AKRacingと言えば、ゲーミングチェアブームの火付け役と言えるブランドだが、今回新たなジャンルに製品を投入する。当然、ゲーム関連と誰もが想像するところだが、なんと国産の有機ELパネルを採用し、画質を追求したという4Kモニター「OL2701」だ。
PC向けのモニターでは有機ELパネルを採用している製品はまだまだ少ない。しかもOL2701が実現した27型4K解像度という設置に適したちょうど良い塩梅のサイズともなるとなおさらだ。早速、第1弾となるAKRacing製モニターの実力を検証していこう。
抜群の映像美を堪能できる4K有機ELパネル
今回AKRacingが発売するOL2701は、27型サイズで4K解像度のモニターだ。最大の特徴は、日本のJOLEDが開発したRGB印刷方式の有機ELパネルの採用だ。PCに最適な中型サイズの有機ELパネルを量産可能なJOLEDと協力することで実現した。
有機EL最大の強みは、バックライトで光らせる液晶とは異なり、画素自体が発光するため、全く光らせない箇所、つまり液晶では不可能な完全な“黒”を表現できること。これによって、微妙な濃淡や明暗の再現も可能にし、夜景など明るい部分と暗い部分がハッキリとした映像を見ると、立体感に驚かされる。
その高画質ぶりはスペックにも現れている。ピーク輝度は540cd/平方m、コントラスト比は100万:1に達する。各RGBは10bit駆動に対応しており、sRGB比130%、DCI-P3カバー率99%という広い色域を持っており、写真のレタッチや動画編集などクリエイティブな作業に最適だ。
カラーキャリブレーション機器「i1Display Studio」と色度図作成アプリ「ColorAC」でも色域を実測してみた。
sRGBはスペックを超える比率、DCI-P3もほとんどスペック通りと実測でも高い実力を確認できた。さらに、本機の撮影を行なったカメラマンの若林直樹氏に色の表現力について見てもらったところ「暗部の微妙な階調表現もできていることに驚きました。やや青が強いように見えますが、緑のグラデーションも綺麗に表現できてますね」とのこと。有機ELの強みをプロのカメラマン目線でも確認できたわけだ。
液晶をはるかに超える視野角と応答速度のメリット
もう1つ注目しておきたいのが、スペック値を超える有効視野角の広さだ。スペック上では一般的なIPSパネルの液晶モニターと同じ上下/左右178度となっているが、OL2701が採用する国産有機ELパネルは、液晶と同じ視野角で画面を見た際の、輝度とコントラストが高いのが特徴だ。
たとえば、コントラスト比の標準値が1,000:1の一般的なIPS液晶モニターに対して、OL2701は標準値で100万:1を実現しており、実に1,000倍だ。そのため、ほぼ真横に近い位置から画面を見たとしても、映像にメリハリがある。実際に筆者が横から画面を見た際も、液晶とは段違いの明るい映像を確認できた。
広視野角を謳う製品は数多くあるが、OL2701は液晶パネルとは比較にならないレベルの視野角を実現しており、多人数が集まって視聴するような場合でも、ユーザーにストレスを感じさせないだろう。
本機のリフレッシュレートは最大60Hzなので、ゲーマー向きではないように思えるが、そうとも言えない。有機ELは液晶に比べて応答速度(画面の色の切り替わり速度)が優秀なのもポイントで、OL2701も0.1msと非常に高速だ。
ご存知の通り、リフレッシュレートとは1秒間で行なわれる画面上の書き換え回数のことだ。60Hzであれば、60回の書き換えが行なわれている。当然、リフレッシュレートが上がるほど、コマ数が増えるので画面上の動体を滑らかに映し出すことができる。
しかし、応答速度が伴わないと、リフレッシュレートがいくら高くても最大限に滑らかな映像を楽しめない。応答速度とは、画面上で映し出されているピクセルが、別の色へと変化するまでの時間だ。
最近のIPS液晶パネルでも最小1msと高速なものが増えてはいるが、我々は実際にピクセルが書き換わるまで、1ms待たされていることになる。応答速度は残像感に直結する要素であり、応答速度が速いほど、ブレがなくなり残像感が減る。
