広告ブロッカーを手がけるAdGuardが2022年8月30日に、Googleが打ち出したChromeの広告ブロックの新方式である「Manifest V3」に対応した「AdGuard Browser extension V3」を発表しました。Manifest V3で構築された広告ブロッカーとしては、これが世界で初めてとされています。
AdGuard publishes the world’s first ad blocker built on Manifest V3
https://adguard.com/en/blog/adguard-mv3.html
AdGuard launches Manifest V3 compatible ad-blocker for Chrome – gHacks Tech News
https://www.ghacks.net/2022/08/30/adguard-launches-manifest-v3-compatible-ad-blocker-for-chrome/
拡張機能はChromeの利便性を大きく向上させる一方で、セキュリティの低下や不正なアフィリエイトコードの挿入といった被害をもたらすこともあるため、Googleは2023年1月を目途に拡張機能の動作を制限するManifest V3への移行を進めています。これを受けて、uBlock Originの開発者であるRaymond Hill氏が開発の中止を示唆するなど、広告ブロッカーユーザーの間ではManifest V3への懸念が広がりつつあります。
1. Using the dev build helps a lot, see https://t.co/trtAPHSuoi — ideally that sort of regression would be spotted before publishing a stable release.
2. No plan, it’s a personal project worked on as a hobby — MV3 undermines uBO’s capabilities and a burden to rewrite all.
— R. Hill (@gorhill)
そうした中、AdGuardは8月30日に公式ブログを更新し、Manifest V3に対応した世界初の広告ブロッカーである「AdGuard Browser extension V3」をリリースしたことを発表しました。発表時点でのバージョンは「0.3.11」とまだ完成版ではないという位置づけですが、Chromeウェブストアでの配布が開始されており、誰でもChromeにインストールすることが可能です。
AdGuard Browser Extension v3 – Chrome ウェブストア
https://chrome.google.com/webstore/detail/adguard-adblocker-mv3-exp/apjcbfpjihpedihablmalmbbhjpklbdf
AdGuardによると、Manifest V3の主な問題の1つは「拡張機能全体で最大33万ルール」「拡張機能1つに3万ルールの最低保証」という制限が課されている点だとのこと。これは大きな数字に思えますが、例えばuBlock Originはインストールした時点で8万435件のネットワークフィルターと4万5243件の整形フィルターを使用しており、デフォルトで3万件をオーバーしています。さらに、外部で作成された別のフィルターをサブスクリプションしたり、自分で作成したマイフィルターを追加したりすれば、1つの広告ブロッカーだけで容易に33万件に達してしまいます。
これに対応するため、Manifest V3対応版のAdGuardでは制限によって拡張機能がサポートするルールの数を減らさざるを得なくなった場合に、それをユーザーに警告する機能が追加されています。
また、どのフィルターを有効にしてどのフィルターを無効にしたのかのリストも表示されるようになりました。
上記の制限とは別に、ユーザーが追加できる独自のルールには5000件の制限があり、それを超過した場合は以下のように表示されます。
AdGuard Browser extension V3の登場を取り上げたIT系ニュースサイトのGhacksは、「新しいAdGuardは、Manifest V3の下でもコンテンツブロッカーが存在しうることを証明しました」と評価しつつも、「Manifest V2時代のコンテンツブロッカーと比べるとあまり強力ではない可能性があります。特に、ルール制限に達すると拡張機能が動作しなくなる危険性があるのは面倒です。ほとんどのChromeユーザーは、Manifest V3が標準になり次第、信頼できる保護機能を求めて他のブラウザへの乗り換えを希望するようになるかもしれません」とコメントしました。
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