自動調理自販機のYo-Kai Express、一風堂らと業務・資本提携–小型モデルの展開も

CNET Japan

 Yo-Kai Expressは9月1日、一風堂を展開する力の源ホールディングスおよびテーブルマークを傘下に持つ日本たばこ産業(JT)と業務提携に加え、資本提携をしたと発表した。


日本たばこ産業 執行役員 食品事業担当の古川博政氏、力の源ホールディングス 取締役CSOの山根智之氏、Yo-Kai Express CEO兼創業者のAndy Lin氏、Yo-Kai Express Japan General Managerの土屋圭司氏

 Yo-Kai Expressは、2016年創業のシリコンバレーのフードテックベンチャーだ。最速90秒で温かい食事を24時間コンタクトレスで提供できる、自販機型の自動調理ソリューションを展開している。

 メニューごとに調理パラメーターを設定できるので、一つの自販機でラーメンからうどん、丼モノといった異なる種類の食品を調理できる。また、すべてクラウドと連携しており、モバイル端末から在庫管理情報や値段のダイナミック解析、需要測定も可能という。


米国ではラーメンからデザートまで、幅広くメニューを展開している

 Yo-Kai Express CEO兼創業者のAndy Lin(アンディ・リン)氏は、Yo-Kai Expressのビジョンについて「いつでもどこでも、アツアツの食事をお届けすること。レストランパートナーと弊社のテクノロジーを組み合わせることによりグローバルプラットフォームを作っていきたい」と語った。


さまざまな問題により、日米で24時間アツアツのおいしい食事を食べることは難しくなっている

 日本でも2022年春から羽田空港第2ターミナル、首都高芝浦パーキングエリア、JR東日本 東京駅(期間限定)を皮切りに本格展開しており、好評を得ているという。

 しかしながら、当初は不具合があり、せっかく行ったのに食べられなかったという声もあった。「ご迷惑をおかけしたこともあるが、すべて不具合を解消した新モデルを今月から投入している」(Yo-Kai Express Japan General Managerの土屋圭司氏)


半熟たまごが入った「一風堂博多とんこつラーメン」(税込980円)

 4月に発表した「一風堂博多とんこつラーメン」と「IPPUDO プラントベース(豚骨風)ラーメン」の販売を正式にスタート。冷凍自販機では提供が難しいとされていたゆで卵が、博多とんこつラーメンにはトッピングされている。

 また、今秋には力の源グループによる「善光寺 Kamo Soba」のメニューとして登場予定だ。

 力の源ホールディングス 取締役CSOの山根智之氏は、「ラーメン屋の命は温度。有田焼の特製どんぶりを使うなどして、お客様にお出しする時のラーメンの温度はできるだけ高く保とうとしている。2年前のYo-Kai Expressは、この温度の再現が難しく、満足ができる基準に達せなかった。しかし、今は何度も改善が加わり、今となっては熱すぎるほどの温度が再現できている。自信を持って店のクオリティにも勝るとも劣らない商品が出せるだろうというところまで追いついてきた」と語った。


グローバルで展開しており、「一風堂」の屋号を冠した店は日本国外のほうが多い

 しかしながら、実現までには苦労もあったという。麺のスープは通常、水分と油がくっつき白濁した“乳化”の状態にあるが、加熱の工程で分離してしまったという。また、半熟卵の状態で仕上げることにも苦労し、「うちだけの技術ではないが、(できたときは)これを世界中でやりたいとエキサイティングした」(山根氏)と振り返った。

 2022年9月現在、じつは一風堂という屋号を冠した店は日本国外のほうが多いのだという。海外で展開をしていくうちに、豚が食べられない、あるいは動物性を摂取しないという人々に巡り会い、プラントベースの製品を開発したという。


一風堂とテーブルマークの新メニュー

 このほか、JTが傘下に持つ、テーブルマークの主力商品”冷凍うどん”を活用した「テーブルマーク カレーうどん」「テーブルマーク きつねうどん」「テーブルマーク 肉うどん」の開発も進めており、今冬の販売予定だ。秒単位での加熱時間の調整、容器の構造に合わせた具材の選定、Yo-Kai Express専用つゆの配合など細部にまでこだわった。

 JTは、1990年より食品事業を立ち上げ、現在は加工食品事業としてグループ会社を通じ、サンジェルマンを中心とした「ベーカーリー事業」、テーブルマークブランドの「冷食・常温事業」、「調味料事業」に取り組んでいる。


JTの加工食品事業

 日本たばこ産業 執行役員 食品事業担当の古川博政氏は、「そうした中で、新しい食の価値、価値創造に取り組むなかで、フードテックにも大きな期待をしている。食品業界は古い取引慣行があると思われがちだが、川上・川中・川下を取り払った上でのビジネス展開、お客様への価値提供ができる。積極的にデジタルを取り入れながら、食を通じた“うれしさ、たのしさ”を提供していきたい」と語った。

 なお、自販機の設置場所も拡大しており、首都高速道路の芝浦PA(上り)に続き、3つのサービスエリア(加平PA(下り)、平和島PA(下り)、南池袋PA(上り))に追加設置されます。また、NTTデータのデータセンターなど24時間運用の施設やソフトバンクロボティクスのディストリビューションセンターでの導入も今秋に予定しているという。


日本における設置場所の拡大

 無人状態で安全かつ衛生的に、熱々の食事を迅速に24時間提供できることから、空港や駅構内のユーザー向けサービスに止まらず、早朝や深夜等に変則的なシフトで働く従業員を抱える企業を中心に、職場環境向上や福利厚生施策の一つとしてYo-Kai Expressのソリューションが活用され始めており、職場環境の向上手段としての導入が増えると見込んでいる。

 また、さらに小さいデスクトップ型や家庭用モデルも今後日本で展開していくという。今の機械はサイズが大きいため、設置ができる場所を選ぶのが課題だ。調理をするところだけを切り出して、冷凍庫は別にしたものになる。

 デスクトップ型は、コンビニのバリスタロボットぐらいのもので、最終的なデザインを仕上げ、プロトタイプをつくっているという。「2023年の早い時期にはマーケットに入れたい」と明かした。


今月中にJR東日本とも発表を予定しているという

Source