つい先日、仕事で京都を訪れていた筆者。冬に続き、これが人生で2回目の京都だ。よく京都人が「夏の京都はクソ」「盆地で暑すぎる」などと言うので憂慮していたが、少なくとも滞在中は東京と変わらない気がした。
むしろ鴨川や高瀬川沿いは涼しい。暑いばかりの夏の新宿や渋谷より好印象だ。一仕事終えての散歩もはかどるぜ! おや、あの人混みはなんだろう……?
・謎の人出
晩飯をどこで食おうかなどと考えつつ、祇園四条までやってきた筆者。ふと見ると、警察による道路の封鎖と、その向こうに大量の人出が。
何かあるのだろうか? ちょっと気になる。封鎖している警察官の所まで行き、何をやっているのか聞くと「祇園祭ですよ」と。
えっ、祇園祭って、あの祇園祭か? このタイミングで京都に来る人の99%は祇園祭が目当てなのだろうと思うが、筆者は残りの1%に該当していた。
今回は祇園祭と無関係の仕事で来ているし、そもそも京都の情報に詳しくない。ローカルの祭りの情報など、果てしなくノーマークだった。
さすがに名前だけは知っていたが、まさか人生2回目の上洛中に、偶然にもピンポイントでエンカウントするとは。
はえー、これが祇園祭りか。ちょっと見にいってみよう。飯は屋台とかで買えばいいしな。そう思い、警察による封鎖の向こうへ。
・祇園祭
そこは歩行者天国となっていた。さて、どの辺で祭りが行われているんだろう? 目を凝らしてみたが……特に何も見えないというか、とにかく大量の人がいるばかり。
人々は明らかに何かを目指して西の方角に歩き続けている。1キロ近く歩いた気がするが、まだ行くのだろうか? もう疲れたし、やっぱ帰ろうかな……と思ったら、遠くにデカい山車的なモノが!
この大量の人々は、あれが目当てか! 近寄ってみると、中に人が乗り込んで何やら演奏しているようす。
近くで中継していたTVリポーターの喋る内容を聞いて把握したが、これは山鉾(やまぼこ)と呼ぶのが一般的らしい。また、山鉾が巡行するのは3年ぶり(巡行自体はこの記事の日より後)だったそうだ。
意図せず人生初の祇園祭にエンカウントし、しかもそれが3年ぶりの山鉾とはデスティニーみがビッグ。
八坂神社の祭りとのことなので、もはや主祭神の素戔嗚尊か櫛稲田姫命あたりに呼ばれたと言っても過言ではない。
これは本腰を入れて祭りを堪能するしかないだろう。とはいえ、祇園祭のシステムやルールがわからない。権利関係について興味が尽きないそこの屋台にでも突撃してみっか?
・ちまき
よくわからないままフラついていると、とある山鉾のそばのテントで色々とグッズが売られているのに気付いた。
きっとこれらのアイテムは、祇園祭の定番なのだろう。気になるのは「本日のちまきの授与は終了いたしました」という張り紙だ。
ちまきって、あの ちまき か? 笹に巻かれてて中に餅っぽいモノが入ってるヤツ。値段は1000円らしいが、売り切れてるとか人気じゃん。
「きんちゃく袋」や「しおり」なども売り切れていたが、わざわざ外に張り紙が出ているのは ちまき のみ。
特別なアイテムだと考えていいだろう。これは是非とも食ってみたい。きっと激ウマだ。ここのテントが駄目でも、ワンチャン他の場所で買えるかもしれない。
ようし、今日は祇園祭の ちまき を食ってやるぞ! そう決めて探し回ったところ、ちまきを沢山売っている場所を発見!
八坂神社と書いてあるし、たぶんオフィシャル ちまき だ。隣では聖護院の八ッ橋も売られている。そちらもウマそうだが、今夜は ちまき の気分。
紙袋に入れられており、1つ1000円でゲット!
フフッ、楽しみだぜ。厄除とか書いてあるし、これを食ったら1年いい感じに暮らせる的な、年越し蕎麦とかそういうのに通じるヤツなんじゃなかろうか?
ちまき を抱えて人気のない所に移動し、中をチェック。なんか笹がすげぇ本格的だな。
ん?
これは……
「ちまき」は中身のないのが本来のものである。
し、知らなかったぜ! 今まで見てきた、中に何かしら詰まった ちまき は、本来のものではなかったもよう。祇園祭の「ちまき」はドアの前に飾るなどするためのもので、破魔矢などと同じような用法のアイテムらしい。
さらに、トップの写真に写っている山鉾も全て違うものらしい。マジで? 全部同じじゃないですか。
と思ったが、よく見たらマジで微妙に違っている。これは初心者にはキビしいっすわ。月鉾の灯篭の「月」とか、献酒してる月桂冠の「月」だと思ってた。
そして、それぞれの山鉾にて、違ったデザインで違ったご利益のある「ちまき」が授与されているらしい(厄&疫病除けが多いようだが)。
知られざる「ちまき」の世界。思っていたより遥かに奥深かったようだ。違ったデザインに違ったご利益とか、絶対「ちまき」間での人気に差がでるだろ。あと、毎年全制覇するマニアとかもいそう。
こうして新しい知識を得た筆者。先ほど素戔嗚尊か櫛稲田姫命あたりに呼ばれたとか書いたが、きっと愚かな筆者に「ちまき」について学ばせるためだったのだろう。神に授けられし「ちまき」情報。
しかし本能は、すでに中身のある ちまき モード。花より団子と言うだろう。ちまき が食いたい! どこかに食える ちまき は……
あった(京都駅にて)!
ちまきィィィイイイイイイイイ!!
……
……
……
……
こうして人生初の祇園祭の夜は、ちまき に翻弄されながら暮れていった。
完
参考リンク:公益財団法人祇園祭山鉾連合会
執筆&Photo:江川資具