。
私は水が冷たいとかいう以前にカナヅチなので、とりあえず足だけ四万十川の清流に浸かってみた。
やっぱり冷たいって。
しかし、さすが四万十川、踏み入れた私の足に、小魚がたくさん集まってきた。
おお、これがクレオパトラが愛用したというドクターフィッシュというやつか。
「小魚が集まってきて楽しいね!」と、同行者達に同意を求めたら、「いや、集まってこないよ。魚は逃げるでしょ、普通。」と全面否定された。
魚が集まってくるのは、どうやら私だけらしい。私の足からは、そういうフェロモンがでているのだろうか。今後は、サメのいる海にはいかないようにしよう。真っ先に食われそうだ。
古民家に到着
川で遊んでいるうちにチェックインの時間になったので、これから3泊4日お世話になる古民家へと向かう。
四万十川沿いに走る国道から脇道に入り、少し坂道を登ったところで車が止まった。
「ほら!あれあれ!」と、数年前にこの宿に泊まったことがある同行者が指さす方を見ると、丘の上に一件の民家がドーンと建っていた。
なるほど、古い民家だ。略して古民家。
重そうな瓦屋根は貫禄充分。築何年なんだろう。なんだか楽しくなってきた。
早速、この宿を管理されている方に、この古民家の使い方を案内していただく。
この古民家、素晴らしい。
ただ古民家そのままなのではなく、トイレが水洗洋式だったり、風呂は五右衛門風呂だけれどガス給湯器もついていたり、クーラーがついていたりと、古民家なのに誰でも快適に過ごせる宿になっている。
不便さと便利さのバランスがいい。すごい気に入った。
五右衛門風呂を沸かそう
宿に荷物を置いて、また四万十川に戻って遊んで、日が暮れたので宿に戻ってきた。
川遊びで冷え切った体を温めるために、早速お風呂の準備をする。もちろん蛇口を捻ればガス給湯器からの熱いお湯もでるんだけれど、ここはせっかくなので五右衛門風呂にチャレンジだ。
鉄製の風呂釜にジャブジャブと水を溜めたら、裏に廻って火を熾す。
薪で風呂を沸かすというと、昔見た「北の国から」で、ジュン君がうまく火をつけられずに父親に怒らるというイメージがあるのだが、私にできるのだろうか。
とりあえず、チェックインの時に管理人さんに習ったように、新聞紙、小枝の束、細めの薪、太い薪の順に積み上げる。
マッチを擦って火をつけ、新聞紙に点火。
あ、もう燃えた。
ここ数日の晴天で薪が乾いていたのがよかったのか、マッチ一本であっさりと火がついた。
私が学生時代に住んでいたアパートのバランス釜より全然火付きがいい。
すごいぞ五右衛門風呂。
なんだ、風呂沸かし、楽しいじゃないか。
真冬の北海道で沸かせる自信はないけれど、秋の高知だったら全然余裕。個人的には古民家における共同生活の中で一番楽しい仕事だ。
別に火を見守っている必要もないんだけれど、ついボーッと火を見てしまう。
風呂を沸かすのに、いったいどれくらいの量の薪が必要なんだろうと思っていたのだが、薪を追加したのはたった一回だけだった。
わずか5本の薪で風呂釜一杯のお湯が沸いてしまった。思っていた以上に全然熱効率がいい。凄いぞ五右衛門。
五右衛門風呂に入ろう
風呂が沸いたら、まず風呂釜の外でジャブジャブと体を洗って汚れを落とす。
風呂の蓋を開け、お湯をよくかき混ぜて温度を確かめたら、風呂釜に落とし蓋みたいな木の板を浮かべて、それを踏みつけながら風呂に入る。
木の板にけっこうな浮力があって、なかなかバランスが難しくてひっくり返りそうになる。
この板を忘れると、薪の火で熱せられた風呂釜の底で、アチーッと火傷をして、「さすが五右衛門風呂だな」と唸ることになるらしい。
五右衛門風呂、すごい気持ちいい。
薪の遠赤外線効果か、体の芯までホカホカしてくる。
そして水の質がいいからだろうか、風呂のお湯がとても柔らかい。
14時間も車に揺られてきて、疲れ切った体に五右衛門風呂、最高。
無意識に、「う~、極楽~、極楽~」とつぶやいてしまった。
なんだか初めてきたところなのに、昔からここに住んでるような気がしてきた。
囲炉裏で晩ご飯
風呂にゆっくりと入っている間に、もう夕飯が用意されていた。
せっかく囲炉裏があるのだから、難しい料理を作る必要はないだろうと、野菜直売所で買った地元の野菜を中心に、スーパーで買った太刀魚やじゃこ天、管理人さんにもらった四万十川の特大テナガエビなどを、ただ炭火で焼く。
いっぱい食べて、いっぱい飲んで、気がついたら寝ていた。
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古民家の朝ご飯
