一番「人と人が支え合っている」フォントはどれか調べてみる

デイリーポータルZ

「人という字は、人と人が支え合ってできている」という言葉がある。

しかし、実際の人の支え合い方には差がある。細い明朝体の「人」は、かなりぎりぎりでお互いを支えているように見えるし、逆に太い筆文字の「人」は、ガッツリホールドしていて息ピッタリな気がする。

いろいろな「人」がある中で、一番「人と人が支え合っている人」はどれなのか。実際に「人」を作って確かめたい。

人は本当に人と人が支え合ってできているのか?

人という字は、人と人が支え合ってできているという。

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こんな感じ。

でも、現実にはいろんな「人」があるので、必ずしも支え合っているとは限らない。

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一番「人と人が支え合っている人」はどれなのか。

その答えを探るべく、物理的にたくさんの「人」を作って確かめてみることにした。

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大きめのスタイロフォーム(切りやすい発泡スチロールみたいなもの)を準備して…
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準備した「人」を貼り付けてカット。
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人ができた!!
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これをどんどん作ろう!
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たくさんの人ができあがった。
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髪染めスプレーで黒く塗ったら完成!

またたくまに、黒い人だかりができた。これで下準備は万全だ!

人は支え合ってできているが揺れにはめちゃくちゃ弱い

今回は、次の2つのルールで人の支え合い方をチェックする。

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まずはとにかくやってみよう。エントリーNo.1はこの「人」だ。

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石碑に書かれていた文字から出来たフォントらしい。

龍門石碑体は、書道などでお手本にされることもあるという文字だ。そのせいか、いかにも見た目が「人」っぽい。

「人という字を思い浮かべて」と言われたら、だいたいの人がこんな感じの「人」を思い浮かべるはずだ。

そんな王道派ともいえる龍門石碑体の「人」だが、本当に支え合っているのだろうか。

人の支え合っている部分に、カッターで亀裂を走らせてみる。

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このあたりをカットしよう。
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バラバラになった。妙に罪悪感のある作業。

お互いをばらばらにした途端、2人とも力なくその場に倒れ込んでしまった。

やはり、人という字は常にお互いを支え合っていないとダメなのだ。

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それぞれの「人」を手にとって…
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お互いを支え合わせると…

 

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そこには「人」が!!!

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余裕とまではいかなかったが、2人が支え合うことで、ちゃんと「人」が立つことができた。

どちらが欠けてもうまくいかない。お互いがお互いを支え合っている、これぞまさに「人」である。

しかし、勝負はこれだけではない。どんな障害でも2人は乗り越えられるのか、揺れを与えてチェックする。

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ドンドンドンドンドンドン!!!

いい揺れの与え方がよくわからなかったので、とりあえずテーブルを叩きまくったらすぐに崩れ去ってしまった。

龍門石碑体の「人」は、障害を乗り越えられるほど支え合ってはいなかったらしい。

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意外と人情がない勘亭流とがっつり組み合う相撲文字

この調子で、他の「人」もどんどんチェックをしていこう。

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「凸版文久見出し明朝」は、最近トレンドのフォントである。使いやすくてちょっとかわいらしいので、バナーや装丁で見かけることが増えてきた。

いわばフォント界のホープだが、ちゃんと人と人は支え合っているのだろうか?

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立った!!!

すっくと立った。こんなに不安定そうなのにきちんと支え合っているなんて、なんだかちょっと感動する。

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この「でっぱり」に愛を感じる

凸版文久見出し明朝で特に感動するポイントは、上にちょっとだけある「でっぱり」だ。

正直、これがなければかなり支え合えない人だと思う。

お互いがなんとか工夫をしながら、必死にお互いを支えている感じがすごくいい。

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ただし障害にはめちゃくちゃ弱い。

机を叩くと、0.5秒ぐらいでもろくも崩れ去っていった。やはり、もともとの太さがないと「人」は衝撃に耐えられないらしい。

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続いては、江戸っぽい雰囲気を出したいときに絶対に出てくる勘亭流の「人」である。

見た目は人情あふれる「人」に見えるが、実際のところどうだろうか。

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きっちり立った!
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揺れにはめちゃくちゃ弱い。

こんなに人情味がありそうなのに、揺れがきたらすぐにお互いを見捨ててしまった。せちがらい世になったものだ。

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しかたがないので、相撲文字に期待する。

相撲といえば足腰が大事だ。しかも、相撲のとっくみあいはかなり「人」の形っぽい。

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相撲=人なのでは?

