凸版印刷は7月11日、農産物の生産者と宿泊施設や介護施設、飲食店など、地域の顧客(実需者)を専用のアプリ上でつなぎ、生産情報と需要情報をマッチングするプラットフォーム「ジモノミッケ!」を開発したと発表した。
同プラットフォームのユーザビリティと、事業性を検証する実証実験を7月11日から福島県会津若松市とその近隣地域で実施する。同実験には、農産物生産者30社と、宿泊施設、介護施設、飲食店、食品加工業者、小売店など30社が参加する。
また、同実験はAiCTコンソーシアム「食・農業ワーキンググループ」の活動の一環として実施されるもので、同社は「地域内流通DXとフードロス削減による農業再活性化プロジェクト」の責任事業者を務めるという。
同社によると、少子高齢化に伴い、消費市場全体の規模が縮小。売上の拡大が見込めない中、多くの実需者はコモディティとしての農産物を欠品しないように確実に仕入れるのと同時に、競合との差別化と自社の利益率の向上に寄与する農産物の仕入れに力を入れ始めている。
しかし、地方都市における食品流通は、大都市への優先的な供給や一般消費者向け流通サービスの台頭により、地元への流通・供給量が年々減少。加えて、地方での農産物流通では、電話やファックスなどアナログな手段を介して取引されているため、実際の供給と需要を定量的に把握することが困難であるという。
そのため、実需者は地元産の新鮮な農産物を手に入れづらく、都市部を経由し入荷される過剰コストのかかった農産物を購入せざるを得ない。
生産者にとっては、こだわりをもって生産した農産物もコモディティ品と一緒に扱われてしまい、都市部への流通コストがかかることを前提にした価格で取引されるため、高収益化へのシフトがしにくいという現状がある。
そこで同社は、これらの課題を解決するために、生産者と実需者をマッチングする、オンラインプラットフォームを開発した。
同プラットフォームを活用することで、生産者は「供給(サプライ)情報」、実需者は「需要(デマンド)情報」をPCやスマートフォンから少ないアクションで登録可能。また、「入札」(デマンド情報への生産者からのリアクション)や「落札」(サプライ情報への実需者からのリアクション)など、マッチング状況はリアルタイムで確認できる。
マッチング後は、指定日時に専任の配達員が生産者の軒下で農産物を集荷。AIルーティング機能により算出された最適なルートを通って、実需者へと納品される。なお、無線通信タグを貼付したコンテナによるトレーサビリティ・温度管理ができる仕組みを導入しており、安全な物流体制を構築しているという。
同社によると、生産者と実需者がそれぞれ入力したデータをもとに、最適な取引相手を自動的にマッチングする機能も開発しているという。
また、都市にあるエネルギーや交通機関をはじめ、医療、金融、通信、教育などの膨大なデータを集積・分析し、それらを活用するために自治体や企業、研究機関などが連携するためのプラットフォーム「都市OS」を介した、デジタル地域通貨との連携も予定する。
同社では、同プラットフォームにより、地域内の供給情報と需要情報を可視化。農産物流通の最適化を「デジタル」と「サステナブル」の両面からサポートしていく。
今後は、ジモノミッケ!を活用した会津若松市および、近隣地域での実証実験を通じ、2023年度の事業化を目指す。また、都市OSの導入地域を中心にジモノミッケ!の水平展開を図り、2030年度までに卸売市場など50拠点への導入と、食農需給マッチングプラットフォーム関連事業で10億円の売上を目指すとしている。