「かぐ」というエンタメのご提案です
そとを歩いていて「なんでここがこんなにおいなんだろ?」と気づいてちょっと笑うという経験、あると思う。
東京のまちなかで急に「わくわくする海外旅行」の、「銭湯」の、「線香」のにおいのする場所があると聞いてめぐってきた。
1979年東京生まれ、神奈川、埼玉育ち、東京在住。Web制作をしたり小さなバーで主に生ビールを出したりしていたが、流れ流れてデイリーポータルZの編集部員に。趣味はEDMとFX。(動画インタビュー)
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「なんでここがこんなにおい」を東京で3ヶ所巡ります
今回めぐるのは当サイト関係者が自信をもって推すこちらの3ヶ所。
新宿駅西口の新都心交差点あたりが東南アジア方面への海外旅行のにおい
林 雄司
都営線の六本木駅のホーム、ヒルズ方面のエスカレーターをあがるところが銭湯のにおい
土屋 遊
清澄白河のブルーボトルコーヒーに行く道中が線香のにおい
地主恵亮
ここへ行けば自動的に「なんでここがこんなにおい」を味わえるわけである。たまらない。走っていこう。
もう一つのテーマは「汗」
さて、いまさらだが本稿は制汗剤、エージーデオ24とのコラボ記事である。このエージーデオ24、有効成分のIPMPでニオイ菌というにおいの元になる菌を殺菌して汗のにおいを防ぐのだそうだ。有効成分IPMP。なんかよくわかんないけどかっこいい。
これさえあれば街のにおいをキャッチするのに汗のにおいで邪魔しないというねらいである。すごい。ぬかりなしだ。
「今回のために爽やかで強すぎないシトラスの香りをチョイスしました!」
当サイトのコラボ記事担当の安藤のこの自信あり気な顔よ。
街のにおいをかぐのに先回りして汗のにおいを抑える策を講じておこうなどと、コラボ記事とはいえここまでのぬかりのなさ人生レベルで初めてくらいのことである。誰か早くほめてほしい。
ツアーというからには同行者もいる
しかもツアーに人も集めた
写真左から当サイトライターで嗅覚に自信ありの小堺丸子、筆者古賀、ワインエキスパートの八木梨佐。
「わっ○○のにおい!」という感動は分かち合ってさらに盛り上がりが高まりがちだと思うのだ。ワーキャー仲間はぜひ欲しい。
結果的に最高のバランスの3人がそろったと終わった今おもう。
まずはサクッと1分動画でどうぞ
ツアーの様子は撮影班の岩沢卓さんの手によって動画にまとめられている。記事は続きますがサクッとにおいの按配について確かめておきたい方は動画からごらんいただくとよいかと思います。
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制汗→まちのにおいかぐ→移動→制汗を繰り返すというツアー
次ページから本ツアーの詳細を紹介していこう。最後に完全に意外な展開があるので動画で見たあと読んでいただいても十分にびっくりできると思う。
新宿にあるわくわくの東南アジア
一行が最初にやってきたのは「新宿駅西口の新都心交差点」。
新宿駅西口の新都心交差点あたりが東南アジア方面への海外旅行のにおい
林 雄司
どういうことなのか、かいで確かめたい。
かぐ
手すりのにおいにはっとする「子供のころ公園でかいだ鉄棒と同じだ!」うわあ、懐かしい! 泣ける!
「マジックのインクっぽい感じもする」
「冬場のストーブっぽいような気がします」
おのおの思いにまかせ口にする。
小堺さんのアイディア。アイマスクでにおいに集中することに
しかし正直、東南アジアへの海外旅行に行ってるみたいだ! という感動よりも別の感動があったのだ。これね、塾のビルの前のにおいだ!