朝、目覚ましに頼らずに自力で起きた。疲れた疲れたとかいいながらも寝坊をしなかったのは、五右衛門風呂が疲れをとってくれたからだろうか。
いや、昨日の車中で延々寝ていたからか。
外に出ると、見事な青空が広がっていた。どうやら今回の旅行中は天気に恵まれそうだ。
そういえば、管理人さんが敷地内の野菜は好きなだけ食べていいといっていたので、畑にいって胡瓜を一本いただいた。
胡瓜を囓りながらの散歩から帰ってきたら、朝ご飯が用意されていた。素晴らしい。
本日のメニューは、ご飯、テナガエビのみそ汁、目玉焼き、もぎたて胡瓜、「ひしお」という甘い味噌。
普段はほとんど朝飯を食べないんだけれど、今日は若干二日酔いなのに全然美味しく食べられた。
どうしよう、四国二日目にして、もう東京に帰るのがちょっとイヤになってきた。
古民家で過ごす毎日
3泊4日の高知滞在中は、ほとんど毎日同じスケジュールだった。
朝起きて飯を食べ、昼は川でチャプチャプと日が暮れるまで遊び惚け、夜になると風呂に入って、囲炉裏に集まって飯を食い酒を飲む。
なんだろう。この宿題を放棄した夏休みの小学生みたいな毎日は。毎日酒を飲んでいる分、小学生よりタチが悪いか。
せっかく四国まで来たのに、どこか名店にいって夕飯を食べるといったことが一回も無かった。
毎日自炊。
食べたいものを囲炉裏に並べて焼き、ラストオーダーの時間を気にせず酒を飲む。
周囲に人が住んでいないような田舎なので、夜中にデタラメなギターを弾いても怒られない。
酔い覚ましに外へ出れば天の川が輝き、眠くなったら寝ればいい。
わざわざ店にいく理由が見つからないや。
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囲炉裏で芋煮
今回の旅行中、とても料理上手な方がいたので、私は一切の料理をしなかったのだが、囲炉裏を使って一つだけ作りたい料理があった。
それは山形名物の芋煮。
山形に住んでいた頃は、秋になると毎週のように河原で食べていた芋煮だが、あれはネイティブの山形県人が率先して作るので、埼玉出身の私は自分で作ったことがないのだ。
宿泊先に囲炉裏があると聞いて、これは初芋煮作りのチャンスだなと。一回作ってみたかったんだよ。
ちなみにここ四国でも秋に河原で里芋を煮る文化があり、「芋炊き」というらしい。
芋煮で一番大切な材料である里芋は 、管理人さんに「マムシが出るかもしれないから気をつけて!」といわれた裏の畑に植えてあるので、長靴を履いて命懸けで芋堀りにいってくる。
マムシにビクビクしながら芋畑に潜入。個人的にはマムシも怖いが芋虫も怖い。
里芋の周りにマムシも芋虫もいないことを確認し、茎をぐっと掴んで思いっきり引っ張ると、コロンコロンとした美味しそうな里芋が収穫できた。
ついでに小さいながらも薩摩芋を収穫。これは焼き芋にして食べよう。
芋煮の作り方は地方によっていろいろあるけれど、私が食べ慣れているのは、牛肉、里芋がメインで醤油味のタイプ。
里芋、牛肉、下茹でした蒟蒻を、水、酒、鰹だし、砂糖、醤油で煮込む。ここで入れた醤油が濃口醤油ではなく、ヒガシマルの甘いさしみ醤油だったので、なんとなく不安になって味噌を少しいれてみた。
仕上げに葱と舞茸を追加してさらに一煮立ちさせたら完成だ。
芋煮の味付けに自信はまったくないのだが、この囲炉裏に鉄鍋っていうのが絵的にどうにもうまそうだ。
できた芋煮を食べてみたら、やはり使っている調味料が山形のものと違うので、明らかに別物の味付けになっていたが、参加メンバー全員が山形の芋煮を食べたこと無かったので、どうにかごまかし通せた。
とりあえず、とれたての里芋がねっとりしてうまい。
地方の名物料理っていうのは、誰も食べたことがなければ、結構雰囲気と勢いで納得させることができるもんだなと思った。
次は秋田出身だと言い張って、きりたんぽ鍋でもつくってみよう。
この旅の最終日の夜、自分の手をみて、もう秋だというのに見事に日焼けをしていることに気がついた。
どうやら自分が思っていた以上に遊び惚けたみたいだ。
私はここに住むべきだろうか
古民家に泊まってみて、正直なところ、あと4年くらい東京に帰りたくなかった。
四万十川は綺麗だし、五右衛門風呂は暖まるし、囲炉裏は楽しいし、ご飯は美味しいし。
でも、今の時期は暑くも寒くもない一番いい季節で、さらに終日天候に恵まれたという最高の条件がそろった上で、管理人さんの心遣いが行き届いた古民家に泊まったからこそ、これだけ楽しかったんだろうなとも思う。
とりあえず、もうしばらくは東京で暮らします。
あと、来年からは1000キロ以上離れた場所に行く際は、飛行機にしようと思います。