キングジムからテキスト入力に特化したデジタルメモ端末・ポメラの新型モデル「DM250」が7月29日に発売される。
先代モデルのDM200の発売は2016年10月、実に約6年ぶりの新型モデルの登場とあり、従来モデルを使ってきたユーザーはもちろんのこと、DM250ではじめてポメラを知った人も新型には興味津々だろう。
今回は発売に先駆け製品を使う機会を得ることができたので、DM250の試用レポートをお送りする。
従来モデルを踏襲しながら、細部がアップグレードされた新型ポメラ
ポメラの最大の特徴は潔くテキスト入力に特化、最適化されていることだ。
最初期のモデルではキーボードに折りたたみ機構を採用し、持ち運び時にとにかく小さくなる仕組みでノートPCにはないモビリティが売りになっていたが、反面キーボードの打ち心地や画面サイズを犠牲にしているという弱点もあった。
それを改善するように、2012年に登場した先々代モデル「DM100」からは折りたたみキーボードを排し、純粋なクラムシェル型に。
先代モデル「DM200」ではディスプレイサイズを従来の5型台から7型台と大型化することで、キーボードの打ち心地や画面の見やすさを改善し、より快適に文字入力が行なえるように進化してきた。
では、新型となるDM250ではどのような進化があったのか。
DM250は先代のDM200と筐体デザインやサイズに大きな変化はない。ボディカラーはブラックからダークグレーに変更されているが、遠目に見てパッと判別するのは難しいだろう。
外側から見える範囲での大きな変更点は外部接続端子で、DM200のMicroUSBからDM250ではUSB Type-Cに変更されたほか、端子近くに充電状態を示すLEDインジケータが用意された点が、外観で区別できる変更点だ。
また、スペック上のハードウェアの進化点として挙げられるのが充電時間とバッテリ駆動時間だ。充電時間は最長5時間から4時間に短縮、それでいてバッテリ駆動時間は最大18時間から24時間へと伸びている。
見た目の変化に乏しいことにガッカリしたユーザーもいるかもしれないが、USB Type-C端子への変更などは2022年時点のモバイルデバイスらしい正しい進化を遂げたと言っていいだろう。
鍵となるキーボードの使い勝手は?
そしてポメラで最も重要なのがキーボードだ。
DM200同様にキーピッチは約17mm、キーストロークは約1.2mmで、モバイル端末に多いEnterキー近くのキーがハーフサイズになっているような配置にもなっていない、かなりゆとりのあるキーボードを搭載している。
実際にタイピングしてみるとキートップが小さいことに慣れは必要だが、小型のPCによくある打った際にぐにゃっとキーが押し込まれるようなこともなく、スルスルと入力を進めることができる。
筐体の剛性感も高く、キーストロークも極端に浅いわけではないため底打ち感も感じない。この原稿もDM250をカフェに持ちだし書き進めたりもしたのだが、従来モデルよりもタイプ音が静かになったと謳うだけあって、周りのノートPCを使うユーザーのタイプ音と比べてもDM250のタイプ音はがとは感じなかった。
そのほかの使い勝手を見る
筐体は先にも書いた通り、サイズやデザインは先代DM200を踏襲している。
本体色はブラックからダークグレーに変更されているが、これもキーボードのブラックとのコントラストの差をつけることで、タイピングをサポートする目的での変更だ。
質感はマット仕上げで、ThinkPadのような質感と言えばわかりやすいだろう。指紋は目立たないが、本体を持ち上げるなどぎゅっと掴めば触れた跡は残るが酷く汚れて見えたりはしないため、道具としての美しさを感じられる。
クラムシェル型の本体はディスプレイ部が最大で160度まで開くことができるため、膝上など低い位置にポメラを置いてタイピングする場合でもディスプレイが見やすくなっている。
ディスプレイは7型/1,024×600ドットだ。モノクロで表示されるが実際にはカラーディスプレイを白/黒の2色で表示しているためコントラストもハッキリしていて視認性は良好だ。画面は最高輝度では眩しいほどに明るいため、日中の屋外での利用でも問題ない。
設定で明るさは10段階の切り替えが可能なので好みで明るさを変更して使うといいだろう。常用する場合は5~6段目くらいの明るさがちょうどいいと感じた。
日本語入力の基本はそのままに
続いてDM250の「中身」をチェックしていこう。
閉じた状態から画面を開き、実際に文字入力が行なえるようになるまでの時間は約4~5秒ほど。最近はノートPCもスリープからの復帰が早くなったとはいえ、ここまで早く文字入力を行なえるようにはならない。
「さあ書くぞ」という気持ちでPCを開いてから実際に文字が入力できるようになるまでの時間は、そのまま書くモチベーションに繋がると筆者は考えているため、この待たされなさは体験として非常に気持ちいいと感じる。
実際の入力画面もシンプルだ。モノクロ表示のディスプレイには文字入力に必要なもの以外何も表示されていない。キーボードの「Menu」キーを押せば画面上部にメニューバーが表示されるのみだ。
このメニューについてもファイルの保存や読込、文字の検索や置き換えといった基本的なものから、表示・書式の切り替えとして
- フォントの切り替えUD新ゴ/UD黎ミン)
- フォントサイズの変更16/20/24/32/40/48ポイントの6段階で変更可)
- 方眼や罫線の表示、縦書き表示への変更
などが行なえる。
