インスタグラムはユーザーの怒りを買っている。ファンたちはその果てしない変更に不満を募らせ、リールズに抵抗している。そんなインスタグラムに代わって主流になったのがTikTokだ。何百万人ものフォロワーを抱え、ブランドにビジネスをもたらしてくれるインフルエンサーであふれている。
投稿に制限があるビーリアル
そしていま、フランスのソーシャルメディアアプリ、ビーリアル(Be Real)の出番がやってきた。ビーリアルではユーザーには1日1回、投稿するのに2分間の時間枠が与えられる。2分以内に投稿しないと「遅れた」とラベル付けされて表示される。また、自分が投稿しないと他人の投稿を見ることはできない。ビーリアルの投稿そのものは基本的にはフロントとバックカメラで撮った画像のコラージュである。投稿者だけが自分の過去の投稿を見ることでき、フォロワー数は表示されない。
Advertisement
ビーリアルの特徴というのは、その名が表すとおり、リアルで素のままであること。つまり、過去10年間にソーシャルメディアアプリで提供されてきたものとは異なっている。
ほかのソーシャルメディアアプリと比べて、ビーリアルでは友人のフィルタリングされていない暮らしぶりが見られ、また私もフィルタリングされていない自分の生活をシェアしている。散らかったアパート、Zoom画面、まったくイケてない角度のセルフィー画像などだ。それでも、ビーリアルに参加したときから、その人気とクールな新しい要素両方の理由からビューティブランドが参入するのは時間の問題だと思っていた。ビーリアルに最初に進出した企業はチポトレ(Chipotle)やデルタ航空(Delta Airlines)など、ビューティ業界以外からであった。
いまは多くのビューティブランドがビーリアルを試しているところである。インビューティプロジェクト(Inn Beauty Project)は数週間前に参入。最新ローンチで、カルト的人気を誇っているリップグレイズ(Lip Glaze)の新フレーバーをローンチの10日前にビーリアルで披露した。
E.l.f.のチャレンジ精神
アーリーアダプターとして知られるE.l.f.は、8月5日、プレスリリースとソーシャルメディアプラットフォームでビーリアルへの参入を発表を発表した。そして、ホーリーハイドレーション(Holy Hydration)スキンケアコレクションからの製品が入った無料トラベルキットのスペシャルコードを最初の150人のフォロワーに進呈した。ビーリアル上でのプレゼンスを確立するという決定について、E.l.f.の最高ブランド責任者のローリー・ラム氏は次のように述べている。「ビーリアルは成長している。Z世代が関与していることや当社の消費者がこのプラットフォームを利用していることもわかっていた。なので、『ブランドとしてありのままでありながらどのようにしてリードして活用できるだろうか?』と自問した。これは新しいフロンティアだ。我々は常に新しいフロンティアを克服してきた。我が社にとってのチャンスだ」。
アカウントの開設前にE.l.fの幹部は同社のクリエイティブエージェンシーであるムーバーズ&シェイカーズ(Movers + Shakers)と朝食ミーティングをして計画を策定した。そして全面参入する前に様子をうかがうことにした。「当社の総合的な戦略を考慮せずに、『やってみよう。我々のコミュニティとつながろう』というアプローチだった、とラム氏。「使ってみたらとても簡単でシンプルなのがわかった。(まずは)新製品のティーザー宣伝をして、ビーリアルに慣れた。これからは(当社の)職場の様子も見せていく予定だ」。
ビーリアルのエディトリアルカレンダーを考えているかどうかをラム氏に尋ねてみた。これはビーリアルの本質に反しているので、計画するのは容易ではないだろうと思われる。「(予定されたコンテンツと予定外のコンテンツが)混在するだろうと思う。我々が行っていることを見せられるようにしたい。たとえば、売れ筋のリップスティックのドロップをするとしたら、熱烈なファンに披露する準備をする。スマホをそばに置いて(製品を)スタジオに準備して、通知のピンという音を待つ。そのほかにも(準備せずに)その瞬間ありのままを投稿することもあるだろう。我々は皆とコミュニケーションを取りたいのだ」。
舞台裏の様子を見せたいインビューティのアプローチ
