1. 「Trusted Webホワイトペーパーver2.0」を公表――内閣官房デジタル市場競争本部
内閣官房デジタル市場競争本部(座長:村井純慶應義塾大学教授)は、次世代インターネットインフラである「Trusted Web」のアーキテクチャを公表した(内閣官房デジタル市場競争本部)。
2020年10月に「Trusted Web推進協議会」が発足し、2021年3月にホワイトペーパーVer1.0が公表された。その後、ここで示された考え方や構想の具体化、深堀りを図るためユースケース分析やプロトタイプ開発を実施した上で、課題を抽出してきた。これらの結果を踏まえ、「Trusted Webが目指す信頼の姿のさらなる具体化、それを実現するためのアーキテクチャの提示、あるべきガバナンスの検討などを行い、Trusted Webの実現に向けた今後のさらなる道筋を示すものとして、2022年7月にホワイトペーパーVer2.0をとりまとめた」としている。
今回公表された資料の中ではTrusted WebとWeb3との関係にも言及している。「『Web3』は、現状のインターネットやウェブに対する問題意識や、分散型で検証可能な部分を広げることを志向しているという意味での方向性で、Trusted Webと共通するものがあると考えられる」とする一方で、「『Web3』の厳密な定義については様々な見解があり、定義は定まっていないと考えられる」という立場をとっている。その上で、Trusted Webでは「アイデンティティ管理のあり方に重点を置き、技術中立的な取組として進めており、ブロックチェーン技術の活用のみでなく、検証可能性を高める様々な枠組を活用し、組み合わせることにより、Trustのレベルを高めることを目指す」という理念を表明している。
また、今後については、さまざまな分野におけるユースケースの公募、コミュニティの形成、国際標準化機関や国際標準化につながる活動を行う機関への働きかけなどを行い、「ホワイトペーパー3.0」の策定をするとしている。
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2. 2021年度の日本国内の消費者向け電子商取引市場規模は20.7兆円――電子商取引に関する市場調査
経済産業省は2021年度の電子商取引に関する市場調査結果を公表した(経済産業省)。
それによると、国内の消費者向け電子商取引市場規模は20.7兆円(前年19.3兆円、前々年19.4兆円、前年比7.35%増)となっている。コロナ禍以前の2019年度における消費者向け電子商取引市場規模は19.4兆円に対して、翌2020年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響でいったんは市場が停滞したものの、2021年には市場規模を大きく拡大したことになる。
この調査では、その内容を物販系分野、サービス系分野(旅行サービス、飲食サービス、チケット販売、金融サービスなど)、デジタル系分野(電子出版、音楽配信、動画配信、オンラインゲームなど)の3分野に分けて集計していて、成長率が著しいのはデジタル系分野となっている。一方、物販系分野の中で成長率が最も高いのは「食品・飲料・種類」の14.1%となっている。一方、EC化率が最も高いのは「書籍・映像・音楽ソフト」の46.2%となっている。
新型コロナウイルス感染症の拡大により、消費は冷え込んだが、一時的な沈静化をしたのちは居ながらにして必要な物品、サービス、情報を得るということがより積極的に行われているとみられる。今後、物流のキャパシティの拡大などの課題が顕在化するとともに、既存ビジネスへのインパクトもより大きくなっていきそうだ。
その他、企業間の電子商取引、日本・米国・中国の3カ国間における越境電子商取引についても調査が行われているので、詳細は発表資料を参照してほしい。
ニュースソース
- 電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました[経済産業省]
3. ガートナーが「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2022年」を公表
ガートナーは「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2022年」を発表した(Impress Watch)。
「テクノロジハイプサイクル」は「技術の登場から普及までを5つのフェーズで分類し、その技術の現在の位置付けを示す」もので、新たに出現した技術に対して、期待が高まり、そのピークを過ぎると現実的な困難さも認識する「幻滅期」に入り、それを乗り越えることで安定的な普及につながるというシナリオが前提となっている。そして、これは多くの技術のリーダーシップを持つ人たちに参照されてきている。
今回発表されている2022年版では「Web3」「NFT」「ファウンデーションモデル(大規模なAIモデル)」「メタバース」などの位置付けが注目される。「Web3やファウンデーションモデルは、黎明期から過度な期待のピークに差し掛かっており、NFTは過度な期待のピークから幻滅期に近づいている」一方、「ジェネレーティブデザインAIや機械学習コード生成などは黎明期の初期段階で、メタバースもまだ黎明期。スーパーアプリは黎明期をまもなく脱し、過度な期待のピークに近づいている」としている。
それぞれの位置付けについては見地によって印象は異なるだろうが、メディアなどでの報道を見ている限りでは納得感もある。ただし、一つ一つの進展の速度はそれぞれなので、相対的な位置関係は急速に変化する可能性があることも念頭に置いておく必要もある。
ニュースソース
- メタバースやNFTの現在地。ガートナーが’22年版ハイプサイクル[Impress Watch]
4. 2021年度の電子書籍市場規模は5510億円
インプレス総合研究所は2021年度の電子書籍市場規模の推計を発表した(インプレス総合研究所)。
それによると、電子書籍、電子雑誌、電子コミックなど、電子化された出版物の市場は5510億円と推計されるとしている。これは、1年前の2020年度の4821億円から14.3%の増加となっている。そして、2026年度には8000億円の市場に成長するとの予測値も併せて発表している。
この中で注目すべきは電子コミックで、前年度から658億円増加して4660億円と、電子書籍市場全体の84.6%を占める。また、文字もの等(文芸・実用書・写真集等)でも同41億円増加の597億円(同10.8%)、雑誌が同10億円減少の253億円(同4.6%)と成長をしている。
米国市場ではオーディオブックの伸長率が大きく、電子メディア市場の成長を引っ張っているが、日本ではコミックのシェアと成長率が著しい。とりわけ、日本の電子書籍ユーザーの3割が“WEBTOON”という縦スクロールのコミックに対して好意的という結果も公表していて、今後の成長に期待が集まる。また、海賊版対策などが進むことで、正規のコンテンツの需要はさらに上がることも期待できる。
ニュースソース
- 2021年度の市場規模は5510億円、2026年には8000億円市場に―『電子書籍ビジネス調査報告書2022』8月10日発売[インプレス総合研究所]
5. アマゾンが「ルンバ」のアイロボットを買収
アマゾンがロボット掃除機「ルンバ」で知られるアイロボット約17億ドル(約2290億円)で取得すると報じられている(ケータイWatch)。そもそも、アマゾンの倉庫ではルンバのように「タイヤで移動するロボット」を使っていることは知られていて、こうした技術に関心を持ってもおかしくはないのかもしれない(Impress Watch)。しかし、市場では懸念の声もあるようだ。
今後、規制当局の承認が下り、この買収が実現すると、アレクサを通じてルンバを使えるという期待もできるが、「Amazonの主な目的はiRobotのお掃除ロボット『ルンバ』が足(タイヤ?)で稼いだ屋内マップ(間取り図)だろう」(ITmedia)ということだ。ただ、「1企業に個人データが集中することに常に反対しているAmazonの天敵で連邦取引委員会(FTC)委員長のリナ・カーン氏が黙っていないのではないか」という見方もあり、これから一波乱ありそうな雲行きとも言えよう。
ニュースソース
- Amazon、ロボット掃除機「ルンバ」のiRobot買収へ[ケータイWatch]
- Amazonがルンバ買収で手に入れるご家庭の情報は大丈夫? FTCとの戦いが始まるか[ITmedia]
- アマゾンのアイロボット買収は「必然」だった[Impress Watch]