期間限定のポイントを15,000円分失ったときと似ている

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閉店しました(とりもち うずら)

2度とそこに行くことの出来ない事実を知らせるサイトを、ただ茫然と見ている。

山梨県にある小さなゲストハウスに一度だけ泊まったことがある。
忘れもしない荒れ狂った台風の日であった。

仕事で広島まで来ており、高速道路を3人で交代して運転しながら東京に帰っていた。
風に煽られ進むもやがて通行止めになり、山梨で高速を降ろされた。一般道もほぼ通行止めだったが、必死に抜け道を探した。

しかし、雨はどんどん激しくなり、最終的には四方囲まれて通行止めになった。山奥に閉じ込められてしまった。車中泊決定だ。

無言の車内。ボンネットを打ち付ける雨の音だけが響き渡る中、皆少ない充電で必死に宿を探した。

やがて1件だけゲストハウスが見つかった。

すがる気持ちで電話をかけると、まさかの定休日。
私はお店のおばさんに必死で説明した。山奥に閉じ込められたこと。雑魚寝でいいから泊まらせて欲しいこと。

「大変でしたね。定休日ですが、特別に泊まっていいですよ」おばさんは優しくそう言ってくれた。
そこからはもう天国だった。
古民家を改築して作られているそのゲストハウスは、懐かしい畳の部屋なのに、外国のドライフラワーがインテリアとして飾っているような、不思議な空間だった。
定休日に無理を言って泊まらせてもらったにもかかわらず、想像していた3倍の品数の食事を出してくれた。しかも、カルディで売っているような外国の豆が使われたオシャレな異国の料理。
美味しいご飯、暖かいお風呂、そして布団!
経費でこんないい所に泊まれるなんてラッキー!
私たちは急に修学旅行のようなはしゃいだ気持ちになった。

「大丈夫。明日には道が通れるようになりますよ」
おばさんがそう言うと私たちは緊張の糸がふっと緩んで、本当に大丈夫な気がしてきた。

毎日の中でピンチが訪れたとき、
「まぁ、なんとかなるでしょ」
と、どこか楽観的でいられるのは、あのときおばさんが定休日に泊めてくれたからではないだろうか。
いざとなったら誰か助けてくれるという根拠のない自信が、日々の私を支えているのかもしれない。

私たちは、絶対にまた来ます!と約束して宿を後にしたのだった。

しかし、約束が果たされることはなかった。

閉店のお知らせは私に一抹の寂しさを与えた。
もう更新されることのないお店のサイトを見ながら、今の気持ちは、期間限定の楽天ポイントを15,000円分失ったときと少しだけ似ている、と思った。

終わってふたたび解説です

嵐の日に定休日なのに泊めてくれたゲストハウスが閉店してしまった。絶対また来ます!が叶わなくて残念で、ポイントを失ったときと似てるt感覚わかります。ポイントって気づかないうちになくなりますよね。

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