一方、インビューティプロジェクトのマーケティングディレクター、エリカ・リヴォティ氏は、ビーリアルの瞬時的な性質ゆえに、ほかのプラットフォームと比べて自社ブランドのもっとも忠実なフォロワーとより多くの情報を共有できると述べている。「ビーリアルでの主な目標はインビューティで起こっていることすべての舞台裏を共有することであり、主に新製品のローンチと製品開発にフォーカスするつもりだ。インスタグラムやTiktokで披露したいとは思うが、そうすると永続的すぎる感じがする。ビーリアルでの共有は1週間後や2年後にまた見られるというようなものではない。投稿は消えてしまって、もう見られない。なので、こっそりのぞき見したような感じがする。また、ビーリアルで我々をフォローしてくれている人々にとってはプライベートアクセスのように感じられるだろう」。理論上はビーリアルの投稿のスクリーンショットを撮ることはできるが、ユーザーのプロフィールに移動して過去の投稿を見ることはできない。
インビューティプロジェクトが同社インスタグラムのフォロワー(7.2万人)とTikTokのフォロワー(3.1万人)に対してビーリアルへの進出を伝えたとき、ファンからはビーリアルでも同社をすぐにフォローするという熱烈なメッセージが寄せられたそうだ。
リヴォティ氏は、個人ユーザーと同様、ブランドもビーリアルではフォロワー数やいいね数を四六時中気にしなくてもよく、そのメリットがあると述べている。
ビーリアルを最大限に活用するK18の計画
ソーシャルに精通していることで評判のK18は、ビーリアルを最大限に活用する方法についてもいろいろ試しているところである。これまでのところ、ソーシャルチームのZ世代のメンバーは@k18hairというユーザー名で投稿している。同社は8月13日からフロリダ州オーランドで開催されるビハインド・ザ・チェア(Behind The Chair)ショーへの出展の際にビーリアルのアカウントを正式に発表する予定である。
K18のグローバルマーケティング担当シニアバイスプレジデント、ミシェル・ミラー氏は次のように述べている。「(我々にとって)見極めることがもっとも重要だ。どうすれば(ブランドの)リアルな姿を見せられるのか? それは可能なのか? ビーリアルはブランドが活動するのにふさわしい空間なのか?」。
ミラー氏は、ソーシャルメディア上でのブランドの姿が「リアル」であるという考え方そのものに少々疑問がある点を認めている。つまるところ「ブランドはマーケティングマシンであるというのが基本の考えなのだから」。それでも同氏は、K18がビーリアルのフォロワーコミュニティに価値をもたらす機会があると考えている。「ビーリアルはまだ初期段階にあり、まだ多くのブランドが参入してはいない。それは広告が多くはないということだ。偶然だが、我々は大部分の人が『ビーリアルではブランドやインフルエンサーをフォローしない』と言っているのを知っている。なので、K18にはイノベーションを披露できる機会が多くあると考えている。(たとえば)ポルトガルにいる当社の科学者に1週間アカウントを任せることができる」。
ミラー氏は、現時点ではソーシャルチームがほかのアプリと同じような形でコンテンツカレンダーを設けることは予測していないという。「その週に(我々が投稿する)ビーリアルのコンテンツをレビューすることはないだろう。その代わりに『ビーリアルの雰囲気は?』とか『ビーリアルに投稿したいメッセージは何か?』などと考えることになるだろう」。
TikTokと同様、ビーリアルは、ソーシャルメディアプラットフォーム全体でブランドや個人に期待されている過度に厳選されたフィードやフラットレイ、偽りの完璧さからの継続的なシフトを表している。「プラットフォームとしてのビーリアルは、よりピアツーピア型のコミュニティへ移行しつつあり、成長している」とミラー氏。「その点ではブランドがアーリーアダプターであることは、カルチャーと人とつながるために重要である」。
[原文:K18, E.l.f. and Inn Beauty Project are paving the way for brands on BeReal]
SARA SPRUCH-FEINER(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)