3人それぞれににおいに対して感想が湧き出した、スケッチブックにかきとめていく
よみがえる通塾への憧れ
集中してかいだ結果、東南アジア旅行、というよりもむしろこうだという3人それぞれの所見をみていこう。
古賀:やっと塾に行けたときのあのにおい
塾にあこがれていたので本当にうれしかった、あのときのにおいがした。塾は町の駅前にあった。「駅前のにおい」というとそのままなのだが、都会のにおいということなんだと思う。
ちなみに勉強はできるようにならないまま塾はやめた。それまで自分が勉強が苦手なのは塾に行っていないからだとずっと信じていたのだが、そうではなく私は頭が悪いうえに努力もできない人間なのであるという大きな気づきを得た。
小堺:まゆ毛をマジックでかかれた犬
犬好きとして「かぐもの」といえば即「犬」なのだ。犬ファンの人なら新都心交差点にまゆ毛をかかれた犬を感じるのかもしれない。
八木:新緑の青々しさと強いペトロール香
聞けばペトロール香というのは灯油のようなにおいをワインの香りに感じたときに使うことの多い表現なんだそうだ。灯油のにおいがするワインがあんのか。ワインすごいな。
六本木駅は銭湯なのか
鋭意続いてのスポットもかぎにいこう。かぐだけという行為のために電車で移動だ。続いては六本木へ。
ついでに道中鉄柱のにおいをかぐ。なんかPerfumeっぽいと思ったが写真を見返したら完全に気のせいだった
ひらいた!
八木さんが「ひらいた!」といった。アリババと40人の盗賊なのかな? と思ったらそういうことではないらしい。
ひらいた?
かおりは温まるとひらく。適温よりも低い温度でかおりがとじた状態のワインは手のひらでグラスをあたためることでかおりをひらかせる(というのだろうか)こともあるのだという。
これからは地下鉄構内に入ってあたたまった独特のにおいにふれたら「お、ひらいた」とぜひいっていきたい。
「ひらいたね」「ひらいたひらいた」
「嗅ぎ鉄」
嗅覚をはたらかせながら歩いていると個性的なにおいがするのがよくわかる。地下鉄ひとつ乗るのも集中力を使うと得るものがあるのだ。貪欲に生きるとはこういうことなのかもしれない。
貪欲なる生きざま(かぎながら地下道を歩く)
湿度と甘さ、銭湯のにおいとは
さて、土屋さんが「銭湯のにおい」と指定したポイントは六本木駅のヒルズ方面のエスカレーターのあたり。
都営線の六本木駅のホーム、ヒルズ方面のエスカレーターをあがるところが銭湯のにおい
土屋 遊
たどりつけば電車がホームに入ってくるタイミングで構内に強いかぜが吹く。風にのって思った以上ににおいがやってきた。アイマスクをしていると行きかう人の香水のにおいも、思った以上にちゃんとかおってくることに気づかされる。
かぐ
「甘いにおいしませんか? 香水?」
「湿気あるけど、かわいたほこりっぽさもあるような…」
閉じられた空間にたくさんの人が行きかう、しかも風も吹くことで新宿のときよりもにおいが複雑だ。
「花みたいなにおいもしますね」
「かべは金属ですよね? かべが甘いにおいがする気もします」
かべが甘いにおい?
銭湯→ヒノキの湿った香り
私はなるほど銭湯といえば確かに! という印象だった。
土屋さんがここにいれば一緒に盛り上がったクチだ。
銭湯っての、わかる!
