手作りカラータイマー
言葉の話さない宇宙人であるウルトラマンが唯一我々に表現できることは、自分がピンチであることだ。ピンチのときにはカラータイマーがピコンピコンと赤く点滅する。
「自分がピンチである」なんてことは日常生活でもアピールしづらいわけだが、もし人間にもカラータイマーがあったらどうだろうか。誰かが自分のピンチを察して助けてくれるのではないだろうか。助けてくれたらいいな。
実際どうなのか、試してみたいと思う。
※2006年11月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
設計図のない手作りカラータイマー
そういうわけでさっそくカラータイマーを手作りしたいと思う。何をもって正しいカラータイマーとするのか分からないので、手探り状態である。
まず、カラータイマーというと、ピンチのときに赤くピコンピコン点滅するだけような感じがある。ところがピンチではないときは、青く点灯している。
なので始めは赤と青のLEDを使って、ピンチのときとそうでないときで明かりの色を変えられるようにしようと思った。試しに買ってみると、LEDの明かりはピンポイントで鋭い。
これを使ってカラータイマー全体を光るようにすると、これと同じLEDをたくさん買う必要がありそうだ。
翻って、もっと安価な電球。
全体をピカーっと明るくするようなやわらかくて強い光。色を変えることはできないが、電球なら何個かまとめれば充分な明かりが得られるので、こちらのほうがよさそうだ。
というわけで、電球を紙粘土の土台に5個埋め込み、赤いガシャポンのカプセルをかぶせます。
このままだと電球の明かりが外からはっきり見えすぎるので、赤いセロファンを被せる。そして、半球の縁の部分に銀紙を張ってタイマー部分は完成。
振り返ってみると、つまり、材料は、
- 電球
- 紙粘土
- カプセル
- セロファン
- 銀紙
となっている。
このチープな材料郡を眺めてみると、ノッポさんかワクワクさんにでもなった気分である。
あとは電池やら配線やらに四苦八苦しながら、ようやく全体が完成だ。
それでは実際にカラータイマーを付けてみようと思う。
カラータイマーでピンチをアピールする
カラータイマーを付けて、でかけてみよう。
外はすっかり寒くなり、高架鉄道である埼京線のホームは風がびゅうびゅう吹いて凍えそうだ。個人的にはものすごくピンチである。
暖をとるために、自動販売機の梅昆布茶を飲もう。
しかし、ちょうどそのとき電車が来てしまった。
運命とは時として残酷である。
ペットボトルに入った冷たい飲み物を買っていれば問題なく電車に乗っていたであろうが、アツアツの梅こぶ茶の入った紙コップを持っては乗れない。電車走行時における不意の振動でこぼしてしまったら大変だ。
急いで飲まなければ。半分くらい飲めば、どんなにゆれてもこぼすことは無いはずだ。早くしないと電車に乗れない!
熱い。飲めない。そして電車は行ってしまった。
このように、ピンチというものは我々人間のさりげない日常の中に潜んでいて、カラータイマーはそれをうまくアピールしてくれるのである。
1日過ごしてみただけでも以上のようなピンチに陥るのだ。カラータイマーも光りっぱなしである。
さらに、この日はデイリーポータルZの企画会議が行われたので、出席した。今回実はぜひともカラータイマーにピンチをアピールしてもらわなければ困る事情があった。
とにかくピンチなことをカラータイマーでアピール
電車に乗って、某所レンタル会議室までやってきた。皆さん真剣に今後の自分の記事について様々なアイデアを発表していらっしゃる。
何回も会議に出席してぼくが思うのは、皆さん、おもしろいアイデアをたくさん思いつきすぎだということである。実現可能か否かはありつつも、その企画案のひとつひとつが素晴らしいアイデアで満ち溢れているのである。
対するぼくは、おもしろいことが全然思いつかない。特に、今回はなんとネタ案を1つも持ってきていない。
つまり、超ピンチなのである。
隣に座るざんはわ石川さんの発表が終わると、次はぼくの番だ。どうしよう。
静かにネタを考えてきていないことを打ち明けると、あたりに気まずい空気が走る。みんなが素晴らしいネタを持ち寄る中で、ぼくだけが何もないだなんて。
皆さん、内心イライラしているのではないだろうか。
活気ある会議のテンションを下げてしまってとても申し訳ない。何とかならないものかと、ぼくは誠心誠意カラータイマーを光らせて、自分がピンチだということをアピールした。
さらに、カラータイマーを光らせるだけでなく、言葉でもアピールしてみた。
すると少しばかり場が盛り上がった。ネタが無いという事実は変わらないが、状況は良くなったと言えるだろう。
こういう流れが作り出せたのも、カラータイマーのおかげであろうか。結局、今日はもう仕方ないので、ひとまず会議を終えて、飲みに行く運びとなった。
止まないカラータイマー
会議の後、歩いて店まで移動した。
駅近くにある、居酒屋チェーン店の入ったビルについた。店まではエレベータで移動する。人数が多い、みんな入れるだろうか。
置いて行かれてしまった。
エレベータはぎゅうぎゅうだったのでしかたないか。ここではカラータイマーは光らせる必要はないだろう。そう思って、階段を上り彼らの後を追うことにした。
しかし席についてみると、すでに飲み会は始まろうとしていたのであった。ところがまだぼくの飲み物が来ていない。 カラータイマーもピカピカと光るわけだが、とりあえずエアビールで乾杯をしておく。
カラータイマーとともに1日過ごしてみたが、結局カラータイマーそのものでピンチが解決するということはなかった。
あんまり役に立たないカラータイマー
結局ピンチはあまりアピールできない。これが結論だ。
ウルトラマンはピンチになるとカラータイマーが赤く光るかもしれないが、人間は本当にピンチだったら顔色が悪くなったり、声に元気が無くなったり、熱を出したりする。つまり人間がカラータイマーを付けて光らせたとしても、そんなにピンチのように見えないのだ。
でも軽いピンチのときにカラータイマーが光ると、その状況自体がおもしろくなって過度な危機感がなくなるので良いと思います。