夏場のアチアチWi-Fiルーターをどこまで冷やせる? USBファン付きルーター冷却台「NB-USBFAN-RTST」を試す【イニシャルB】

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 PCパーツメーカーとして知られる長尾製作所から、Wi-Fiルーター向けのUSBファン付き冷却台が発売された。

 Wi-Fiルーターの台座として利用することで、下から風を送り、本体を冷却する製品だ。どれくらい効果があるのかを実際に試してみた。

USBファン付きルーター冷却台「NB-USBFAN-RTST」。実売価格は3500円。

熱くなりがちな通信機器

 スイッチやルーターなどの通信機器は、PC関連のデバイスの中でも比較的熱くなりがちなものの1つだ。

 PCは本体内部にファンを搭載することで、CPUなどの発熱源を直接冷却するが、エンタープライズ向けの通信機器は別として、家庭用のスイッチやルーターには、内部にファンを搭載しない製品の方が多い。

 かつてメーカーへのインタビューで、なぜファンを搭載しないのか? と尋ねたことがあったが、そのときの回答は「音の問題ももちろんあるが、なるべく可動部品を減らすことで故障率を下げたい」というもの。「なるほど」と感心したことを思い出す。

 このため、内部に大型のヒートシンクを搭載していたり、金属筐体の採用によって全体で放熱するように設計されていたりと、製品そのものが熱くなりがちなものが多い。

 もちろん、本体が熱くても通信に影響が出ないケースも多いのだが、本格的な夏が到来して気温が高くなってきたことで、本当に大丈夫なのか? と心配になる人も少なくないだろう。

 そんな中、登場したのが、今回紹介するUSBファン付きのルーター冷却台である「NB-USBFAN-RTST」だ。

 サイズが120mm、回転数1500rpm、風量49.24CFM、騒音値24.8dBAのPC向けファンがUSB接続に変更されており、付属の鉄製台座に取り付けることで、上部に設置したルーターに下から風を送り、強制的に冷却することができる製品だ。

組み立てた様子

調整可能なスペーサーを搭載するが小型ルーターは直置き

 組み立ては台座にファンとファンガードをネジ止めするだけと簡単だが、上に載せる機器によってはサイズの調整が必要になる。

 縦方向のサイズは固定だが、横方向は3カ所あるネジ穴の位置によって、130~180mmまで調整可能となっている。縦置きで使う製品が多いWi-Fiルーターの場合は、130mmで十分かと思われるが、設置する機器に応じて変更するといいだろう。

ネジ穴の位置で横幅を調整可能。スペーサーの位置も変更できる

 台座部分には可動式のゴム足スペーサーが用意されており、このスペーサーにWi-Fiルーターを設置することで、ファンとWi-Fiルーターとの間に通気スペースを確保できるようになっている。

 ただし、調整は横方向のみに限られるため、小型のWi-Fiルーターの場合は、スペーサーの上に置くことができない。例えば、NECプラットフォームズの「Aterm WG1800HP」といった小型製品では、最小にしてもスペーサーを設置することはできない。

小型のWi-Fiルーターの場合、スペーサーには載らないため、ファンガードに直置きとなる

 今回、検証に利用したUbiquitiの「Dream Machine」もそうだが、小型の製品は、スペーサーではなくファンガードに直置きで利用するしかないだろう。

本来は、このようにスペーサーにWi-Fiルーターを設置することで、通気スペースを確保する

縦方法は135mm前後と固定となるため、これ以下のサイズの機器はファンガード直置きとなる

CPU温度を83.3℃から74℃へ冷却

 それでは、その効果を検証してみよう。今回利用したUbiquitiのDream Machineは、Wi-Fi 5対応のWi-Fiルーターだ。

 本製品は、スタイリッシュなデザインの代わりに、あまり放熱が考慮されておらず、常時稼働させていると、筐体の外側でも長時間手で触れていられないほど(おおむね50℃前後)に熱くなる。

UbiquitiのDream Machineを設置した様子

 内部のCPU温度を設定画面から確認できるのだが、アイドル時でも80℃ほどにCPU温度が上がる筆者のコレクションの中でも屈指の高温製品の1つで、今回のような検証にも都合がいいのだ。

アイドル時でも83.3℃と、かなり熱い

 実は、この製品は本体内部にファンを搭載しているのだが、ファンが回転するのは高温かつ高負荷の場合のみとなっている。内蔵ファンとの比較もできるため、この製品を選んだわけだ。

 その結果は以下の通りだ。アイドル時から通信を発生させ、負荷をかけた場合の内部CPUの温度を計測している。

アイドル時 通信時 通信終了後
標準 83.3 80.9 82.6
外部ファンあり 74 74.3 74.1

※室温29℃
※アイドル時は稼働から1時間経過後、通信終了時は終了から10分経過後
※通信は2台のPCをWi-Fiで接続し、1台はYouTube再生、もう1台は3.5GBのファイルをダウンロード

 まずはアイドル時だが、標準では83.3℃だったCPU温度が、外部ファン(NB-USBFAN-RTST)を利用することで74℃まで低下した。

 今回利用したUbiquitiのDream Machineは、底面側に吸気用のスリットが存在するが、さほど大きくないため効果は限定的だ。それでも温度を10℃近く下げられた。

 負荷時は、標準状態では一定の負荷(15%ほど)でファンがフル回転をはじめ、かなり高音の大きな音が発生するが、温度の低下は限定的で、今回のテストでは80.9℃までしか下がらなかった。

 一方、外部ファンとしてNB-USBFAN-RTSTの利用時には、CPU温度が74℃前後で常に一定し、負荷をかけても温度はほとんど変化しなかった上、内蔵ファンも稼働しなかった。

外部ファン設置時は負荷をかけても74℃前後で安定する

 なお、NB-USBFAN-RTSTのファンは静音設計となっているため、さほど音は気にならない。もちろん、無音というわけにはいかず、「フォーン」という低音がかすかに聞こえてくるが、少なくともルーターが内蔵する小型ファンが高速回転する際の高音よりもはるかにマシで、一定の効果は期待できる製品と言っていいだろう。

ルーターの構造で効果が変わる

 以上、長尾製作所のUSBファン付きルーター冷却台であるNB-USBFAN-RTSTを試したが、高温になるルーターを冷却する装置として、意味のある製品と言っていいだろう。

 ただし、どれくらいの効果が期待できるかは、ルーター側の構造次第とも言えそうだ。しっかり検証したわけではないので推測に過ぎないが、今回のUbiquitiのDream Machineのように、底面(もしくはファンの風の当たる範囲内)に吸気スリットがないと、その効果は下がると考えられる。

 一方で、今回のDream Machineは吸気スリットが小さかったので、もっと大きなスリットがある製品なら、より高い冷却効果が期待できることが推測できる。

 なお、Dream Machineの表面温度を計測してみたが、ファンなしの状態である49℃前後から、底面にファンを設置すると43℃前後へ下がった。筐体で放熱するタイプでは、これくらいの効果が期待できるが、やはり内部へ風が通る構造でなければ、高い効果は望めないだろう。

 また、価格がやや高い。今回の検証では10℃近くまで冷却できたので、高温による安定性低下や、内蔵ファンの騒音に悩まされているなら、本製品を利用してみる価値はあるが、ファンに3500円となると、結構な出費となる。確かに品質は高いが、少しコスパは悪いのではないかと思えるところだ。

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