ほかの2人はどう感じただろうか。地上に上がって、感想戦といきましょう。
古賀:隣接するコインランドリーも含めての銭湯。「銭湯のとなりのコインランドリーの乾燥機作動中」のにおいがした
六本木駅の空間でふんわりとコインランドリーらしきにおいをかぎとって、あ、こういうことか!とひらめいた。土屋さんもそうだったら嬉しいがどうだろう。
小堺:あっ! また犬
香水のにおいや花のようなにおいをしきりにかぎとっていたが、同時にやはり「インクっぽさ」もあったという(なので今回もまゆ毛をかいたような…という表現に)。
八木:「ほのかに甘いヒノキの湿った香り」
銭湯っぽいにおい→お風呂っぽいにおい→ヒノキが湿った香り。言っていることはだいたい同じなのだが品性に格段の差ありだ。
一人称でいうと「わたくし」か「おいら」かぐらい違う。ワイン力というのは品性のことなのかもしれない。
これは立派な「趣味」だ
地下鉄で六本木ヒルズにくると銭湯と犬とヒノキのにおいが同時にすることが分かった。とんだおもしろスポットだ。これはもしかしたら買い物や映画鑑賞とかに飽きた人がやるレベルの崇高な趣味ではないか。誇ろう。
それにしても「かいで→感想戦」、というこの流れ、かぐという行為のシンプルさに対し感想戦に厚みと思い入れがそれぞれあるのがすごい。見えないものだからこそ言葉で伝えたい欲が燃えるのだ。
ところで「かぎ歩き」もそろそろ2時間ほど経過。撮影スタッフにも疲労と汗がにじんできた。汗は放っておくと「ニオイ菌」というものが繁殖するので、エージーデオ24でケアして防臭しよう。
ラインナップから選んだのはシートタイプのもの。緑のパッケージの「スタイリッシュシトラスの香り」である。こんないい香りで拭き消せるのだ。良い時代としかいいようがない。
スタッフの汗のにおいをしっかり抑えることではじめて町のにおいに集中できるってもんだ。
大人なスタイリッシュな香りでにおいを拭き消したら続いては清澄白河へ。線香のにおいをかぎにいこう。
そりゃあお線香のにおいするよねザ・清澄白河
結束を高めつつ最後に向かうのはこちら。
清澄白河のブルーボトルコーヒーに行く道中が線香のにおい
地主恵亮
この清澄白河駅周辺はお寺があちこちにある地域なのである。お寺といえば墓地も当然ある。そりゃあお線香のにおいがあちこちから風にのってやってくるわけだ。
笑うほどお線香のにおい
で、なんとさらにうっかりが畳み掛けてきたのだ。
…あれっ
線香のにおいを求めてやってきた場所が自分の祖父母の墓だとはどういうことだろう。
お墓参りになりました
ブルーボトルコーヒーの、なんと1ブロック手前が祖父母の墓のあるお寺であった。
読者のみなさまにおかれましても「普通にネットで記事読んでたら急にライターのおじいちゃんおばあちゃんの墓が出てくる」というちょっとない体験をさせてしまい大変に恐縮である。
あったー
祖父母は毎日しぬほどインスタントコーヒーを飲んでいた。たまに近所の喫茶店からコーヒーの出前を頼むこともあったように思う(祖父母は商売をやっていたので何から何まで出前していた)。
新しいものも大好きだったのでお墓の近くにいけてるコーヒー屋ができるなんて大喜びしているのではないか。死んだあともこういう形でなにか人生が続いているように思えてはっとした。
こんなしゃれたコーヒー屋が近くにできたなんてありがたいねえおばあちゃん、おじいちゃん!ありがたすぎて口が河童みたいになった
私が来ない間にブルーボトルコーヒーが来ていたとは、まさかすぎる。
墓前までつき合わせてしまった、ほんとすみません!(手まで合わせてくれたやさしいメンバー)
「呼ばれたんじゃないですか」と小堺さん。「なくなった人ってにおいのあるものが好きなんだそうですよ。だからお花とかお線香とか」うわ、企画もびったんこだ。
古賀:「線香」というよりもむしろ「法事」
小堺:「おちつきのあるおとしより犬のにおい」
ぶれずに犬をフィーチャーするも完全に「祖父母」という部分に寄せてくれた感想である。そりゃ人んちのじいさんばあさんの墓にまで連れて行かれたらこう答えるより他ないだろう。
八木:「少しツンとしたシダと火打石の香ばしい香り」
八木さんにはもちろん、ワインという文化文脈自体への畏怖は確実に今回新たにした。
アイマスクをつけて急にまちをかぐ。集中の力でもって旅行に行かずして新鮮にその土地の圧を感じることができた。シンプルだが圧倒的にレジャーであった。
レジャーというか、お墓参りになってしまったが…(祖父母と私です)
集中してにおいを嗅ぐとおもしろい
結果的に共有で沸き起こるグルーヴドッカーン! というよりも、いままであまり意識しなかった場所で集中してかぐという個人の体験としての面白さがまずあった。
この日は周りきれなかったのだが、ライターの井口さんから「東横線横浜駅のホームにテーマパークのアトラクションのにおいを感じます」という情報もあった。こんどかぎに行こうと思う。
ごらんのみなさまにおかれましても、もしなにかお心当たりがありましたら #なんでここがこんなにおい でSNS投稿してみてください! みんなかぎにいこう!
エージーデオ24でちょくちょく爽快になっていた編集部安藤。