何を目指す内閣改造なのか?

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岸田首相が内閣改造人事を8月10日に行うことが発表され、周辺が急にあわただしくなっています。臨時国会も野党の声に耳を傾けることなく3日で終了させたのは議員の外遊や地元での支援固め、そしてお盆を迎え、ひとまず英気を養うのかと思っていました。岸田首相が内閣改造というカードをその隙間に持ち込んだのはたぶん、参議院選挙直後から内閣改造のタイミングについていくつかあったオプションの一つで「今がベスト」と判断したのでしょう。

令和3年11月10日に発足した第2次岸田内閣 首相官邸HPより

その判断材料はいくつかあると思います。支持率が下がっており、特に共同通信の調査で12ポイントも下げるといったニュースも飛び出したこと、一部の評論家が揶揄していたようにペロシ議長の訪台のニュースが世界で注目される中、日本ではなぜか旧統一教会問題がメディアのメインディッシュとなるほど本件が週刊誌ネタ的に取り上げられていること、そして最後は最大派閥、安倍派の力関係が不明瞭であり、派閥の長の一人が旧統一教会の名称変更当時の文科大臣だったあの下村博文氏であることから求心力がまったくなくなっている点に於いて人事政策上の敵が混乱している今のうちに一気にやるという岸田氏の戦略であったと確信しています。

メディアを見ると「内閣改造、旧統一教会との距離重視 岸田首相が点検指示」(日経)、「首相、来週の内閣改造を表明 閣僚と旧統一教会との関係点検」(産経)、「岸田首相、閣僚の旧統一教会関係『しっかり点検』 内閣改造を明言」(毎日)、「岸田首相 来週にも内閣改造 表明 旧統一教会との関係点検指示」(NHK)とほぼ同じ見出しが並んでいる点が今回の最大の特徴です。

そもそも内閣改造は8月下旬から9月であったのに上記の理由で前倒しになったということはあくまでも岸田政権の周りを自分の方にむいている人で固めるという比較的内向きの改造が想像できます。本来であれば岸田政権発足後、内閣の強み、弱みを分析したうえで弱みは何だったのか、そこから答えが引き出されるものです。が、岸田政権の功績は何か、あるいは国民の不満はなにか、と言われれば案外、パッと出てこない方が多いのではないかと思います。

出だしの「新しい資本主義」からして経済をアセットで見るのか、フローで見るのかそもそもの点で足元が不完全で一部からは強い批判の声が上がっていました。それをかわすかのように突然自分の好きな分野である外交に突っ走ってみるのですが、顔は売ったかもしれませんが成果があったかどうかは別問題です。その間、国内はコロナ第7波、円安局面では鈴木財務大臣と黒田日銀総裁の立ち位置が微妙に違うなどのちぐはぐ感もありました。

私は以前にも指摘したとおり、岸田政権は長くなるけれど好きではありません。理由は行動を起こさないので安倍氏のような批判が起きるネタがないのです。それが「検討使」と言われるゆえんです。多少の反対を押し切ってでも政治家としての信念、そして閣僚という組織力をもって目標に向かっていくことこそ、首相である醍醐味であるはずです。お仲間意識が強い内閣改造となればそれはそれで反岸田、反自民のメディアからはまた強いバッシングが起きるでしょう。

つまり今回の内閣改造はより明白な指針とそれに沿った実務が行える能力を持った戦力を配置すること、これが最大のポイントのはずです。旧統一教会絡みのうわさがある人を絶対に通さないためにフィルターを3度ぐらいかけるのだと思いますが、あまりにもそこに主眼が行くと本来であれば能力があり適任である人材すら振り落とす可能性は気を付けた方がよいでしょう。

報道を見る限り今回の改造は大きなものになるとされます。ただ、既に松野、茂木、麻生、林各氏については留任見込みとなっています。うーん、どうなんでしょうか?例えば松野さんの記者会見はちっとも面白くないですよね。顔の表情がゼロ。ならばAIに原稿を読ませても同じじゃないか、と思います。何を訴えるのか、プレゼンの力を持つ人が官房長官であり、日本のみならず世界の顔となるわけです。

林さんと茂木さんは似たところがあり、共に社交的ではなく、不人気である点でしょう。また岸田さんを含め、その3人が外務大臣経験者で外国大好きであります。その割には岸田政権下で目立った外交成果は思い当たりません。

私が思う岸田人事の最大の弱点は「華がない」点だと思います。誰も踏み込まないので何かあった時の抑え役もいないとも言えます。まぁ、悪く言えば日本のサラリーマンが取締役になって戦略対策をするようなものでエラーが出ないことだけを主眼にしているわけです。

岸田首相は検討するではなく、提案して国民に検討してもらうリーダーとならねばなりません。政権支持率に一喜一憂しているようなそんな小物ぶりでは外交どころか、国内すら抑えが効かないことになるでしょう。頑張ってもらいたいものです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年8月7日の記事より転載させていただきました。