「五木そば……」。店の中で、その蕎麦を手に取り、私はふと考えた。五木といえば演歌歌手「五木ひろし」さんではなく、私が真っ先に思い出したのは『五木の子守唄』。熊本県に伝わる子守唄であり、なぜ私が『五木の子守唄』を知ったのかは自分のことながら忘れているが、とにかく五木=熊本なのだ。
ちなみに先述の「五木ひろし」さんは福井県出身であり熊本県とは無関係。しかしながら、『風の子守唄』や『おふくろの子守唄』を歌っていたと五木ひろしHPのディスコグラフィに書いてあった。やはりチラつく「子守唄」。となると、こちらの「五木そば」と熊本の関係は? パケ裏を確認すると──
製造者「五木食品株式会社」の住所は熊本県〜! しかも、「五木」のロゴマークが子供をあやしているっぽい絵柄(子守り娘)なので『五木の子守唄』でビンゴだろう。
いや〜、こういう「もしかして」が当たると嬉しいものだ。日常の中にある小さな幸せというか……。それはさておき、さておいて──
デカい鍋にタップリのお湯を沸かし……
約5分ゆでたら……
ハイ完成。
して、そのお味は──
無垢、というか、素直、というか、優しいというか。食塩がないことから感じる “そば本来の味”。食べている最中の衝撃は少ないが、食べ終えてから「美味かったな……」と思い出す、いわば「あと効きの蕎麦」とでも言おうか。
「家そば」か「外そば」かなら、ギリギリでの外判定。素朴な感じの外である。温でも冷(ひや)イケそうだが、なんとなく雰囲気的に、温なら「山菜そば」や「きのこそば」、冷なら「冷やしきのこ」なんて最高かも。
ちなみに話は脱線するが、数ある子守唄の中でも私が最も好きなのは、京都に伝わる『竹田の子守唄』だ。せっかくなので調べてみると、『五木の子守唄』と『竹田の子守唄』には共通する歌詞があるという。
それが「盆から先」という部分。お盆を少し過ぎた8月中旬を指す言葉らしいが、今もギリギリ “盆から先” なような気もする。
冷が美味しい夏はもう終わりそうだが、雪もちらつく冬はまだ先。冷も温も楽しめる、秋も蕎麦も楽しみたい。
執筆:GO羽鳥
Photo:RocketNews24