これは期待が持てそうだ。がんばれぼくらの相撲文字!

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なんなく立った!
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揺れにもけっこう持ちこたえた。

さすが天下の相撲文字! 最後は崩れてしまったものの、ぎりぎりまでがっつり組み合う最高の支え合いを見せてくれた。やっぱり最後は人と人の支え合いだ。

切り方がわからないゴシック体と何が起きても最強のポップ体

ここまで手書きっぽい「人」ばかりを見てきたが、ここでゴシック体の「人」にも出てもらおう。

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ゴシックの「人」は、正直作るかかなり迷った。なぜかというとコレである。

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たぶんなのだが、「人と人は支え合っている」と最初に言いだした方は、筆で描いた「人」をもとにして言ったんだと思う。ゴシック体のことは、なにも考えてなかったはずだ。

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熟慮の末、ここを切ることにした。
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立ち上がれ!忘れられたゴシック体!
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揺れにも強いぞ!

ちょっと亀裂は入ったものの、揺れにも負けないゴシック体。ゴシック体でも、人は支え合うことができるのだ。

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もうひとつ、忘れちゃいけないのがポップ体だ。

ちょっと軽薄なイメージがついてしまっているポップ体だが、人と人が支え合っているのなら、ファンを増やせるかもしれない。

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切り離されても普通に立つ。
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支え合ってもきっちり立つ。※左の「人」にちょっとでっぱりがあるように見えるのはカットのほつれ

圧倒的な支え合いだ。バラバラになっても立ち上がり、2人になっても立ち上がる。

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しかも、どれだけ叩いても全然負けない。

倒れるまでテーブルを叩き続けてみたものの、全然崩れる気配がないので最終的に私が負けた。

いまだかつて、ここまで支え合う「人」がいただろうか。ポップ体、圧巻の支え合いである。

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支えあえない草書体と亀裂が走る印相体

最後は、変わった「人」を見ていこう。

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できるだけ早く文字を書くための崩し文字、それが草書体である。

崩し文字だけあって、ゴシック体とも一味違った「どこで切っていいのかわからん」感がただよっている。

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たぶんここ?
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コテーンと崩れた。

人というより「ろ」になった。こんな「ろ」のような人は初めて見た。

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どれだけ調整しても「コテーン」となる。

草書体の「人」は全然支え合っていなかった。この世には、やはりいろんな人があるようだ。

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他のどんな「人」とも違う、謎の風格ただよう印相体。

見たことがない人も多いと思うが、簡単にいえば「ハンコのための文字」である。

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しかし…
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どれだけ調整しても亀裂ができてしまう。

かなり支え合い感のあるフォルムに見えたが、その特殊さが裏目にでたのか、ガッツリ支え合うことはできなかった。「人」は見た目によらないのだ。

一番人と人が支え合っているのは「ポップ体」だった

いろんな「人」の支え合いを見てきたが、結果を一覧でまとめてみる。

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ということで…

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一番人と人が支え合っているのは、ポップ体の「人」だった。

特に「切り離されても立ち上がる」「どれだけ障害があっても支え合う」という強さを見せてくれたのは、たくさんの「人」の中でもポップ体の「人」だけだ。

今後もし「人という字は、人と人が支え合ってできている」という話をするときには、ポップ体の「人」を使うことをおすすめしたい。

はりきりすぎて大量の「人」を作ったせいで、全部を紹介しきれなかった。しかたないので、ここでおまけの「人」を紹介する。

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Windowsユーザーなら見かける機会の多いメイリオ。(Windowsでほっておくとほぼすべてのフォントがこれになる)
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ちゃんと立つけど細いので揺れには弱め。
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もうひとつは 国語の教科書などで使われる「教科書体」。ぱっと見て書き順がわかりやすいように出来ているらしい。
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立つものの一瞬で崩れる。

 

教科書体は特に最難関で、作っているときから「あなたたちは本当に支え合えるのか?」と聞きたくなるぐらい不安定な「人」だった。

人と人が支え合っている話をするときは、教科書体よりポップ体なのだ。ぜひ、今後支え合いの話をするときは参考にして欲しいと思う。

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