DM200から引き続き日本語入力ソフトウェアとして「ATOK for pomera[Professional」をDM250でも搭載し、メニューから辞書の設定や単語登録といったIME設定を行うことも可能だ。
ATOKの機能としては校正支援機能が強化されているが、これについては詳細な設定などをユーザー側で変更するといったことはできなくなっている。
基本的な部分では、先代のDM200のソフトウェアから大きな変更点はないかな入力ユーザーに好評だった親指シフトの設定なども引き続き対応しているため、従来モデルからDM250へ買い替えた場合に設定項目の変更や機能の有無に戸惑ったりすることはないといえるだろう。
新機能で新たな需要を開拓するDM250
その上でDM250からの目に見える改良点をチェックしていく。
まずは入力画面。ここでは画面下に表示されるバーに「バッテリ残量」と「現在の文字数」が表示されるよう改善された。
テキスト入力に特化しているポメラはなかなか電池が切れないことも強みなのだが、残量を気にせずに使えるスタミナがあることは、同時に充電を忘れがちになる原因にもなる。
また文字数についてもテキスト入力に集中できる分、夢中で書いていると想定していた以上の文字数になっていることも珍しくない。
バッテリ残量や文字数は従来でもメニューから辿っていくことで確認することができたが、一目見てわかるようになったのは嬉しい改善点だろう。
画面に「入力中のテキスト以外は表示したくない」場合は、全画面表示を有効にすればいい。この状態でもメニューボタンを押下すれば画面下のバーが表示されるため、メニューを辿らずともバッテリ残量と文字数を確認することができる。
続いて新機能としてありがたいのが「バックアップ」と「ゴミ箱」だ。
編集中のファイルについてオートでバックアップを作成してくれる機能が備わったことで、作業中に誤って保存してしまった場合やDM250のバッテリが切れてしまった場合、以前のバージョンの復元が行なえるようになっている。
この原稿を書いている最中にも、何度か途中まで書いて保存し、続きを書くも「そうじゃない」と執筆のロールバックが発生しているが、前回の保存時の状態でバックアップが取られていることで「書いているものを消して戻す」ではなく「書いていない状態から手を加える」ことができたのは、かなり便利に感じた。
ゴミ箱についても同様で、誤ってデータを削除しても復元できることはもちろん、没と思って削除した中から必要なものだけ復元させたいときに便利だ。
PCのワープロソフトやテキストエディタにあった機能が、遂にポメラにも搭載されたことでよりテキスト入力の専用機としての完成度が高まったと評価できる。
またキーボードレイアウトは変更することで「US配列」も選べるようになった。
これはハードとしてUS配列の製品が追加されたのではなく、設定からキーレイアウトをUS配列に変更し文字入力できるようにする機能だ。
もちろんそのままではキーの印字はJIS配列のままになるのだが、付属するキートップステッカーを貼ればUS配列のキーボードとして利用することができる。
筆者はもう20年近くUS配列のキーボードユーザーなので、この機能だけでもDM250を外出時の執筆端末として購入しようか前向きに検討したくなっている。
そして外部機器との連携機能も強化された。
新たにスマーフォン向けに「pomera Link」というアプリが提供され、DM250とスマートフォンをWi-Fiで接続することで、DM250に保存されたファイルをスマートフォンへ転送したり、スマートフォンからDM250にファイルを転送することも可能になった。
さらにスマートフォンアプリを介すことでGoogle DriveやOneDriveへテキストファイルをアップロードすることもできるため、PCとの同期もスマートに行なえるように進化した。
従来でもPCとはUSB経由かSDカード経由でデータのやりとりを行なえたり、スマートフォンとはGmailを介すか、QRコードを読み取ってテキストを送り合うようなことも行なえたが、pomera Linkの登場で「スマートフォンでメモを書く」「それをDM250に送り肉付け」「再度pomera Linkを介し、クラウドストレージ経由でPCに送り仕上げ」と、一連のワークフローを確立できるようになったのは喜ばしいことだろう。
DM250は約6年の沈黙を破れる可能性を秘めた1台だ
先代のDM200から、新型のDM250までの6年という期間はかなり長い。
6年間も新型モデルが出ないと人によっては「そんな製品もあったね」と懐かしむこともおかしくはないほどに、DM250は久々過ぎる新型モデルなのだ。
約6年の間にノートPCやタブレットなど、キーボードを備えるモバイルデバイスの選択肢は増え、さらにスリープからの復帰も速くなるなどポメラの強みが薄れてしまうような進化もしている。
それでも久々の新型ポメラ・DM250に触れてみるとテキスト入力に特化していることでの起動の速さや、ほかに余計な情報が入ってこないことで作業に集中できることなど、ポメラのメリットも捨てがたい。
それだけでは購入の決め手にならないという人は、DM250をもし手にした場合の利用シチュエーションを想像してみるといいだろう。
特に新たに提供される「pomera Link」は常に持ち歩いているスマートフォンを介すことでPCなどほかのデバイスとの連携を生みだしてくれる。
万人向けではないが、ワークフローの中へ取り込みやすくなったことで今まで以上に使いこなす楽しみや可能性が秘められているのが、DM250だ。
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