OL2701の応答速度は0.1msと、最近の液晶パネルよりも10倍も速く、圧倒的に残像感が少ない。ゲーミングモニターでは120Hz以上のリフレッシュレートが主流となりつつあるが、そうしたハイリフレッシュレート環境が必要とされるのは、競技性の高いFPSといった一部のゲームに限られる。
OL2701は映像美を追求するという点で、ジャンルの異なるモニターであり、ハイリフレッシュレートを必要としない、TPS視点のアクションゲームやRPG作品などにおいては、有機ELの発色の良さに加えて、ほぼ残像感のないスムーズな映像を楽しむことができる。OL2701は、ブレが起きにくく見やすいという、これまでの液晶パネルでは実現し得なかったメリットを生み出しているのだ。
また、仕様には含まれていないが、ビデオカードのフレームレートを同期させることで、テアリング(画面ズレ)を防ぐ可変リフレッシュレート機能を使えるようだ。筆者がNVIDIAのG-SYNC Compatibleを試した限り、問題なく動作していた。ただし、動作保証外となる点には注意されたい。
同じく仕様には入っていないが、DisplayPort接続においてWindows 11でHDRを有効化できるのを確認した。こちらも動作保証外となるが、有機ELだけあって、対応コンテンツでは明暗が非常にハッキリとした映像を楽しむことができる。
OSDメニューからモード選択が可能
モニターに関する設定はディスプレイ背面のボタンを押すことで呼び出せるOSDメニューで行なえる。シンプルな作りで、それほど設定項目は多くないが、注目は「エコモード」だろう。
エコモードでは、標準、スポーツ、ムービー、ゲーム、インターネット、テキストとジャンル別のプリセットが用意されており、利用シーンに合わせて切り換えられる。スポーツでは、明るさが高くなり、テキストだと明るさをグッと落とすといった感じだ。
意外にもゲームに設定すると明るさはそこそこ下がる。長時間のプレイを意識して、明るくメリハリを効かせるよりも目への優しさを重視しているのかもしれない。
取り回ししやすい軽さと高機能なスタンド
有機ELは素子自体が光る構造なので、バックライトが必要な液晶に比べて薄くしやすいのも強みの1つ。そのため、スリムなボディでスタンドを装着しても5.47kgと、27型サイズとしては軽量。デスクに設置しやすいのもうれしいところだ。
スタンドは、高さを12cmの間で調整でき、チルト(下方向5度、上方向20度)、スイベル(左右30度)に対応と好みの向きや角度に調整しやすい。なお、スタンドはネジで固定する方式。箱から出してセッティングするときはプラスドライバーを用意しておきたい。
映像の入力はHDMI 2.0×2、DisplayPort 1.4×1、USB Type-C(DisplayPort Alt Mode)と4系統もあり、家庭用ゲーム機やノートPCとの接続もしやすい。USB 3.0対応ハブ(2ポート)もあり、マウスやキーボードの接続に便利だが、これを有効にするにはPCとType-Cケーブルで接続する必要がある。
このほか、2W×2のステレオスピーカーやヘッドフォン出力も搭載。サイズはスタンド込みで本体サイズは630×230×571mm(幅×奥行き×高さ)だ。
映像の美しさにこだわる人に最適
有機ELを採用することで正確な色の再現性を実現しており、カメラマンや映像制作などのクリエイター向けにピッタリと言える。また、完全な黒を表現できる液晶では味わえない明暗の効いた映像は映画やゲームをより楽しくしてくれる。
約30万円と高価ではあるが、有機ELのPC用モニターはまだまだ稀少な存在。画面の美しさにこだわるなら、検討するだけの価値がある製品。ゲーミングチェアというブームを作ったAKRacingが、今度はモニターでも有機ELブームを起こすのか楽しみだ。
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